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NFTアーティスト・久〆さんとのコラボ作品制作における紆余曲折と想い

はじめに

NFT写真家の mag( @mag_cinephoto )です。簡単なプロフィールは以下です。

日常に潜む美を探し求めるNFT写真家。現実と虚構が曖昧に入り交じる、想像力の湧く余白のある瞬間をテーマに写真を撮っている。1/1作品:計11作品SOLD、NFT写真エディション "Multifaceted Tokyo" 4作品 x 10エディション SOLD OUT。TV約3.3ETH。
またコラボレーションや二次創作など、写真の型にはまらない表現に挑戦中。

この度、日頃よりとても仲良くさせていただいてるアーティスト・久〆さん( @kyushime )からお声がけいただき、コラボ作品を制作させていただきました。久〆さんのプロフィールを公式サイトから引用・抜粋させていただきますが、とんでもない経歴・実績です…!

圧倒的な線量で没入感を演出するアーティスト
NFTアーティストになったのは2022年3月。特にしっかりとしたプロモーションは行ってこなかったが、約半年間で取引されたTotal Volumeは24.83ETH。コアな暖かいファンに支えられ、現在も作品を生み出し続けている。
もともとは他名義で週刊・隔週・月刊・隔月とさまざまな漫画の連載や、小説の挿絵や原作ネームを経験しているプロの漫画家イラストレーター。
Kyushimeの作品を国内だけでなく、世界中の人に楽しんでもらいたいという想いで、Generative NFT Art Project「World of Lunars」を始動。

kyushime.com

そんな久〆さんとの、絵と写真によるコラボレーション。「絵と写真をハイレベルに交わらせるにはどうしたら良いか?」そんなテーマを根底に置いた制作に挑戦させていただきました。

また完全にゼロからの制作で紆余曲折ありました。とても難しかったですが、とても奥深い経験をさせていただいたと思っています。

そこで今回のコラボ作品の概要だけでなく、実際の制作過程や込められた想いについても知ってもらえたらと思い、noteを書かせていただきました。なるべく鮮明にという想いで書いたのでかなりの長文になっておりますが、ぜひご一読いただけたら嬉しいなと思っています。

コラボ作品について

作品のコラボコレクション名は「Lunars of Tokyo」。NFTのコラボ作品ではおそらく珍しいであろう、エディション形式での展開となります。

Lunars of Tokyo

This collection is a collaboration between artist Kyushime and photographer Mag.
Slices of the moment when fiction is mixed in and extended to the real Tokyo.

このコレクションはアーティストkyushimeと写真家magのコラボレーション作品です。
現実の東京に、虚構が入り混じり拡張された瞬間の断片。

Luna of Tokyo #1 Hanging Garden

A metropolis inverted. Creation.

Luna of Tokyo #2 Accelerator

Sharp geometric patterns. Rapidity.

Luna of Tokyo #3 Dungeon

An intricate architecture. Resoluteness.

Luna of Tokyo #4 Mirage

Inside and outside mix. Conformation.

Listについて

  • Supply: 4作品x10エディション

  • Platform: Opensea

  • List Date: 2022/11/17(木) 22:00(JST) / 8:00(EST) ~ 

  • Contract: 独自コントラクト(Manifold)

  • Price: 0.05ETH

#1、#3の奇数Noは久〆さん、#2、#4の偶数NoはmagからのListになります。

また一次販売でお迎えいただいた方には、1作品お迎えいただくごとに特典をお贈りいたします。

久〆さんからの特典

  • ジェネラティブPJ「World of Lunars」Bronze🥉ロール付与(1mint分のAL)
    ※複数種類お迎えいただいた場合は、Silver🥈ロール(3mint分のAL)の付与に昇格します

magからの特典

  • お迎えいただいた作品に対応する元写真📸をエアドロップ(Polygon chain)

コラボ作品制作の紆余曲折

ここからは、実際にコラボ作品をどう制作していったかを書かせてください。

冒頭でも書いた「絵と写真をハイレベルに交わらせるにはどうしたら良いか」といったことや、「自分たちの納得の行く形まで持って行きたい」「単なる絵と写真のコラボにはしたくない」そんな想いを持ちつつ、紆余曲折を経て生まれたコラボ作品だった気がしています。

以下では、当時DMでやり取りしていた会話を抜粋・織り交ぜつつ書いていきます。(注:メッセージの語感や語尾などは読みやすく少し調整しています。また会話の名称は敬称略しています)

コラボのお話のきっかけ

遡ること約半年前の2022年5月28日、唐突に久〆さんからこんなメッセージをいただいたことがきっかけでした。

久〆「少し先に一度magさんの写真とコラボしてみたいです。唐突に申し訳ありません、今はぼやっとしたアイデアですが、magさんさえ良ければ、叶えたい挑戦であるのです」

正直この文面を最初に見た時は、まさか自分がファンでもある久〆さんとコラボできるなんて…!ととても光栄に思いました。しかし同時に、自分が久〆さんの作品の世界観とコラボ出来るのだろうか?邪魔しないか?と非常に不安も感じてました。

ただ、メッセージにあった「挑戦」という言葉の通り、これは僕自身にとっても挑戦になるなと直感で思い、お受けさせていただきました。お話をいただいたことに報いたいという気持ちが強く湧いていたのだと思います。

コラボの取っ掛かりを掴む

当時はお互いに別スケジュールで制作もあったため、徐々にアイデア出しから進めていくことになりました。

最初は本当にゼロからのスタート。拠り所にするものがなかったので、お互いの頭にあるおぼろげなアイデアを出し合うところからはじめました。

久〆「自分の作品にまだない、現代的な東京をテーマにするのはアツそう」

mag「自分は多面的な東京というテーマで写真を撮っているので、コラボを通じてその世界観を拡張できたらアツそう」

そんな取っ掛かりから、まず自分が写真を撮ってくることに。久〆さんの作品をイメージして選んだ東京の街は渋谷と原宿。気づいたら1日で1,207枚スナップしていました。(当時は夏場だったのでカメラの発熱が尋常じゃなく、汗だくになりながらスナップさせていただいたことを覚えています)

その中から選んだ何枚かの写真と一緒に、実際コラボするとしたらという素案を久〆さんにお伝えしました。

コラボの方向性を考える

そこからは久〆さんが制作くださった写真と絵を混ぜるとしたらというラフを踏まえつつ、より具体的なかけ合わせ方を話し合っていきました。

久〆「絵と写真をハイレベルで交わらせて、私たちが納得して、どうよ!と見せれるところまで行きたい。絵と写真の調和は、BOOM BOOM SATELLITESのPVのイメージから何かヒントがいただけそうな気がする。実写人物と背景のイラスト、という、私たちとは逆だけどw」

BOOM BOOM SATELLITES 『KICK IT OUT-Full ver.-』

余談ですがこのタイミングで初めて知ったバンドです、めちゃくちゃカッコいいです

mag「絵と写真をハイレベルで交わらせたいのは同感、じゃあその形式って何?と考えたが、やっぱりコラージュの要素は含まれるのかなと思った」

「コラージュ」という言葉を僕は使ったのですが、それはコラボ制作が始まる少し前、久〆さんとKurosawaさんが別でコラボ作品をされてたことに衝撃を受けたからでした。

mag「久〆さんとKurosawaさんのコラボになぜしびれたのか?それはアーティスト同士が対等に表現をぶつけ、混沌という形で一つの作品に昇華したところに衝撃を受けたからだと思う。写真と絵を別個で存在させるよりも、写真が絵に侵食していく、力づくで混ぜ込んで一つにしていく感じのほうが強烈で魅力的になるのでは?」

久〆「magさんもコラージュやってみます?magさんのコラージュ写真見てみたいかも。Kurosawaさんとはまた違った路線のコラージュにしたいという願望はある」

コラージュ写真を作ってみる

話の流れの中言ったはいいものの、自分はコラージュ経験皆無でした…!Kurosawaさんとのコラージュのやり方を伺いつつ、自分なりに調べて一旦コラージュ写真を作ってみることに。

空撮写真を対称に置いて、グリッチエフェクトという昔のテレビの質感を取り入れて色ズレと歪みをいれてみたもの
多重露光で自分の心が動いた東京の瞬間を自分の感覚で重ねてみたもの

実際コラージュをやってみるととても難しかったんですが、とても新鮮でもありました…!こちらをたたき台に、またアイデアを出していきました。

mag「自分の撮影テーマは現実とバーチャルが入り交じる、想像力が湧く瞬間だが、コラージュを取り入れることで、現実からはどんどん離れて、自分が想像上のイメージに集約されていく感じがしている」

久〆「コラージュに合わせて絵を描くというプロセスが新しいものを生み出すような気がする。例えばmagさんのコラージュ→それに合わせた私の絵の書き起こし→再びコラージュみたいな感じとか?」

制作の方向性を再検討

そんな風に色々話をしていく中で、久〆さんがご自身のコラボの経験から感じている懸念を話してくださいました。

久〆「改めて、magさんの写真はコラージュは素晴らしく単体で完成させられていると思う。ただ一方で、お互いの作品を殺しあう形という、恐怖は避けたい」
久〆「magさんのコラージュを純粋に見てみたいと思って、コラージュを提案してしまったが、最近magさんが展示企画に応募した作品を見てその懸念が強くなった」
久〆「magさんは加工(コラージュ)しない、だからこその作品を撮っている、それは写真家としてのmagさんの芯みたいな気がした」
久〆「そう、お互いの1番の良さを生かしながら本当にコラボしたいと今思っている。それは多分、加工のない完成された写真を殺さないでうまくコラボしたいと思っている」

それは僕にとって非常にリスペクトを感じる身に余る言葉でした。僕自身はコラージュという機会をコラボを通じていただけたのでそれだけで十分ありがたかったですし、作品のクオリティを高めるための方針転換はむしろウェルカムでした。

お互いの特性の確認・写真の選択

そこからは久〆さんの絵と調和するような写真を選択し、できるだけ写真を触らない形でのマッチングを模索することに。その中でお互いの特性を確認するところから始めました。

久〆「お互いの個性の部分で言うと、ご自身の作品の特性をどう捉えているか?私の自身の特性は。明るいものより攻撃性など、比較的暗くて美しいものが得意で個性だと自分で思っている」

mag「僕は鮮やかで華やかというよりは彩度抑えた落ち着いててくすんだ印象を好んでると思う。あとはシュールな印象というか、非現実味を感じる瞬間を表現するのが特性だと思っている」

久〆「なるほど、テーマの芯を合わせて描けば合わせやすいのかも。私の特性と、magさんの特性が合わさったところが最高になるのでは。magさんの写真をもっと見れないか?」

そこで、久〆さんの作品をイメージしてというよりは、純粋に自分の表現にフォーカスした写真を何枚か選んでお見せすることに。

ガラスを介して外部と内部が曖昧に溶け合ってるところに非現実感を感じた瞬間
PCやゲームの複雑な電子回路、迷路などを連想した瞬間

イラストのラフ制作

ここからは候補で選んだ写真をもとに、久〆さんがラフイラストを制作くださいました。

久〆「影つけない白黒の方がいいかもしれない。スポーティーに絞って白黒で4パターンとかにしてシリーズみたいにして、写真の構図や奥行きを生かしたコラボというアプローチ」

ラフの時点で僕は息を呑んでしまいました…! ここで関連して自分のやってたエディションの形での展開を試してみるのも画期的かもというアイデアを出してくださいました。

そしてさらに制作は進んでいきます。

久〆「写真内の立体の仕組みをうまく組み合わせることで、写真が前に出るようにと、単色キャラで写真を邪魔しないようにしつつ。ただ少女のファッション、東京感を全振りするのか都会に溶け込む形にするのか、悩ましい」

ここは自分も悩んだんですが、久〆さんの一ファンとしての意見をお伝えしました。

mag「世界観からファッションを定める、というアプローチ。東京に全振りするか、都会に溶け込む形にするのか…?僕としては違和感がある方がいいなと感じる」
mag「例えば現代の東京の服装を少女が着ているとしたら、なんとなく想像の余地が狭まる気がしている。むしろ久〆さんの作品の魅力に感じる部分として、『これはなんだろう?』と謎が深まる感じのほうが良いなと思った」
mag「現代の東京に時代と世界が縛られない、ラフ画のどこか無機質で抽象的な服装は、個人的にはかなりしっくり来ている」

久〆「写真にうまく合わせるという意味でのファッション性のアウトラインは必要だけど、現代の服のファッションは無視して、オリジナルや、抽象的にした方が想像が膨らむということか…。納得」

そんなやり取りを踏まえて、更にブラッシュアップを重ねてくださいました。

作品完成

そしてついに完成…!作品を見たときはとてもとても感動しました。紆余曲折の検討を経て生まれた、絵と写真の調和の形が表れていると感じました。

Luna of Tokyo #1 Hanging Garden
Luna of Tokyo #2 Accelerator
Luna of Tokyo #3 Dungeon
Luna of Tokyo #4 Mirage

またコレクションのタイトルについては、実際にDiscordのボイスチャットで細かく打ち合わせする中で決めました。

コレクション名はシンプルに「Lunars of Tokyo」。今後の拡張の可能性も見据えて、複数形のLunarsとさせていただきました。

また各作品のタイトルですが、僭越ながら自分がつけさせていただきました。写真を撮ったときに感じた印象、実際にコラボ作品を眺めて感じた印象、抽象的にどんなことを思ったかなど、自分に想像できることをタイトルにつけさせていただきました。

ただ詳細に書きすぎるのは想像の余白を狭めてしまうと思い、なるべくシンプルに添えさせていただきました。あくまで一面になりますので、作品を感じ、味わう一助にしていただけると嬉しいです。

コラボを通じて感じたこと

noteに書き起こしながら思いましたが、今回のコラボではテンプレートのような正解のある制作過程ではない、文字通り模索というか、紆余曲折を経て作品が生まれたなと感じています。

また、一度コラージュというアプローチを考えつつも、一周回ってコラボをあまり意識しない写真を扱ったり、シンプルなかけ合わせに落ち着いたという事実がとても新鮮でした。自分の個性に振り切ったもの同士をかけ合わせるというアプローチを採用できたのも新たな発見だったなと思っています。このような軌道修正ができたのも、忌憚なく作品の制作に関して意見を交換し合える関係性があったからかもなと思いました。

そして何より、コラボする中で久〆さんという素晴らしいアーティストのクリエイティブに直接触れることができたのが貴重な経験だったなと思っています。他者をリスペクトする姿勢、挑戦する精神、作品のクオリティを高めるアプローチなど、僕自身がたくさん学ばせていただきました。久〆さんにはとても感謝しています。

おわりに

本当に貴重な経験だったので、とても長文になってしまいましたが、検討の様子をなるべく鮮明に書いてみました。制作の様子や紆余曲折が少しでも伝わっていたら、また作品を味わう要素にしていただけたらとても嬉しいなと思います。

改めてコラボをしてくださった久〆さん、ありがとうございます!!今回のコラボ作品から何かを感じてくださることにつながったらとても嬉しいなと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました!!このnoteが良いなと思った方は、良かったらRTやいいね、引用RTでご感想いただけると嬉しいです!!


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