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ルボンvsカイサー②【ウーリーと黒い獣たち】

これは国の存亡の危機に立ち向かった、ある一人のチェリー男のお話。

ひと足先に妻カイサーは城にいるルボン女王と対面。
その頃、ウーリーとヒヤトラーの三人もリケーン国へ到着。
何も知らないウーリーたちはひと休みしようと街の屋台広場へ。

先頭のお店の休憩スペース用の敷物のゴザの上に辿りついた一行。
「はぁ、しんどいわ〜」
みんなが声を出し倒れ込んた瞬間、私達を見下ろすような、細くて長い影に覆われたことに気付いた。

ウーリー④より

その気配の方へウーリーが視線を上げると、ひょろりとした身体つきで目つきの悪い男が自分を見下ろしていてギョッとした。

「…何にする?」

不愛想にその男は口を開いた。

「だ、誰? 何なん?」

「自分はルービー生で」

怯えるウーリーを横目にヒヤトラーのゼリが答える。

「同じく」

「わし早番やし、ピスカル炭酸にしとこ」

オネタに続いてシーホが少し間を置いて嬉しそうに言う。

「あんたは?」

男は怪訝な顔つきでウーリーを睨む。

「わしとおんなじもんにしといたって」

ビクついてアワアワするウーリーの代わりにシーホが答えると、男は踵を返して戻って行った。

「や…何なん? あの人、コワいんやけど」

「飲み屋やもん。注文聞きに来るやろ」

「店の人? なんであんな不機嫌なん? ってか、ココ、店⁉」

ウーリーは自分が座っているゴザを指差して言う。

「だったらまずはいらっしゃいませとか先に言うてほしいわ」

「ここはリケーンですからね。ターリキィの接遇を求めないでください」

「そうは言ってもコワ過ぎやわ! 心臓止まるか思た」

ウーリーは、改めてキョロキョロと辺りを見回す。

あちこちの屋台は人で賑わってはいるものの、みんなどこか陰気な顔つきをしている。ある者は頬杖をついてくだを巻き、ある者は背中を丸めてボソボソと喋っている。

「何や辛気臭いなあ」

「ターリキィの人間が能天気過ぎるんですよ」

オネタが答える。

さっきの男が四人分の飲み物を運んで来て無造作に置くと、無言で離れて行った。
ウーリーたちは互いのグラスを軽く合わせると口に運んだ。

「あんなに日照りが続いて、アクーン王が病に伏してるという深刻な状況なのに、ニコニコして暮らして。ターリキィの民はみんなどうかしてますよ」

「・・・」

ウーリーはオネタに言い返したいのだが、だんだんまぶたが重くなって開けていられなくなった。



一方、リケーン城では。

玉座の間を出てカイサーが次に通された部屋は、城の中とは思えない庶民的な内装が施されていた。そこはルボンのプライベートな空間だと言う。

中央の丸い座卓の前に座るとルボンはカイサーに手招きをする。

「このお部屋、異国情緒な雰囲気ですね」

「とりあえずルービーで…よいな?」

笑みを浮かべながら自分の斜め前の位置にカイサーを促すと、ルボンは従者に「生二つ」と告げた。

「これは?」

カイサーが自分の前に置かれた小鉢と丸めた布を見る。

「それで手を拭くといい。こっちはメマダエという美味な豆だ。ルービーにとても合う」

部屋の隅にあるサーバーから液体を注いだグラスを二人に運び終えると、従者は一礼をして部屋を出て行った。

それを見届けてからルボンは冠を外し、足を崩した。
二人はグラスを傾け合う。

「はー! このひと口のために女王もやれてんだよねー!」


声も言葉遣いもガラリと変わったルボンに、カイサーは肩をビクッとさせて目を丸くする。

「あ? 気にしないで。ここからは無礼講。
冠から解放されればただのおばちゃんなんだからー」

ルボンは片手をひらひらさせながら、ふた口目をあおる。

「ぶっちゃけさー、アタクシだって好きで女王やってんじゃないわけよー」

「ルボン様がぶっちゃけって…」

「ん? あぁ、ルボンでいいわよ」

戸惑うカイサーにルボンは笑って言う。

「アタクシねー、これまでなんだかんだ、けっこう頑張って来たわけ」

「お察しします! お辛かったでしょうね」

「わかってくれるぅ⁉ この世で一番大切な二人を奪われたんだもん。一時は命を自ら絶つところまで思いつめたわねぇ。純情だったのよぉ」

ルボンは「ナハハ~!」と声を出して笑う。

「でもねー。絶望ってのは怒りに変えると無敵だってことに気づいたらさー、あとはもう勢いよねー。
そのおかげで波DO水の製造にも乗り出せたし。
この無敵のエネルギーで国はずい分潤ったわ」

「波DO水って、やっぱり普通のお水じゃないんですね?」

べしゃり屋のおかみに勧められるまま、カイサーはいつも波DO水をケース買いしている。柔らかい喉越しは気に入っていたが、効果となると今ひとつわかっていなかった。

「やだー、水は水よぉ」

ルボンはニヤリと笑う。

「でもね、もともとあれはアタクシがアクーンを貶めてやろうと思って開発を始めたわけ」

水が情報を記憶する媒体であることに注目し、研究を続けた結果、一定の周波数を水に読み込ませることに成功した。
そしてそれをアクーンに飲ませることで彼本来の周波数にダメージを与え、エネルギーの弱体化ディセンションを目論んだという。

「え⁉ じゃあ身体に良くないんですか?」

「んふふ。安心なさい。一般に流通させているものは癒しと活性化の周波数を読み込ませてあるの。身体と心に良い効能しかないわ。
でなきゃ、こんなに国の利益を支えるロングセラーになってないわよぉ」

ルボンはカイサーと自分のグラスを持って立ち上がり、自らサーバーで液体を注ぎ入れる。

「メマダエ、うまっ!」

カイサーはひと粒つまんで思わず声を上げる。

「でしょぉ⁉ コレ、黒メマダエなの。ターリキィではほとんど流通していないはずよ」

座卓に二つのグラスを置きながらルボンは得意げに言う。

「さて、本題を話すわね」

二杯目をひと口あおるとルボンはゆっくり話し始めた。




すべてを知ったカイサー。

翌朝、ルボンから手渡された七色の丸い種を持って城を出た。

そして、ノンアルのピスカル炭酸で酔いつぶれて眠りこけるウーリーのいる城下の宿へ急いだ。


≪もうちょい続く≫

ここまで2500字
うりもさんの記事④の補足でムダに文字数を使ってしまいました。
長いとダレて来ますので(私がw)、分けます。

まだ引っ張るのかよって思われそうですが
違うんですw




明日9/28 お昼前(10時前後?)に#ウーリーについてスタエフやろうと思います。
お時間の許せる方、お越しください。

#ウーリーを一緒に妄想してくださった皆さんの記事を連絡方々、貼りつけさせて頂きます。
うりもさん含め、13名もいらっしゃったことに驚きました。



≪この物語のカラクリを知る賢者シュミクト≫

≪ウーリーの頼れる清楚妻、カイサー≫

≪謎の娘、リトルソー≫

≪ターリキィ国王なのにショーナーンボーイとうそぶくアクーン≫

≪リケーン国のスパイ・ゴーショー≫

≪賄いのためなら頑張っちゃう愉快なヒヤトラー・シーホ≫

≪どうやらこの物語の鍵を握る?妖精・フェアリーケィ≫

≪雨乞いがうまく行かない水の巫女・ミーラー≫

≪ウーリーの命を救った育ての親・ラブコ≫

≪ウーリーの女性観を強烈に植え付けた義妹・ユッキー≫

≪巫女ミーラーの幼馴染み・旅芸人コチョリー≫


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