見出し画像

香水の「シプレー(Chypre)」はもともとある魔法の粉です(●´ω`●)。

 と、今回は香水の分類?というか「シプレー(Chypre)」についてのお話と、その原型となる魔法の処方の話をしていきます。
 シプレーで有名なのは、フランスの株式会社「Coty社」が販売した「シプレ」になります。
 その後、そのシプレを模したものや、製法が近いものなどを総称して「シプレ系」って呼んだりするようになりました。
 その本家のシプレの話は別で詳しく書いてる方が沢山いらっしゃいますので、興味のある方は「シプレ 香水」で検索してみてください。

 で、ですね、このシプレなんですが、そのもととなったドライ香水(つまりは粉になったやつ)があります。
 それがとある魔法の粉なんですね。

 これ、知らない人もけっこう多いので今回書いていきます。
 ちなみに、現代使用されてる薬とか香水とかオイルとかの多くは、元は魔術関連から来ているものが多いのですよ(; ・`д・´)。

 特に医学関連は、当時のヨーロッパの医者の有名どころが結構、魔術結社などに名を連ねていますので、その影響ですね。
 
 と、そういった話を書くと脱線しまくって内容が長くなってしまいますので、この辺で。

1 シプレ香水の元となった魔法の粉

 世の中にはさまざまな魔法の粉が作られてきましたが、その中で有名なのは「アルジェパウダー」です。
 これはそのうち詳しく書こうかなと思っている粉の一つですが、このアルジェパウダーは、「ギャンブルに勝つ」ための魔法の粉です。
 ですが、このあたりも、もともとあったものの派生の可能性があるわけです(まあ、アルジェパウダーのほうはどちらかというとブードゥ魔術からの派生の可能性が高いですが)。

 で、シプレの元となったものは前述したようにドライ香水、つまりは良い香りのする粉になっています(日本でも塗香の粉がありますよね?そんな感じです)。

 なおシプレの魔法の粉については、12世紀の十字軍がその製法を持ち帰ったという話が有力だそうです。
 その後、地中海に浮かぶ島で、アフロディーテの島キプロスにちなんで名前がつけられ「シプレ」となったという形です。
 (キプロスのフランス語読みで「シプレ」となります)。
 ※香水を取り扱うところの説明だとキプロスの話までは触れてますが、十字軍が~なんて話はなかなか出てきません。ヨーロッパの方では比較的有名な話なので、魔術用途としてのシプレの香水を売っているところもあります。まあ、現代で売られているもののほとんどは液体タイプとなっていますが(; ・`д・´)。

 そもそもキプロス王国が十字軍の王国だったので、十字軍が持ち帰ったって話はデタラメではなさそうです。

 キプロス王国についてはウィキでも読んでください→キプロス王国のWIKI

 なお、このキプロス周辺は大変な魔術大国(まあ十字軍が聖遺物とか持ち帰って売ってたりしてましたから・・大概は偽物ですが)でしたから、十字軍の遠征後に行った先の魔術なども取り入れてくるわけで、そういったものが民衆にも広まり、当時は魔術師と名乗る人も多かったそうです。
 しかしながら、その後のゴタゴタで規制?され、少なくなっていくのですが、いまでもその一部は伝統的な感じで残ってるようですね。
 ※キプロスの魔女というべきでしょうか?なかなかカッコイイ気がする(; ・`д・´)。

 なお、初期のシプレは男性に人気がありました。
 しかし、そのうちギャンブラーや町のごろつき(言い方悪いかな?)が好むようになり、印象の悪いものになっていきます。
 ※余談ですが、そのためかダシール・ハメットの小説の中のジョエル・カイロの香水として起用された節があります。
 (ダシール・ハメットは知る人ぞ知るハードボイルドの分野を確立したとも言うべき小説家です。また、ジョエル・カイロとは、ハメットの書いた「マルタの鷹」に出てくる人物です。下にwikiを貼って置きますので、気になる方は見てみてね)
 ダシール・ハメットwiki
 マルタの鷹wiki

 ・・・とその他いろいろ書きたいところですが、そんなことをしたらすんごい長くなるので、次はその材料について書いていきましょう。

2 シプレの魔法の粉の材料とその用途

 これが当時の完璧な材料かはわかりませんが、私が調べた限りでもっとも古い情報の可能性がある材料を紹介しています。
 また、この製法で作られたものを「ベーシックドライシプレ」と呼びます。

■ベーシックドライシプレ
・ベンゾイン
 安息香です。よくバニラの香りと例えられます。
 スマトラ安息香とシャム安息香が主流です。
 時代背景的にスマトラ安息香を使うほうが正解だと思います。
 シナモンの香りに似てますしね(^'^)。
 パルティア王国時代から流通していたので間違いないかと。
 ※シャムはどちらかというと14世紀以降から流通しているんですよね。

・カラミント
 南ヨーロッパ、地中海沿岸に生息するシソ科の植物です。

・スイートフラッグ(菖蒲
 日本でも有名なショウブですね。
 こちらの場合は根っこを使用します。
 古来から魔よけに使われています。
 ヨーロッパでもショウブ湯を使用します。

・コリアンダーシード
 これに関しては説明不要かと( ゚Д゚)。

・ロックローズもしくはラブダナム
 シスタス、シストローズともいわれる地中海沿岸に自生する低木です。
 ロックローズと言われてますが、その呼び名は正確にはこのシスタスを水蒸気蒸留したものの事をさし、溶剤抽出したものをラブダナムと呼ぶのが正解です。
 なお、このシプレの場合は葉っぱを使用します。

・ストラックス(Storax)
 セイヨウエゴノキの樹脂の事ですが、Storaxをベンゾインと混同することも多いので、注意が必要です。
 蘇合香とも呼ばれるものですが、16世紀まではセイヨウエゴノキが使われています。

 上記のものが材料になります。
 分量に関してはあまり言及がありませんが、だいたいは1:1が基本です。
 上記の材料をある程度乾燥させ(あんまり強く乾燥させると香りが飛ぶ場合があるので注意)、粉にして袋に入れて、使用する際には体にこすりつけたり、その場で撒いたりします。
 少し湿り気があると思うので、他の粉を混ぜてサラサラにするわけですが、実はこの粉の種類で使用法が変わっていきます。
 たとえば、くず粉やコーンスターチの場合はギャンブル運に、米粉を使う場合は恋愛運にという感じになります。
 
 面白い使用法としては、特別に用意した箱「ギャンブル運が上昇するような魔術やおまじないをした箱」にこの粉を敷き詰め、ギャンブル運を上げるために用意したお守り(まあ、そう願掛けしたものであればなんでも良い)をその中に常に保管しておくというもの( ゚Д゚)。

 そして、勝負事を行う際にはそのお守りを取り出し、持っていくと、より強力に勝負事に強くなると言われています。

3 補足

 このシプレの粉の魔術的効果を総合的に言えば「経済的な成功を収める」という内容になります。
 ただ、当時の経済的に成功というのは、戦争も含まれているわけです。
 戦争で勝つことで富を得ていた時代ですから(今も一緒か・・・)。
 なので、勝負事にも使用されるし、恋愛にも適用されるわけです。
 (戦争で勝って女性を連れていくなんてこともある時代でしたから)。

 で、この粉を魔術的に見ると、魔よけだったり鎮静作用だったりするものが入っており、当時の視点から「あらゆるものに勝つ」ことが可能な材料で構成させています。
 悪いものが付けば運が下がるから菖蒲で魔よけして、カラミントは心の不安などを取り除く・・・などなど。
 そういったもので構成されてますが、この材料の中でもっとも重要なのはロックローズだと言われています。
 なので、ロックローズを多めに配合する人もいるようです。
 ロックローズは「精神を落ち着かせて精神を解放する」という効果があると言われています。
 あらゆる戦いにおいて、もっとも必要なのは、ゆるぎない精神とたぐいまれなる勘・・・ってところですかね。

4 最後に

 ということで、現代のシプレ系香水の原型になる魔術に使用されたシプレの粉のお話でした(●´ω`●)。
 余談ですが、こういったハーブを漬け込んだりする系統で、簡単なものではローズマリーをアルコールもしくはきれいな水(今なら精製水でOK)に漬けたローズマリーウォーターってものがあります。
 14世紀ごろのハンガリーのエリザベス女王もご愛用の美人の水で、70代になっても美しかったそうです。
 今でも大人気ですよね~。
 ※ローズマリーを軽く握って香りをクンカクンカするのがたまらない(●´ω`●)。

 ※2次転載は基本禁止です。また、あくまで現在伝わっている魔術をご紹介しているものであって、効果や効能については保証されていません。試してみる場合は自己責任でお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?