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メラビアンの法則~時には役者の様に

アスリートが運動指導者として活躍する為に必要な学びを提供しているメディアです。

今回のタイトルにある「メラビアンの法則」というのは非常に有名ですから、すでに知っている!という人も多いことと思いますが、実は少しズレた解釈をされていることが多いのも事実。
ネットで検索すればこの類の話はすぐに出てきますが、運動指導者向けに解説していきます。

メラビアンの法則とは?

メラビアンの法則とは、アルバート・メラビアンという偉い人が行った実験から名が付いた法則です。
提唱されたのは1971年ですから、もう長きにわたって言われている話ですね。

この実験の目的を簡単に説明します。
例えばあなたが私にペンを貸してくれたとします。
この時私は感謝を伝えるわけですが、しわを寄せて睨むような表情で、そしてボソっとした声で「ありがとう」と言ったらあなたはどう思うでしょうか?
「おい、ペン返せよ!?」となりますよね。

メラビアンさんはこの様な状況の時、(「ありがとう」という)メッセージを受け取る時、人は、言語情報[Verbal](ありがとう)、聴覚情報[Voice](ボソっとした声)、視覚情報[Visual](しわを寄せて睨むような表情)のどれにもっとも影響を受けるのかを調べたのです。

すると、視覚情報[Visual]が55%聴覚情報[Voice]が38%言語情報[Verbal]が7%だった、という結果が出たのです。それぞれの頭文字を取って3Vの法則という言われ方もします。

だから「ありがとう」という時は、笑顔で心から言わないと本当の意味では伝わらないということですね。
当たり前のことですが、ついついテキトーに「ありがとう」と言ってしまうことはありますから気を付けましょう。

ズレた解釈

さて、問題となるのはここから。
ひとまずこのグラフをご覧ください。

今、テキトーにエクセルで作ったので非常に雑ですが(笑)、メラビアンの法則を円グラフにするとこういうことになりますね。
ただ、こういうグラフには要注意。

「視覚55%」が誇張されすぎです。

「言語7%」に関しては悪意すら感じる小ささ。
こういうグラフを見せつけてくるパターンは怪しいビジネスなんかでも多いですから気を付けましょう。

実際にメラビアンさんは(会ったことないけど)、こんなことが言いたかったのではないはずです。
しかし、コミュニケーション研修なんかではこんなグラフを見せて、「視覚情報が大事!」ということを極端に取り上げて、挙句「第一印象が大事!」とか「見た目が大事!」という風に話を展開することも……。

もちろん、第一印象や見た目は大事です。
ただ、超イケメンだったりめちゃくちゃ美しい顔立ちの人だったとしても、さすがに話の内容がスッカラカンだったらコミュニケーションどころじゃありません。

余談ですがホストクラブを経営されている方が、「イケメンは圧倒的有利。でもそれは最初だけ。結局シャベリが上手いヤツの方が長く活躍する」と仰っていました。

現に、聴覚情報と言語情報という「耳から入ってくる情報」は足し合わせると45%になるわけですから、視覚情報と並んで非常に重要であるという見方もできるでしょう。
例えばこれが「与党支持55%」で「野党支持45%」だったら野党は結構いいとこ行ってますよね。


運動指導者として適切に解釈する

メラビアンさんが言いたかったのはきっと、「視覚、聴覚、言語を上手いこと組み合わせてコミュニケーションを取るといいんじゃね?」ということだと思うのです。
それと「言葉だけじゃなくて、表情とか声の調子には気を付けろよ」ということかなと。

つまり運動指導というところで言うと、「トレーナーは爽やかさが一番!」というペラペラな話ではなくて、「身振り手振りや声の出し方や擬音を工夫して説明するとよし」ということになろうかと思います。
ですから、手本を見せるということは大切です。
この点については以下の記事で解説していますので是非ご覧ください。

そして先述したように声の出し方(聴覚情報)は工夫したいところです
例えば数字を数える時でも「い~ち、に~、さ~ん」と「イチッ、ニッ、サンッ」では相手の動きが変わります。
擬音も「スッと動いてみましょう」と「もっとグッといきましょう」ではニュアンスが違います。

また最近ではスマホやタブレットがありますから、動作を動画にとっておいて共有するのも有効ですね。(視覚情報)

とはいえ、言語情報が大切でないということではありません。
要点を抑えた解説や、相手の心に残る言葉を届けることは必要です。


時には役者の様に

私は指導する際に、(相手がどの様な人かもよりますが)かなり身振り手振りを活用します。そして声の出し方に逐一気を配っています。
個人的には「言葉を彩る」工夫と考えていますが、それはもう役者さんが演技するのと似ています

「OK」という一言でも、もうほぼ完璧だから拍手をしながらの「OK」なのか、今はそれでいいけど次はもっとこうしてみようかという意味合いの「OK」と、こちらが提示したプログラムが不適切だった際に放つ「OK」は全て違います。

こういった工夫をすると、仕事が彩ることになるので面白いのではないかと思います。
ただあまりにもわざとらしい演技になってしまうと逆効果
「時には役者の様に」ですから、ずっと演技していたらダメ。
役者さんのお芝居から学べることは沢山ありますが、私たちの仕事は役者ではありませんからね。
結局のところ、心からのコミュニケーションに徹して運動指導をするというのが重要。

そうすれば自然と適切な表情や声が出てきて、言葉は彩られてきます。



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