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「時空を超えて出会う魂の旅」特別編~印度支那㉕~

東南アジアのある地。
出家を経て、戒名「慧光」を私は授けられ”巨大寺院”に入門。
心通う少年、「空昊(空)」、隣国の僧「碧海」と出会う。
新たな戒名「光環」を名乗り、故郷への旅に出る。

再び、いくつかの寺院と街を経て。
光環と空昊は、光環の生まれ育った村近くの寺院に到着した。

二人のもとへ、光環が初めて修行した寺院の僧が、挨拶に来た。
そして、尊師からの言伝を伝えた。
「かつて修行していたとはいえ、村の小さい寺院では、
今や巨大寺院の僧となった光環と供の空昊を丁重にもてなせない。
そこで、村民の屋敷にて応接したい。」とのことだった。
光環が快諾し、屋敷の位置をたずねた。
それは、蓮花の実家だった。

数日後、寺院の僧の先導で、蓮花の実家へ歩んだ。
故郷の山と川、村の人々。見るもの、感じるもの。
不思議なことに、全て初めてである地のようだった。
生まれて15年暮らした故郷なのに、
光環は、まるで違う世界に降り立ったかのように感じ、戸惑った。
そんな光環を、空昊は黙って見守っていた。

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手入れが行き届いた、蓮花の実家の門が見えてきた。
村の寺院の僧達、蓮花の両親が門に立ち、一行を出迎える。

供を連れた法衣姿の光環を見て、
蓮花の父は、驚きのあまり、すぐに言葉が出ない様子だった。
蓮花の母は、感極まったのか、泣き出してしまった。
光環は、かつて自分が親しみを込めて呼んだ呼び方で、二人に話しかけた。
「おじ様、おば様。大変のご無沙汰、失礼いたしました」
「あ・・・あの、光環尊師。”慧光殿”、では?」

「はい、そうです。寺院で、新たな名を授かったゆえ。」
「なんと嬉しいことでしょう。ご無事でいらしたとは。」


蓮花の父は、屋敷に一行を誘い、歓待した。
暫しの歓談の後、村の寺院の僧達が帰っていった頃合いをはかって、
光環は、自分が出奔してからのことを、蓮花の父にありのまま語った。
「光環尊師。なんと有難いことでしょう。
 貴殿は、御仏の導きで、巨大寺院の僧になられた。
 そして更なる導きで隣国へ。どうかお元気でいらしてください。」

光環から問われる前に、敏い蓮花の父は、蓮花の近況を話した。
「二つ山向こうの街に、嫁ぎましてね。
 もうすぐ二人目の孫が、生まれるんですよ。」

蓮花は、母親になっていた。
光環は安堵するとともに、心の底から嬉しかった。

その後、ひとしきり村の寺院の話題が続き。
途切れたところで光環は、切り出した。
「おじ様。我の実家は、如何に。」
蓮花の父は、表情を厳しくした。

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偶然にも、その夜は満月だった。
かつてこの村から逃げ出した夜も、満月は光環を見守っていた。
煌々と輝く月を見ながら、
同じ月の下にいるであろう碧海を想った。

今しがたまで聞いた、実家の現状を反芻すると、
やりきれない思いが押し寄せてくる。
碧海尊師。それでも我は、ここにいるべくして、ここにいる。

いつの間にか、傍らに空昊が座っていた。
空昊は成長目覚ましく、小柄な光環の背をとうに抜いていた。
「光にいさん。
 ぼく、にいさんが生まれ育ったお家、行ってみたいなあ。」

光環は、ほっとした。自分一人では、足が重かったからだ。
そして、空昊の優しさと心遣いに、感謝した。

翌朝。蓮花の父に、光環は実家を訪ねる旨告げた。
「実家を訪ねるのですから、案内は結構です。」
「光環尊師。今しばらくお待ちください。
 ご実家から、使いが参りますゆえ。」

蓮花の父からの使者、さらには蓮花の父自身が光環の実家に出向くなどの
やり取りを経た。
結局その3日後、光環の実家から使者が来ることになった。


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