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海は明らかにしょっぱさで損をしている

 一昔前、「最近の小学生はあまりに自然に触れる機会が無く、海で鮭の切り身が泳いでいると思っている」というニュースだったか噂だったかが流れた時があった。
 それは流石に誇張が入っているにしても、思えば自分もここ数年海になんて行っていない。ふと思い立って、ビーチの動画を見てみる。老若男女が日焼けして、からっとした砂の上で屈託ない笑みを浮かべていた。

……でもこいつら、舐めたらしょっぱいんだろうな。


 当然、彼らは海に入っている。だから、しょっぱい。間違いない。人間なんていつ舐めたってどちらかと言えば塩味が勝つだろうとか、そんな指摘は的外れだ。だってもう、尋常じゃなくしょっぱいはずである。海の水が口に入った時を思い出して欲しい。家系ラーメンのスープよりしょっぱい。梅干しのつけ汁くらいしょっぱい。
 そのことに気付くと、全ての見方が変わってくる。
 水を掛けあい、大口を開けて笑う少女たち。口に入ったらそれはもうしょっぱい。
 夕暮れ時、泳ぎ疲れた心地よい倦怠感とともに互いに肩を寄せ合うカップル。でも全身しょっぱい。
 何だか創作の海って無味無臭って感じがする。しかし現実はしょっぱいのだ。それも、すごく。味を念頭に置くと、海というのは著しくイメージがダウンする。

対案

 しかし、焦ることなかれ。人間には考える脳があるのだから、批判することに終始してはいけない。批判だけして対案を出さないのは、思考の停止だ。しょっぱいのが嫌なら、もっと良い味を見つけ出せばいいだけのこと。ということで、個人的に海にぴったりの味ランキングベスト5を発表する。

5位 ラムネ味
色に引っ張られたように思われるかもしれないが、後味に残る酸味と舌の上がちょっと冷たくなる感覚が海の爽やかさを表現しているような気がする。特に南国の海はこの味が望ましい。

4位 薄くしたポカリスエット
塩味と甘味が複雑に混ざり合うあの味は、なんとなく生命の源たる海の多様さを感じることができる。水泳というスポーツ中に口に入っても寧ろ好都合なのが高ポイント。

3位 スイカを食べた後に飲む水の味
微かな甘みと種のゴマみたいな風味が残るのがベスト。スイカ果汁ではあまりにも甘すぎるので、食べた後の水くらいがちょうどいい。薄味であれ、海。

2位 レモン水
酸っぱくても良いと思う。目に染みるのは塩も酸も同じだし、潮風がレモンの皮の香りだったら、俺は海の近くに家を建ててしまうかもしれない。

1位 水だし緑茶
微かな甘みとコクが感じられる。香りも確実に良い。海から上がってきた人から落ち着く香りがしたら、ビーチはもっと良い場所になるのではないか。そして、乾いてもさらっとしてそうなのが最高。ジュースをこぼすのとお茶をこぼすのでは精神的負担は全然違う。

結論

 さて、このランキングは失敗作だ。
 おそらく賢明な皆さんなら気付かれていることと思うが、このおかゆじゃむとかいう男。今が夏だから、夏のビーチしか念頭に置いていない。
 例えば、冬の日本海をイメージしてほしい。岩肌に波がぶつかり、しぶきが上がる。あの光景、塩味がぴったりではないか。あんな激しい波を受けて、優しい緑茶の味がすれば、拍子抜けだ。興ざめだ。
 シーズンごとに海の味が変わると想定して、ぜひ皆さんも理想の海の味を考えていただきたい。
 では次回は「川が無味なのはそれはそれで損している」でお会いしましょう。嘘です書きません。

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