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吉居駿恭「兄弟」

100年以上も行われている箱根駅伝では、やはり3世代で箱根駅伝していたり、親子で箱根駅伝を走ったり。そういった血縁による絆も生まれていった。近年だと設楽啓太・悠太兄弟に、村山謙太・紘太兄弟、服部勇馬・弾馬兄弟……。

数多くの兄弟による活躍が生まれてきた中、言うまでもなく今学生最強のランナーと言えるのは彼らだろう。吉居大和と吉居駿恭兄弟。そして駿恭くんもまた、名だたる選手が多い中央の中で「未来」を担うランナーだ。


箱根で生まれた唯一の「隙」

前回の箱根駅伝、駒澤大学に唯一肉薄することができたのは白地にCのマークの古豪・中央大学だった。2区の吉居大和くんが区間賞、連続して3区の中野翔太くんも区間賞を獲得し、駒澤大学を突き放したかに見えた。

しかし、駒澤の篠原倖太朗くんが想像以上に粘り10秒差に封じられ、今期主将であるエース鈴木芽吹くん、青山学院の駅伝男・太田蒼生くんとのデッドヒートに敗れ3位に後退。

もし、駿恭くんの部分で何とか粘ることができたならと思わないでもないが、彼は前回1年生。準エース区間と呼ばれる中で区間5位という結果は決して責めるべきではない。勝負に流れがあるとはいえ、いきなりの準エース区間でもあった彼だけが責められることは率直に言えば酷だろう(それだけ駒澤大学がすごかったということでもあるが)。

強いてあげるなら、藤原正和監督が生み出してしまった「隙」だったということだろう。しかし、駿恭くんはその悔しさもばねにしながら今シーズンも着々と実績を残し続けている。

もう一人の「吉居」として

さて秋シーズン、駒澤大学の対抗馬としても期待されていた中央大学。駅伝の結果は決して芳しい物とは言えない。出雲駅伝では7位、全日本大学駅伝は4位。それぞれ優勝した駒澤には差を付けられてしまう結果となった。

それでも藤原正和監督は決して後ろ向きになっているわけではない。

「とにかく競り合わせて自信を回復させたかった」

https://4years.asahi.com/article/15050729

と語るようにエース格となる中野くんと駿恭くんにはある意味で他大学にとって驚異的な存在でなくてはならないと藤原監督も考えていたのだ。結果として現状では何とかめどが立つくらいにまでは回復している様子。

特に全日本は藤原監督も手ごたえを得たようで、コメントも比較的明るい。

「いつも大和に頼ってきたチームでしたけど、下級生が奮起して流れを引き戻してくれたことが、今回の全日本で一番の収穫だったと思います。1、2年生を中心にいい駅伝をしてくれましたので、来年以降も中大らしい駅伝ができるということを証明できたのではないでしょうか」

https://4years.asahi.com/article/15050729

全日本では駿恭くんも1区区間3位と及第点の成績を残しているし、兄の大和くんが不調だった中でも総合成績4位だったことはチームの確実な成長を示している何よりの証と言える。

爆発的な走りを特徴とする兄と違い、彼の良いところは「外さない強さ」にある。言い換えれば高い安定感があると言える。それはチームに流れを与えないという点でも大きなアドバンテージとなりうるもの。爆発的な能力を持っている選手だけで箱根を勝てるわけではないことを、藤原監督は誰よりもわかっている。

だからこそ、次のエースとなるであろう彼にかかる期待が大きい。おそらく駒澤の2区は芽吹くん、3区は佐藤くんと考えると、4区は篠原くんか……。相当な強者であることに間違いはないが、ここで競り勝つことができた時、絶対落とせない100回大会でのゴールテープの可能性は高まる。

1年を経て、Cのマークを先頭へと導けるのか。彼の雄姿に期待がかかる。

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