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Cherryさんが受け継いだもの

小さなきっかけをもとにして人は成長していく。これは良くあることだ。気が付いたら我々が想像していたよりも、はるかに大きくなっていくことだってある。3か月前のUMBから今に至るまで。私は確かにその様を目の当たりにしている。

かつては「Cherry少年」と呼んでも不思議ではなかった彼は、今まさに千葉屈指のMCへと成長を遂げようとしている。そこには憧れていた先輩たちから受け継いだものをきちんと形にしているから。

私はそのように思える。


最初の印象は「上手い子」だった

高校生ラップ選手権にフリースタイルダンジョン。他にも大小さまざまなMCバトルの大会が開かれるようになってから「ラップが上手いMC」は多く出てきた。しかし、多くの人に刺さるMCや格好いいMCたちは(ルックス抜きにして)果たしていただろうかといわれると今一つピンと来ない。

Cherryさんもまた、その中の一人であったと誠に失礼ながら思うのだ。

S-kaineさんやAuthorityさん……。あっという間にスターダムへと駆けあがっていくような痛快さ。上位を脅かすような勢いと迫力を持ったMCはなかなか出てこない。何よりそういった「物語性」もあまり感じられない。

だが……、得てしてスターというのはこういった時に出てくるもの。初めて見た去年12月、それから半年以上経過していく中で、彼は「一人の男」としての精悍さを身に着けていった。

現場で会うたび雰囲気が逞しくなっていった

そのきっかけはたった1つ目の勝利だったのではないかと、今となっては思う。当然千葉には憧れのKENさんがいて、TYPEさん(彼と作った曲もまたいい曲である)やSalvasicさん(いかにもクラブで遊び慣れている、楽しんでいる感が伝わってくる格好いいMCだ)などといった仲のいいマイメンたちが多くいる。

その中で、彼は松戸にて行われているMCバトルで優勝し(優勝してきたMCたちは全員それぞれに「骨」を持っている強いMCたちだ)、歴戦の強者として名を連ねた。自分も強いかもしれないというのを傲慢さとはき違えずに研鑽を積み上げてきた。王としての日常を重ねる中で。

それが、会うたびにたくましさを増していく中の1つとなったのかもしれない。また、それが結実したのが6月のUMB予選だったのではないだろうか。

憧れていた背中

その遠くに見ていたかもしれない背中、2回戦で倒したVENMさんをそして決勝で対峙したKENさんをそのバトルで越えたCherryさん。憧れているからこそのお互いの真っ向勝負はどこか見ていて爽快なものがあった。

MCバトルには様々な戦い方があるし、それを使うことは決して悪いことではないが互いにノーガードで殴りあうようなバイブス勝負。もしかするとそれは千葉の伝統なのかもしれないし、それを彼が1つ受け継ぎつつ「千葉の魂」を代弁するかのような戦いぶりを見せたのは感動さえ覚えた。

久々、8月に彼と会った時もそのたくましさは更に増しており、一人の人間として完全に自信を付けた男となっていた。極めてたのもしくそして今まさしく彼は何をやってもうまく行くような。そういう感覚にとらわれていることだろう。

もちろんこのままぐんぐんと突き進んでほしい。そのうえでここを越えて行ったらMCとしてさらにレベルアップする。このように感じている。
1つは上を目指し続けること。そしてもう1つはやり続けることだ。

心配などしていない

かつて私は大きな志を持っているような意識高いコミュニティにいた。その中には壮大な夢を掲げた人たちがいた。しかし、彼らはいつしか様々な理不尽に心折られ、あるいは篭絡され洗脳され……。

いずれにしても夢をあきらめたか理想とは違う形で妥協して……。いずれにしても心折られた人間たちが多くなっていったことは事実だった。上を目指すというのはそういった理不尽にも心折られるかもしれないということも示す。

そして、それに折れることなくチャレンジしラッパーとして活動し続けることは実力をさらに付けることにもつながる。挫折してしまうこともあるかもしれないが、続けることはとても大事なのだ。

とはいえ、これらについて別に私は心配などしていない。何よりも彼が憧れてきた背中を持つ人たちはチャレンジすることの大切さやあきらめないことを何よりも彼らに教えているはず。

臆することなく前を向いて挑戦すれば、また今年の冬クラブチッタで精悍な顔つきをした彼を見ることができるだろう。

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