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読書感想『ぼくらは虚空に夜を視る』※ネタバレ注意

というわけで、今週読んだ本は著作上遠野浩平さんの『ぼくらは虚空に夜を視る』でした。
今作は宇宙に出た人類と虚空牙との戦い、そして人類の現在を描いたSF作品でした。

あれ?今作は徳間デュアル文庫というところの出版らしいのですが、電撃から出た『冥王と獣のダンス』でも虚空牙っていたような…
他社やないかいと思いつつ、これは冥王と獣のダンスの世界からしたら超昔の話、さらっと作中の人物の蔵書に『冥王と獣のダンス』がありましたが、この辺はご愛嬌ってやつですかね。

今作はSF作品ということで、SF恒例の最初にわけわからん言葉を言われまくることに耐え(グレッグ・イーガンの『ディアスポラ』を読み切った自分におよそ敵は無いはず)、読み進めると一風変わった世界が始まります。

宇宙で虚空牙と戦う現実の世界と凍結保存された人間たちの精神を保つために作られた造り物の世界の二つの世界が同時進行するように進む今作ですが、やはり上遠野先生は人間の心理描写がとてつもなく上手いため、やっぱり作り物の世界のほうがメインだったと思います。

両方の世界の存在に気付いた戦闘の天才である少年が両方の世界で虚空牙を打ち倒す話なのですが、なかなか化け物のような精神をした少年です。
自分なんかが「この世界は作り物である」なんて言われたらその時点で機能停止しそうですが、この少年は戸惑いながらも飲み込み戦っています。
これも愛の力なんでしょうか。好きな人との世界を守るためなら意外とこういうことができるのかもしれませんね。

終わり方的に二通りの解釈がありそうですが、個人的にはこの子は槇村ちゃんのために頑張るのではないかと思います。

あとがきで語られているように、自分の視野というか情報量が増えた事へのアクションというかどういう風に自分の中で受け入れるのかという問題は、現代人の多くが考えなければいけない問題だと思います。
簡単に多くのジャンルの情報が手に入る、嘘やAIなども含まれてくると混乱を生みます。ただ、個人的にはいろんな情報は全て受け止める派で、そこから目を逸らさずどんどん世界を広げていきたいなあと常々思っています。
この少年のように、何があっても受け入れて立ち向かえるようになりたいものです。

というわけで今作はこのあたりにしたいと思います。
今日中にもう一巻、『わたしは虚無を月に聴く』の感想を書きたいと思います。

それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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