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私はサークルKサンクスが好きだという話

みなさんはコンビニ行きますか?いまや全国のコンビニ店舗数は6万ほどで、都市圏では石を投げたら当たるくらいですよね。地方でも車を運転すれば5~10分圏内にはあるくらいになってきていますよね。
それくらいみなさんの生活に身近になってきているコンビニですが、数年前に"サークルK""サンクス"というコンビニチェーンがあったことを覚えていますでしょうか?
みなさんの記憶から消えかけてしまっているかもしれないのですが、今回はこの"サークルK""サンクス"について回顧してみようと思います。

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コンビニ店舗名は"サークルK"と"サンクス"で別れていることからわかるように、もともとは別々の会社であったものの、2004年に合併をし株式会社サークルKサンクスになった。その後ファミリーマートに吸収され、現在ではそのブランド、店舗名を目にかけることはできないのだが、実は店舗数は6,000店舗に上りコンビニチェーンの激戦の時代において5強チェーンの1つに入るコンビニであった。
この読者のみなさんは"サークルKサンクス"に対してどのような印象を持っていたのだろうか。地味とか微妙とかネガティブな印象を持っている人のほうが多いのかもしれない。実際にサークルKサンクスとセブンイレブンが並んでいたら、後者に入店するという人のほうが多いかもしれない。そういった人にも(もう入店することすらできないのだが)サークルKサンクスの魅力をぜひこの記事をきっかけに知ってもらいたい。

彼らの魅力としてまず挙げられるのは、実はコンビニで取り扱っている商材の開拓者であるという点だ。例えば「コンビニスイーツ」。いまや各コンビニでオリジナルのスイーツ、ロールケーキとかプリンとかが棚に並んでいるし、店舗によってはそれ専用の棚を用意されているくらいだし、定期的に新商品が出されているくらいコンビニにとっても注力商品かつ看板商品になっていることは間違いない。そのパイオニアはサークルKサンクスなのだ。シェリエドルチェ。

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このロゴマークを見たことがある人も多いかもしれないが、例えば窯出しプリンやチーズケーキタルトが有名どころだ。これらのスイーツをどこのコンビニチェーンよりも先駆けて自社で企画し開発し製造し販売していたのだ。それまでは、コンビニといえば世の中でよく売れる商品を仕入れて24時間販売してるお店だった。コンビニ自身が商品を製造することなんて無かったのだ。あくまで商品の販路の1つだったのだ。それがこのサークルKサンクスのシェリエドルチェによってパラダイムシフトが起き始めることになった。いまやそれがスイーツだけでなく、惣菜だったり飲み物だったりお菓子だったりにもその手法は拡大している。いわゆる「プライベートブランド」。従来コンビニは商品メーカーに対して、うちに商品を提供しれてくれたらこんなにたくさんのお客さんにリーチすることができるんですよ、というのをアピールし、より安くたくさんの種類の商品を仕入れれるようにし、そのコンビニ店舗の価値を提供していくのが主流であった。しかしながら、このシェリエドルチェをきっかけに、コンビニが垂直統合型のビジネススキームに転換していくことになったのだ。

サークルKサンクスが先駆者となったのはスイーツだけではない。レジ周りのサービスを充実させたのも彼らだ。昔から中華まんはコンビニで売られているイメージはあるかもしれないが、最近ではそれとは別のケースに揚げ物やフランクフルトなども暖かい状態で陳列されている。ここも彼らが初めて陳列し出したものだ。いまでもその名残はファミリーマートにある。焼き鳥だ。まだファミリーマートと統合するとかの話が出る何年か前の彼らの方針発表会でサークルKサンクスの社長自らの口から「ぼくらは焼き鳥屋を目指しています」と声を大にして掲げていたのは今でも鮮明に覚えている。それほどに彼らはレジ横のスペースに懸けていたし、可能性を感じていたのだろう。それによる他コンビニチェーンとの差別化のもちろん視野に入っていただろう。
焼き鳥だけではない。コーヒーマシンも彼らが先駆者であった。コーヒーマシンが導入される前のコンビニは店内にフライヤーが設置され油が据え置かれ、入店するとどこか油臭さというか心地よくはない匂いが漂っていた。彼らもその匂いに悩んでいたという。そこで導入したのがコーヒーマシン。しかもそこで豆を挽き、挽きたてのコーヒーの香りをさせることにしたのだ。自然とコーヒーの香りで包まれ落ち着いて買い物に集中できる効果をもたらしてくれるというのがスタンダードになっているのだ。

ここまで商品に関する彼らの魅力を語ってきたが、もちろん商品だけには留まらない。
ここからは主観と推測がほとんどでそれに基づくデータもないので、話半分で聞いてほしい。

何の話かというと、店舗スタッフへのこだわりだ。コンビニ店舗はフランチャイズ店と直営店の2種類に大きく分かれ、フランチャイズ店はオーナーの裁量が大きくなる。スタッフの採用についてもその限りだ。にも関わらず、都市圏における店舗においても、サークルKサンクスはほぼ日本人スタッフで構成されている店舗ばかりであった。他チェーンにおいて特に東京ではコンビニスタッフは外国人(ほとんどが来日留学生)であることの方が多くなっている。その背景には時給の需要と供給のバランスが日本人だけでは取れなくなってきていることももちろんある。いわゆる海外からの出稼ぎの受け皿としてコンビニでのバイトが定着している。そして、来日留学生への仲介企業もコンビニへの斡旋にかなり力を入れている。更に最近ではコンビニでの業務(レジでの会話やお客さん対応など)は日本語を習得する上で適してた環境として来日留学生側からもコンビニで働きたいというニーズも高まってきている。このような背景から都市圏のコンビニのスタッフはほとんど外国人なのだが、サークルKサンクスは日本人スタッフに拘っていた(と思う)。わたしは外国人スタッフでもコンビニでの接客においてそこまで不満を感じることはないが、やはり満足のいく接客レベルまで教育するのは時間も労力もかかるのだろう。昨今の新型コロナウイルスの影響で接客は最小限レベルになり、レジ袋の有料化でコンビニのスタッフとのやり取りが少なくなってしまっているが、レジでのコミュニケーションにおける間合いや行間の読みや、レジ袋への商品の入れ方など、細かい気遣いや気付きを習得するのは、日本の風習や国民性を理解しなければ難易度はかなり高いだろう。お客さんに対してそういった少しのストレスも極力感じさせないために日本人スタッフを採用し続けたのかもしれない。また、これはかなり偏見だがサークルKサンクスの本社は愛知県稲沢市なのだが、愛知県の県民性として郷土愛が強くそれにより余所者に対しては排他的であると言われていることも少しは関係しているのかもしれない。

これはここで話す最後の魅力になるが、1番の魅力であるとも思っている。それはサークルKサンクスで働いている現場の社員が、みなサークルKサンクスを好きであることだ。そう。自社愛に満ちているこということ。ファミリーマートとの統合の話が明るみなるかなり前にサークルKサンクスの社員の何人かと会話する機会があったのだが、みな口を揃えて「サークルKサンクスで働き続けたい」と言っていたのだ。それは会社という組織を回していく上で重要な要素だし、社内の雰囲気作り、ひいては各組織人のベクトルを合わせていくのが何よりも難しいと思う。組織づくりにおける永遠の課題であろう。それがサークルKサンクスにおいては統率が取れていて自社愛、忠誠心も根付いている。それが彼らの強さだったし、それがアイデンティティになっていたのだと感じた。結果前述したようなどのコンビニチェーンよりも早く先駆者としてサービスの幅を広げていくことに繋がったのだ。

しかし、周知の通りサークルKサンクスというブランドは無くなってしまった。そこの経緯までは私は知り得ていないのだが、その統合のニュースが世に出たときに彼らの現場の社員は、寝耳に水だったという。サークルKサンクスだけではなく、その親会社のユニーグループとしてファミリーマートと手を組むことになったわけなので、コンビニ単体の話ではないのだろう。もはや、ファミリーマートというよりも伊藤忠商事がディーラーとなりコンビニ業界という枠よりも大きい枠の話になってしまっているが。
私はこのニュースは一消費者としてサークルKサンクスの商品が食べれなくなるのが残念だったし、同じように悲しんだファンも多かっただろう。なので、これをここまで聴いてくれた皆さんには、いまのコンビニの在り方の根元には彼らの企業努力があったからであることを忘れずに心に留めておいてほしい。


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