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平林清澄「姿勢」

彼の走りを一目見た時、3年後の前田康弘監督は彼に「次期エース」を託しているのかもしれない。そう思った。それだけのポテンシャルを持ち合わせていることはもちろんだが、果敢に攻め続ける彼の姿はそれに答えているようでもある。

とにかく平林くんの走りには迷いがない。それは常に「攻めている」ということを裏付けている。

貫く「攻め」の走り

大学駅伝デビュー戦となった昨年の出雲駅伝では、アンカー区間の6区で序盤から攻めの走りを展開。結果こそ1人抜いたが2人抜かれる結果となったものの見事な攻めの走りを見せて周囲を驚かせると、3大駅伝全てに出場し見事に結果で応えて見せた。

特に前回の箱根駅伝の走りは圧巻だった。復路前半区間でのブレーキを巻き返すだけでなく、10位とシード権ギリギリだった國學院大學を一気に5位にまで押し上げる立役者となったのだ。アンカー区間10区で8位に順位を落としたことからも平林くんの快走が無ければ、今回國學院大學は予選からになっていても何ら不思議では無かったのだ。

窮地に現れ、そしてチームを救っていくその様はまさしく「エースそのもの」。だからこそ、2年目となる春シーズンではまだまだ大きな課題も見えてきた。まだまだ全般的なレベルアップが必要になっていたということによって。

序盤から仕掛け、レースを作っていく彼のスタイルは結果としてトラックレースでは「利用されやすい」という欠点を生む。最終的に消耗し自滅をするということも考えられるため、できるならば序盤は揺さぶられながらも先頭集団で耐え、終盤に仕掛けて突き放すというのが定石と言える。

平林くんはあえてそのリスクを背負ってまでレースに挑み続けた。そしてそれは着実に芽を出そうとしている。エースが集まる出雲駅伝で3区区間6位、全日本大学駅伝では7区区間4位と結果を出している。特に全日本大学駅伝の結果だけ見ると1位が田澤くん、2位が近藤幸太郎くん、3位がフィリップ・ムルワくんと各大学のエースクラスと何ら遜色のない結果を出している。

元々学生ハーフ優勝という実績も引っ提げているだけに能力の高さは折り紙付き。実力から言ってもエース候補として彼が活躍する様はとても楽しみである。

そして思う。彼はなぜここまでの結果を出すに至ったのか、そしてどうしてここまでハートの強さを活かした走りを見せることが出来ているのかという事を。それはおそらく、彼自身が今も尚「挑戦者」であるからだと私は思っている。

ぶち倒したい相手

Numberのインタビューで「ぶち倒したい相手」として挙げていたのが青山学院大学。その青山学院大学に勝利するためには自らだけでなく、周囲のレベルアップも必要と平林くんは考える。
全力で取り組む彼の姿勢は、さながら求道者でありそしてチームを上へと押し上げるエースという存在そのものと言える。思うと、土方選手も浦野選手も彼らが姿勢を見せることでチームを上位へと押し上げていった。

それと同じように平林くんも「ぶち倒したい相手に勝つ」という目的に対してこのようにNumberのインタビューでは答えていた。
「青学の強さって、チームのスタンダードが高いことだと思うんです。レギュラーになろうと思えば、その高い水準に追い付こうとみんなが頑張る。だから青学は駅伝で強いんじゃないかって。國學院のスタンダードをあげていきたいと思っているので、僕らが練習の質をあげつつ、トラックでもタイムを伸ばして、他の選手の心理的な限界をなくすつもりです」

自らに不足している弱点だけでなくチームとして勝ちに行くという事を追求し続けていく様は、シード争いが目標だった國學院をシード権常連校へと生まれ変わらせた浦野・土方両選手とどこか似ている。

そして、彼に反応するかのように今、國學院には非常に素晴らしい選手たちが揃っている。そして、各選手ともに非常にレベルアップを遂げることが出来ていることに間違いない。

それが出雲と全日本が2位にランクインさせる原動力にもなったのだろう。彼が生み出してきた波動は確実に同じチームの選手たちにも着実にタイへ素晴らしい影響を持たせてくれるそうした存在に彼はが今からそういう選手になれるかどうか。追って注目していきたい。

光輝く絶対的存在へ

何よりも、彼のようなチャレンジする選手を入学させたことに前田監督の指導レベルの高さも決して見逃すことが出来ないだろう。
どこか田澤廉くんを強い学生屈指のランナーへと育て上げた大八木監督と、平林くんと前田監督はどこか似ている。

國學院には浦野・土方両選手卒業後に上を強く意識する彼のようなをスカウトする必要があった。「強烈な個」を求めていたのだろう。

そんな中迷いなく前へと突き進んでいくような彼の存在に、きっと前田監督は強くなるまで育てたいと感じた。平林くんは平林くんで、更に上を目指して自らを追い込み、そして練習の質などを今も尚上げ続けている。

過去最高順位を獲得した今だからこそ、彼という存在がいることに前田監督は価値を感じているはずだ。より國學院が強くなりそして鮮烈な存在へと生まれ変わるために彼に求められるのは「負けない事」だ。

エースが負けてはいけない。少なくとも存分に戦える強さが無ければならない。平林くんには「恐れない」という素晴らしい心もある。きっと箱根路でも戦うことができるはずだ。

ハートの強さを持っている彼が田澤くんや近藤くんらに臆することなく攻め込んでいく。そんな展開を密かに期待するのもどこか楽しいものだと私は思う。

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