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nocturne

貴方がピアノを弾いている
どこか懐かしい 柔らかな旋律
この上なく素晴らしいと思うのに
明日になればまた
違う煌めきを見せるのだろう
想像の域を軽々と超えて

少し落とした照明が
貴方とピアノを包み込む
何度も見た その光景に
繰り返し 胸を打たれてしまう

背中、肩から腕に、そして指先に
伝わっていく音色は
流れるたびに洗練されて
美貌だけが生々しく残る

身体中に循環している美を司る
神々しい魂
表現しなければ生きて行けない
切ないほどに繊細な存在

闇の中に吸い込まれていく音色を
捕まえて閉じ込めてしまいたい
儚いからこそ美しいと
理解しているのに求めてしまう永遠

転調した瞬間に変わる風景
見えるものだけが真実ではない
それは確かにここにある
魂を揺るがし 愛撫し 
孤独の深淵を映すもの

こころに向き合っている貴方は
端正で
澄んでいて
近くにいても 触れられない
輝きながら放たれる
その麗しい音色にも似て


ERICA

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