前島賢の本棚晒し【復刻版】05:上遠野浩平『夜明けのブギーポップ』


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本記事は、電子書籍ストアeBookJapanに、連載「前島賢の本棚晒し」第33回として2015年3月20日に掲載されたものを、加筆修正の上再公開したものです。記述は基本的に連載当時のもので、現在とは異なる場合がありますが、ご了承ください。連載時に大変お世話になりました、そして、再公開を快諾頂きました株式会社イーブックイニシアティブジャパンの皆様に厚く御礼申し上げます。

 さて全五回でお送りしてきた『ブギーポップ』勝手に電子化記念特集もいよいよ、今回で最後。最終回の今回は第五作『夜明けのブギーポップ』を取り上げたい。

 本作は、『ブギーポップは笑わない』の前日譚……いわゆるエピソード・ゼロに相当する作品で、ブギーポップが始めて現れた事件として第一作で少しだけ言及された、連続猟奇殺人事件の顛末が描かれる。ちなみに僕は一時期、一作目『笑わない』から読み始めて本作『夜明け』まできたらまた『笑わない』に戻ってと……ほんと無限ループのように、この六冊を読み返していたものだ。
 さて、複数の視点からひとつ事件を描くという点では、第一作『ブギーポップは笑わない』とも類似する本書だが、さらに今回は連作短篇集という体裁を取っており、収録された七章のほとんどが独立した短篇としても読める内容になっている。語り手を務める人間たちの「流儀」を鮮やかに切り取った各々の短篇はいずれも印象深く、さらにそれがとある連続猟奇殺人事件を描き出し、そしてまたブギーポップの誕生と霧間凪との出会いというシリーズ全体のプロローグにもなる。
 群像劇の名手としての上遠野浩平の構成力が、存分に発揮された一冊と言える。

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