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葛西潤「真価」

全日本大学駅伝2区。いい流れを加速させたい大学と悪い流れを断ち切りたい大学。それぞれの思惑が交錯する中で、先頭集団では駒澤大学の佐藤圭汰くんと競り合っていたのは、創価大学の葛西潤くんだった。高校生記録を引っ提げて現れた稀代のスピードスター相手にラスト逃げ切ったのは葛西くん。

見事に区間1位をもぎ取っただけでなく、区間新記録まで樹立しチームに流れを引き寄せた。そして、彼がラスト見せていたスピードは今の創価大学というチームの実力を見るに十分な物だった。

結論から言えば、決して他大学は創価大学を侮ってはいけないということである。

とにかく明るく強いチーム

現在大学「5年生」の嶋津雄大くんを始め、創価大学のチームカラーはとにかく明るいチームだということ、そして監督の榎木和貴さんのプランニングがしっかりとハマっているということ。

2年前の往路優勝・総合2位という結果は気象条件が生んだラッキーというのもあったとは思う。ただ、それ以上に榎木監督の「箱根駅伝に向けて集中的に強化する」という方針が当たったようにも思えてならない。

葛西くんは2年前そのチームの中で3区を担当して区間3位に入っている。タイムの面でも嶋津くんに次いで良く、嶋津くんの卒業後は間違いなく創価大学のエースとなって行くことだろうと誰もが感じていた。

しかし、その後左足の足底部位を負傷し練習なども積むことが出来ずに苦しんだ葛西くん。3年時にレース復帰が叶ったのは箱根駅伝直前の11月。記録会では自己ベストこそ出したものの20キロの駅伝ではだますこともできない。結果として1区区間15位で終わってしまった。

そんな中で葛西くんが知ったのは「ありがたみ」。サポートやケアなどをしてくださる周囲への気持ちを強くしたことは間違いなかった。そして、もう一人大きな存在がいた。それこそが「ヒーローになりたい」と語る嶋津くんである。

チームを救うヒーロー

嶋津くんは目の病気などもあるにもかかわらず、とにかく前向きでいつも力強い。何よりもチーム内で一番の実力者と今ではなっている。そんな彼が「実業団0年目」という形で現在も残ってくれていることを葛西くんは「ラッキー」と語る。

「本当にもう、力はすごいですし、ムードメーカーでもあるので、そこはすごい頼りがいがあります。練習でももちろん引っ張ってくれますし、残ってくれてラッキーで、めちゃめちゃ心強いです」と語る。そんな二人は今年の4月に行われた日本学生陸上競技個人選手権で10000メートルの部門で出場。見事なワンツーフィニッシュを決めて見せた。

彼には不思議な力がある。気が付くと周囲を大きく巻き込んで明るくするような力。榎木監督にとってもそうだが、葛西くんにとっても彼という存在はそれだけ大きかったようにも思えてならない。
そんな二人に触発され「葛西くん、嶋津くんに頼らないチーム作り」というのを榎木監督がプランニングできたのも創価大学躍進の大きな理由だろう。

依存することなく、活かしつつ強くなる。創価大学が現在着々とチーム力を高めているのはそこが要因だろう。現在Instagramでも榎木監督は「下級生も力を付けてきている」とコメントしているように、チーム状態も上向きだ。
そこに留学生のムルワくんを入れた3本柱が機能すれば……。

また2年前の再現を起こす可能性も大いにあるはずだ。

真価が問われるレース

「創価の日本人エースになる」と宣言した葛西くんのこの1年は確実に成長を遂げていると言ってもいい。そしてその集大成となるのは間違いなく箱根駅伝だ。

4月の学生個人から再び左足の足底部に痛みが出たということもあり、まだまだ状態をあげているという段階。もし彼に痛みなどが出なければ間違いなく往路の主要区間を走ることとなるだろう。そしてそれは彼が「日本人エースになる」と宣言したからこそ出すべき「結果」も併せて期待されることとなる。

青赤の創価大学が再び箱根路に衝撃を与えるにはムルワくんや嶋津くんだけでは当然難しい事。やはり葛西くんの快走こそがチームに流れを大きく引き寄せると私は信じている。

創価のエースとして真価が問われる最後の箱根路、ストライプインパクトを与えることができるのだろうか。


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