新しい芽
2016年1月22日。
めずらしく、用事があって普段あまり歩かない道を歩いていました。
自宅から徒歩10分ほどの場所。
ふと。枯れ葉の上に目をやると、目の下が真っ黒になった茶トラの子猫が、道の端に寝そべっていました。
その顔の状態にビックリして私は立ち止まりました。
立ち止まった私に気がついて、子猫は私の足に頭を擦り寄せてきました。
こんなに野良猫で人懐こい子は初めてだったのでビックリしました。
よーくよーく見ると、髭の片側は折れてしまったのかボロボロでした。
何があったんだろう‥風邪かな。髭…虐待だったらどうしよう。
こんなに人懐こくて、怖い目にあったらどうしよう。
でも、うちはもう3ニャンズで無理だよ。もう無理だけど‥
そこは、長い坂の途中。自転車がとんでもない速度で走る場所。
その横では車がビュンビュン走っていました。
気がつけば私は子猫を抱きかかえて家に引き返していました。
急いでご飯をあげたら、ニャーニャー鳴きながら食べました。
とってもお腹がすいていたみたい。
子猫の鳴き声を聞きつけて、先住のうちの子たちがざわつきました。
治療して、家族を探そう。そう思いました。
以前お世話になっていた保護団体のSさんに電話したら、野良猫ちゃんに優しい病院を紹介してくださり、駆けつけてくれました。(フットワークの軽さに驚き、感謝しかありません)
Sさんが茶トラの子猫を見て「これは人間を知ってるね。もしかしたら、この子風邪がひどくて捨てられたのかもね。」と言われて
あぁ、だから抱っこして保護できたのかもしれない、と納得した。
獣医さんには「あと1日遅かったら亡くなっていたかもしれない」と言われました。
あの時出会えてよかった。車や自転車に轢かれていなくてよかった。
家に帰ると、しばらく鳴いて、またご飯を食べた後
鳴き疲れたのか眠り出した茶トラの子猫ちゃん。
パトラがソーっとのぞいていました。
パトラは、子猫ちゃんがお腹をすかせて鳴いているのをただ、心配していたみたいで、私たちに向かって何かを言いたげにニャアと鳴きました。
だぁれ?と言ったのかな?それとも、もともとママだったもんね。お腹をすかせた子猫ちゃんがいたら心配だよね。
(その後、パトラはご飯の時間に子猫が隣にいると、口をつけなくなりました)
仮名はちゃーにしました。
看病はながく続きました。
最初に処方された目薬が合わず、ひどい下痢になってしまいお尻が腫れてしまって。緊急でいつものかかりつけに連れて行って薬をだしてもらって、ひたすら点眼、眼軟膏。。
夜中にソーっとケージの中をのぞくと、小さくひとり丸くなっていて
なんだか少し切なくなった。
起きている時間はほとんど鳴いていました。一緒にいられる時間はずっと一緒にいるようにしたけれど、ケージが大嫌いなのかな。。
地球がおうちだったのに、いきなりこんなに小さなおうちになっちゃったもんね。そうだよね、とその時はそう思っていました。
でも、この子は驚くほど人懐こくて、人が近づくとゴロゴロすりすり。
とても性格がよかった。
むいはまたまた反応があまりなく、マイペースに過ごしていると思いきや…
後ろからこっそりのぞいてたー!!!健気なんだな〜
今回も子育てするつもりなのかな…預かりボラの時の子猫ちゃんたちとむいの辛い別れが脳裏をよぎりました。。
本当は、もしかしたら誰かと暮らしていた可能性も考えて、この子のことを知らないか、出会った場所の周辺で聞き回ったりもしました。いろいろ情報はでてきたけれど、この子の家族は見つかりませんでした。
ちゃーはすっごいアクティブで、ケージに入っているとそれはもうものすごい声で鳴け叫びました。
1週間ちょっとねばったけれど、元気になるにつれて強烈に鳴く。鳴き続けすぎて、もう声も枯れてガラガラになる寸前。
このままじゃ情緒不安定な子になるかもしれない…と根負けしまして。ケージの外にだすことに。(検査はしました)
扉を開けるや否や、ちゃーはむいちゃんに向かって一目散。
ダッシュして、むいちゃんのおっぱいに吸いつきました。
私もむいもビックリ。。。。。
そうか、今までこの数週間鳴き叫んでいたのは、ママに似てるむいちゃんのことをママと勘違いして呼んでいたのかもしれない。。
この子のママ、茶トラなんだな。。そう思った。
本当にすごいストレスを与えて、我慢をさせてしまっていたんだと申し訳なくなりました。(むいちゃんはおっぱいを吸われて、ものすごい戸惑っていた)
よく考えると、むいちゃんを保護した自宅から、そこまで離れていないブロックでちゃーと会ったので、むいちゃんと血の繋がりのある子が産んでてもおかしくはないよなぁと思ったり…
だってね、お腹の白い模様としっぽの形が一緒なんです。
真相はわからないけど…。
君たち、初対面だよね?ってくらいそっくりで。もともと子猫ちゃんが大好きなむいちゃんは、子猫ちゃんのことをとてもかわいがりました。
相思相愛すぎて。
本当に悩みました。
もう無理。これ以上うちの猫ちゃんを増やすわけにはいかない。
その時、実はお庭に黒い野良猫さんも通ってくるようになっていました。
その子のことを考えると、むやみやたらにうちの子を増やすわけにはいかない。
お庭の黒猫さんは成猫さん。きっと里親さんを探すのは難しい。
けど、この子は人気の茶トラだし、子猫だし、きっと誰かがいる。
そう思いました。そう思いながら、昔の子猫ちゃんと別れた時のむいが何度も何度も、頭の中に浮かびました。
でもダメ。これ以上増やしてはダメ。
そう言い聞かせて、元気になってきたところで、里親さんの募集をかけることに。
でも、募集をかけている間も、うちの家族の中でたくさんのことを話しました。
* * *
じつはちゃーと出会う数日前、身内が亡くなり、家の中の空気が重くなっていました。
あまりに突然で衝撃的で、私たち家族は重い空気を抜く場所がわからず、気持ちの整理の仕方もわからない毎日が続いていました。
そんな空気の中にちゃーが来てくれて、私たちは看病に四苦八苦。それでも風邪と闘うこの子の生命力に、生きる強い意味を感じていました。(そして元気になってからはワンパクなちゃーに四苦八苦だったけど)
ちゃーとの出会いは、私たちがまた立ち上がる、きっかけになってくれました。
本当にいいのかな。本当にこの子を里子にだしていいのかな。ずっと迷っていました。
また別れを経験するむいちゃんの気持ちは?
もしかしたら、この子たち血が繋がっているかもしれないのに、それでも別のおうちで過ごす方がこの子のため?
でも今後医療費は、お金はどのくらいかかるんだろう…
その時もちゃーの涙はずっと止まらず、この先もきっと一生目の治療が必要になるかもしれない。うちはどこまでできる?次のご家族はどこまでやってくれるんだろう。
ひとりぬくぬく暮らす方が幸せ?むいちゃんと24時間べったりくっついているけれど、この子にとって、何が一番幸せ?
たくさんの葛藤がありました。
家族みんな、言い聞かせるように里親さんを募集したけれど、話し合えば話し合うほど、気持ちが日に日に整理がつかなくなっていき、遂に私は、覚悟を決めました。
この子をうちで最期までみよう。頑張ろう。って決めました。
里親さんを募集していただいたり、Sさんには本当に申し訳ないことをしたのですが、どうしても里子に出せなくなってしまいました。
こうやって、うちで暮らしてもらうことになったちゃーくん。
名前は こ麦じ・ちゃなじ。
小さな麦じと、ミドルネームをつけました。
そして、鼻がつまっているのか鼻声なんです。
ニャーではなくナーと鳴きます。彼。
だから、ちゃナじ。
ただ、この子。一緒に暮らしはじめて気がついたのですが、本当にやんちゃが過ぎるんですよ。
やっと、ヒゲがきれいになってきた〜♡と思ったら
コンロに登ってヒゲ燃やしたり。
何の変哲もない、たくさんの荷物がつまっている棚に飛びついて、スパイダーマンのようにしがみついたと思ったら、真っ逆さまに落ちて鼻血をだしたり。(慌てて病院駆け込んだ)
ダイニングテーブルにサラダが置いてあっても、全くおかまいなしに飛びこんでみたり。
手がかかり…すぎる…今まで出会ってきた子の中でも最上級クラス。
ていうか、こんな子みたことない。出会ったことない。。
人間の今までの経験と怪我防止策のはるか上をいく。
やめてほんと。そんなところ登らないで。
え、まさかそこに飛ぼうとしてる?!え、お願いもう許して。
が、毎日続く…
でも、あまりにもワンパクで破天荒な性格は、はやいうちから親と引き離されて、自分で何もかもやらなければいけない生活だったことに由来することもある、という記事を読んで。
ああ、今まで小さな体でひとり頑張ってきたからなのかもしれない。
そう思えば…少し切ないな。とも思います。
ちなみに、大きくなった今も涙は治らず、眼軟膏が手放せません。
どうやら涙腺と鼻の間が詰まっているらしく、何を試しても治りませんでした。
だからなのか?年を重ねる度に目の周りは黒くなり、鼻にたくさんのホクロが…
大きくなってお腹の白い模様はくっきり!むいちゃんとお揃いだよ♡
今でも人が大好きで、全く物怖じしなくて、すごく気が強くて。
少し地震には怯えるけれど…やっぱり愛くるしくて。
私は、この子にも何度も何度も救われています。
ちなみに、この子との出会いでパトラはとても生き生き遊ぶ姿が多くなりました。
むいが来てからのパトラは、単独行動が増えて、家の中で野良猫みたいな生活していたのに。
パトラにとっては、この子がきてくれてとても良かったと思います。パトラなりに、ちゃなのことをかわいがっているようです。
(せたじは、ちゃなじのことが大嫌いなんだけど…)
むいちゃんともべったり仲良しな姿は今でも変わらず。(時々喧嘩してるけど)
似すぎていて、猫ちゃんも人も、みんなどちらがどちらなの…?ってなることが多々あります。(猫ちゃんは匂いかいで確認してるみたい)
いつも、ふたりで寄り添って、何かある度にペロペロ舐め合って、支え合って。
そんな姿を見ると、よかったな。うちにいてもらうって決めて本当によかったな。そう思っています。 ね。
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