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『ざ・総括。』ポルシェ・タイカン

オススメ度 評価せず(参考★★☆☆☆)

ポルシェは何をしたかったのか

タイカンはポルシェ初のBEV(バッテリー電気自動車)として2019年秋に発表された。前身は2015年に公開されたショーモデル「ミッションE」であり、テスラ「モデルS」などとともにハイエンドのBEVカテゴリーを形成する。本誌評価陣は「日本の常用速度域ではただストレスが溜まるだけ」「つねに重さを意識するクルマ」と評価した。「BEVは環境にやさしいなどとはタイカンに乗る限りはただの戯言」とも言い切った。あらためて「BEVの存在意義」を考えさせられるクルマであることだけは間違いない。

<評価メンバー>
エ=エンジニアリングコンサルタント
チ=チューニングショップの社長兼エンジニア
部=元部品メーカーのエンジニア
T=ベテラン実験ドライバー
通=自動車業界の事情通

やはり「力任せ」の印象

エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) ポルシェ初のBEVとしてデビューしたタイカンだ。フェイスリフトしたばかりで、駆動系の制御も少し変わったらしい。このメンバーで試乗したのは初めてだったが、一般的なクルマ選びの対象にはならない価格帯だから★の評価は「ご参考までに」というレベルにしておく。個人的には興味はない。むしろポルシェが計画しているe‐フューエル専用ICE(内燃機関)を搭載するモデルのほうが気になる。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) オレも同感。今回、皆さんに乗ってもらったのは前後軸に電動モーターを備えたAWD(オール・ホイール・ドライブ)の「4S」でベース価格1650万円、試乗車は2000万円オーバーだ。タイヤはオプションの21インチ、グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック3でサイズは前265/35ZR21、後ろは305/30ZR21だ。
ベテラン実験ドライバー(以下=T) このクルマのオーナーはボディカラーと内装、シートまで趣味よくまとめてあるが、ひとつひとつのオプションが高いから、あっという間にオプションだけで400万円になるんだね。驚いた。
元部品メーカーのエンジニア(以下=部) 2016年の2代目パナメーラで採用されたVW(フォルクスワーゲン)のMSB(本来はドイツ語。英語ではモジュラー・スタンダード・ドライブトレイン・マトリクス)プラットフォームを使っています。類別は「J1」なのでアウディの「e-tron GT」と同じです。水平対向ICEを積むわけではないので、パナメーラと同じ扱いですね。VWグループ内で共有するプラットフォームです。
自動車業界の事情通(以下=通) 電動モーターに2速の変速機を使ったり、重量配分をわずかに前寄りのほぼ均等にしたり、スポーツカーに近い大陸横断GTに仕上げる意図は汲み取れるが、その分だけ「力任せ」になっている。LIB(リチウムイオン2次電池)を100kWhも積めば車両重量は2トンを超える。車両運動中の瞬間を切り出せば、その重量が必ず上屋の加速度に乗ってくる。それは承知で、EU(欧州連合)規制への対応例として作った。

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