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読書感想『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ』※ネタバレ注意

今週読んだのは著作上遠野浩平のブギーポップシリーズ第四巻、『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ』でした。

タイトルを見て『パンドラ』という文字を見つけた段階で、これは幸せについて語るんだろうなと思っていました。
まぁ作品始まってそうそう博士ちゃんに

でも、未来だけは閉じ込められて、かろうじて人々は”将来はきっといいことがある”という希望は失わずにいられている、ていう ー まあ、そういう話

P13

と早々にくぎを刺されたんですが、とにかく今作は少年少女たちの未来と幸せについてという本だった、と感想をまとめても良いような気がしています。

今作のメインを務める少年少女の集まりはそれぞれ特殊能力を持っていたり、特殊能力を持っているふりをしたり、普通の家庭じゃないことを探られないようにしている子やそもそも人間ではないことを隠そうとしていた子などなど、ひとりひとり隠し事がある上で仲良く集まっているという集団でした。

しかしこれ、特殊能力が関わって無ければ別段変なことでもないと思うんです。誰だって友達といえども言えないことはあるし、仲良しグループだからってみんなに気軽に相談できるわけもない。うっすらと仲間が悩やんでいたりなにか隠してるんじゃないかと思っても、そこに踏み込めない、みたいな。
そしてこういう関係ってお互いに踏み込まない浅い関係でありながら、とても心地良く、うっすらと気づきあってるからこそ深く繋がりあった気になるものだと個人的には思います。

この子たちは運悪く能力を楽しみすぎたせいで監視者と出会ったり(仲良くなりましたが)世界を救う運命に巻き込まれちゃうわけですが(その結果仲間が4人死んじゃうんですが)。

この少年少女たちは未来をうっすら見ていました。ただ物語の最初に言われたような不幸や自身や近い人の死はまったく予知していませんでした。
まさにパンドラというタイトル通りのストーリーでした。未来に起こる不幸を知らないからこそ動ける。もし女の子を予知すると同時に友達誰かの死も予知していたら、この話は全く変わったことになるでしょう。

結局、未来から目をそらしていた少年少女たちは二人だけになり、託された思いと共に未来に視点を合わせるシーンでこのストーリーは終わりとなります。

このストーリーは個人的に学生の頃の思い出みたいなものを懐かしみながら読んでいました。サッカー部の日曜の練習が午前で終わった後にみんなで集まってプールに行ったり、近くの川沿いを意味もなく上流に行ってみたり、別の日は下流に行ってみたり、忘れられない美しい思い出ですが、そのころの友達は今何をしているのかわかりません。
こういう思い出は多くの人が持っていて、だからこそこのシリーズの持つ等身大の悩みや葛藤、前を向く姿が今でも刺さるんだろうなと今作で改めて感じました。

あとがきを読んでいて身に沁みましたが、こういう思い出を積み重ねていくことも生きる意味なんだろうなと再確認しつつ、今度会ったらしっかり近況を聞こうかななどと思いを馳せれるいい作品でした。
もっと身近な「生きていこう」と思える幸せをかみしめながら(読書という素晴らしい趣味を忘れず)この先も元気に過ごしていきたい。


というわけで今週読んだのは『ブギーポップ・イン・ザ・ミラー パンドラ』でした。
来週は次の巻である歪曲王を読みたいと思います。すでにうっすら読んでますが、うって変わって心が痛い……

それでは最後まで読んでくださった方いらっしゃればありがとうございました。
著者Twitter:まがしき @esportsmagasiki

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