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よく考えたら そんなに懐かしくもなかった人。

学校を卒業して何年か経つと、
たかだか20代前半のくせに
それまでの人生の数年が
やけに懐かしく思える時期があった。

10代は一生の中でも
その濃度は他のどの年代の
何倍もあるのは確かなのだけど、

何でもかんでも懐かしいと
錯覚していたりもする。



社会人になって1~2年の頃、
中学時代の同級生から電話があった。

「久しぶりだなあ」と言われ、
「どうしてるかなと思って」など
近況を聞かれるままに答えたり。

「いや~懐かしくて話が尽きないよなー!
そうだ、近いうちに会って話そうよ!
ララミ(仮)も誘ってみようと思ってるんだよ!」

ララミ(仮)は、やはり同じクラスだった子。

昔と変わらない調子の良さというか、
人懐こさにつられ、二つ返事で会うことに。

待ち合わせ場所は
ホテル内にあるカフェだった。

当時、20代前半の私たちには
ちょっと高級な場所。

時間通りにやって来た彼は
GパンにTシャツ。

何の企てかと惑うほど
上下ともヨレヨレで

中学時代の面影も十分残していたので
すぐにわかった。

20代の若者の服装としては
まあ「そんなもん」だけど、


場所柄、わかってないのかな?
そんな君がこんな場所を?


軽い違和感。


「ララミに連絡取ったんだけど、
今日は都合悪いみたいで来れないって。

今日はオレのセンパイを
紹介しようと思ってさー!」

嬉しそうに言うが、
私の頭の中は疑問符。


「ところで、おまえさー、
今使ってる布団、何年くらい使ってる?」


疑問符は更に増える。

『ところで』は
確かに、話題切り替えの接続詞だが、


ほこりのように
うっすら積もる違和感と疑問符。

そこに『ところで』と
重ねられてもしっくり来ない。

「オレ、今すごい睡眠の質が上がったの
実感してるんだよ!
いい布団てやっぱ違うんだよなー!」

「そうなんだ…」

布団より先にそのGパン洗った方が
よっぽど衛生的な効果あるんじゃないか、

そんなことを思いながらも
話を合わせてうなづいていると、

「ごめんごめん、お待たせ!
今日はアポが立て込んじゃって!」

私達の前にスーツ姿の男が近づいて来た。

彼は私達より4~5才ほど上と思われた。
同級生の彼とは真逆で
上等そうなスーツを着ている。



だが、スーツの柄とかネクタイとか、
靴とか、ヘアスタイルとか…

これまたどことなく感じる
違和感。


どう説明していいのか
当時の自分にはわからなかったが

今、思い返してみるに

「一般的なビジネスマンって
こういう着こなししないよね」

そんなコーディネートだったように思う。


簡単に紹介が済むと、

「今、ちょうど布団のハナシ
してたんすよー!」

「ああ、アレねー!
使ってくれてるんだ!
どう?眠れてる?」

「すっごい熟睡出来るようになりました!」

・・・


おや?


これは、自分が何かある状況の中に
置かれているのかなと気づく。


この頃にはこういう言い方がなかったが
今ならこう言える。

『予定調和』



同級生と「センパイ」を眺めていて
私は「猿」が猿芝居をやってる
と、悟った。


色黒で小柄ですばしっこくて
机の上にでもひょいと飛び乗る身軽さから
彼は中学の頃
「猿」というあだ名だったのだ。

彼の子供っぽいやんちゃなふるまいを
私は呆れて見ていた。

そして今も同じ気持ちで見ている。


そして「センパイ」は
「これなんだけどね」
とパンフレットを取り出して
私に布団の説明を始めた。

私は会って数分で
初対面の「センパイ」から
数十万もする布団の話しを聞いている。


「布団、要らないです。」

説明が一通り終わるのを待って
私は言った。

「うちは親が商売やっていて、
その関係で寝具も
長年お付き合いしているところがあって」

きっぱり言うと
「先輩」は意外にあっさり引き下がった。

私はホッとして
どう席を立とうか思案していると


「じゃあさ、この中で興味あるもの、
どれ?」

「先輩」は違うパンフを開いて見せた。

浄水器や着物など
属性が理解できないアイテムが
一覧にされて載っている。

私は切り上げる言葉が見つからずに
適当にその中の一つを差した。


「…絵画?」

「先輩」の表情が少し揺らいだように見えた。

「これって’マネ’みたいなタッチですね。」


私に絵画の知識はない。


そこに載っている、
湖面の描かれた優しい色合いの油絵を見て
適当に言ってみたのだ。

しかも「モネ」を「マネ」と噛んで。


「マネ」という画家が実在することを
この頃の私は知らない。

「そう!マネ!
詳しいねー!絵が好きなんだね!」

「お前って美術得意だったよな!」

隣の猿まで調子を合わせる。


茶番だ。

猿芝居にへそで茶が沸きそうだ。


「もういいですか?帰りたいです。」


結局、正直に言って席を立った。

「猿と先輩」は芝居を続けようとしていたが
私は構わず背を向けて店を出た。



私は彼(猿)の調子の良さが
どうもうっとおしくて
あまり関わらないようにしていたことを
はっきり思い出していた。

同じクラスになったのは一年間。

席も班も被ったことはない。

悪目立ちしていた彼を
遠巻きに見ていただけだった。


美術が得意だったとか
記憶に残るほど

私の印象が彼にあると思えない。

でも、私も
どうして懐かしい気がしちゃったんだろう…?



それからしばらくして
ララミ(仮)がローンを組んで
布団を買ったらしいと風の噂で聞いた。






今回はこちらの記事をお借りし、
番組の予定を急遽、変更してお送りしました(嘘)。

ららみぃたんさんの記事を読んで
勧誘の糸口パターンに苦笑してしまい、
私も自分の体験を書いてみたくなりました。

私も当時、
MLMとかマルチ商法など
全く知らない無知な若者で、
ただ、その場の違和感がいたたまれず
たまたま、難を逃れたのでした。
(ららみぃたんさんは
彼氏に見限られるところだったようです!)

※私の記事はららみぃたんさんの記事の主旨から逸れてます。

え?・・・それだけじゃないって?
ララミぃたんさん、ゴメンナサイ。


ってことで…
では また。

































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