ミルメークめっちゃ集めて牛乳飲んでる奴いたよな

ミルメークめっちゃ集めて牛乳飲んでる奴いたよな。

あいつ元気にしてんのかな。

ふとした時に思い出すことって、そういうしょうもないことだったりするよね。しょうもなくなかったんだと、今ならわかるけど。

あいつは3時間目が終わった瞬間に「ハラヘッター」って叫んでた。まだもう1時間あるのに馬鹿じゃんと思っていたけど、もしかしたら満足に食べられない事情があったのかもな、ってさ。

あいつはすごくひょろひょろだった。「俺、姉ちゃんのお下がり使ってるから」とピンクのハート付きの鉛筆を使っていて、みんなから揶揄われていた。

あいつは小学生の時、さらさらの髪を他の人より長く伸ばしていて、みんなからキノコと言われていた。校則があるから、中学生になったらさすがに切っていたけど。

あいつはみんなが残した牛乳を5本くらい飲んでいた。ミルメークが出る日に限らず、毎日。「おいお前また牛乳飲んでんのかよ〜」とみんなに笑われていたっけな。

あいつの3つ上の姉ちゃんは、エプロンとバンダナを身につけて卒業アルバムに映っていた。その卒業アルバムを見た当時は、「あいつの姉ちゃん料理得意なんだすげー」くらいの感情しか浮かばなかったけど、もしかしたらあいつの姉ちゃんは、小学生のうちから頑張らないといけない状況にあったのかもしれない。

あれ、そういやあいつ何部だったっけ。

サッカー部だっけ。卓球部だっけ。野球部、、、はないな、坊主じゃなかったから。テニス部だっけ?

あいつの姉ちゃんは部活入ってたっけ?

わたし、あいつのこと何も知らなかったんだなあ、と思う。ミルメークめっちゃ集めて牛乳飲んでたあいつだけじゃない。苗字が3回変わったあいつのことも、ずっとひらがなの名前の体操服を着ていたあの子のことも、何も知らなかった。

今はそうではない。あいつの苗字が3回変わった意味も、あの子がずっとひらがなの体操服を着ていた意味も、今ならわかる。

それはおそらく、貧困だ。

日本の子どもの貧困は、相対的貧困である。絶対的に貧しいわけではない。学校に行けている限り、彼らの貧しさは周りから見てもわかりづらい。

彼らの貧しさは、いつもぽろっと表れる。上履きがずっと汚いままだったり、持ち物が全部お下がりだったり、真冬でも決まって半袖だったり(ただ体温高いだけの子どももいるけど)。

学校ではどうにもできない。先生はすべての子どもを平等に見なければいけないからだ。そのまま成長していく中で、相対的貧困家庭の子どもが、どこかで違和感を感じることがあるのではないかと思う。周囲と自分を比較しての違和感だ。比較し、もしも自分を「劣っている方」と認識した場合、それは努力で変えられるものでないからこそ、ショックを受けることは想像にかたくない。

地域もそれは認識しているだろう。現に、子ども食堂の数は増えている。ただ、頻繁に開かれている場所は数箇所だ。いつでも訪れることのできない子ども食堂が、果たして子どもを救うのか?食堂に限らず「そこにいけばある」くらいの、第二の居場所を提供する方が、より多くの子どもにとって良いのではないか?

わたしもまだ勉強不足だ。学んで学んで、吸収しなければ。それは公務員を目指しているから、ではなく、昔に何も知らなかった自分への戒め、かもしれない。

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