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3度目の遭遇

ジムで汗を流し、シャワーを浴びて、帰り支度をしていた。

ーこれからどうしよう。

そんなことを考えて、ボーッと窓の外を見た。


・・・あれ?


ジムの目の前にあるライブハウスから、一人の男性が出てきた。


ーーーあきとさん。

ジムは3階。

ライブハウスは道を挟んで1階。


私は、ただただ、あきとさんに目を奪われていた。

ーー行動範囲って、こういうことか…。


!!!


すると、視線を感じたのか、ジムを見上げ、私と目が合う。


お互いに驚き、言葉も発せない。


私は、すぐに窓から離れ、距離をとる。


・・・どうしよう。外に出れないじゃん…。なんで気づくの…。


10分ほど経過して、そっと窓を見る。

誰もいない。


・・・よかった。今のうちだ。


そそくさと荷物をまとめ、

「ありがとうございました!お先に失礼します!」

と挨拶をしてジムを出た。


階段で1階へ下り、駅へ向かう。

ーー今日ライブなのかな。

ーーーどんな姿で歌って、ギターを弾くのだろう・・・

そんなことを考えていると、


「おいっ!」

と肩を叩かれた。

「・・っは!あきとさん・・・」

「ひどくない?完全目があったのにしかと?」

「いや、人違いかなーって。あのライブハウスで今日ライブなんですか?」

「ちがうちがう!お世話になったから、挨拶しにきただけ。」

「あぁ・・そうなんですね。」

「この後、時間ある?れいちゃん。」

「あ、いや、今日は…。母が夕ご飯作ってくれてると思うので…。」

「夕ご飯!?いや、まだ14:00だけど!笑」

「はい・・お茶くらいなら・・」

「決まり!未成年でしょ?酒はやめようね!」

「はい・・。」


彼と行ったのは、人気のない喫茶店。

彼は顔なじみのようで、

「いつもの席、空いてます?」

「おー、空いてるよ、どうぞ」

「ありがとうございます〜!」


「よく来るんですか?」

「うん、結構ね!ここ、タバコ吸えるからさ。静かだし、落ち着くんだよね。」

「へぇ〜。確かに、静かですね・・」

「何飲む?ジュース?」

「そこまでお子ちゃまじゃないです!アイスティーストレートで!!」

「あぁ、ごめんごめん。笑 すみませーん!アイスコーヒーとアイスティーストレートください!

あれ?今日はタバコ吸わないの?」

「あ、はい。もうやめようと思って。」

「へぇ〜。ずいぶんな心変わりだね。まるで別人だ。」

「何も知らないくせに、やめてくださいよ!」

「はは!確かに。俺たち何も知らないよね。名前くらいか。」

「・・・・」

「あぁ、ごめん。れいちゃんは、大学生?」

「大学生なら堂々とお酒飲みます。高校生入ったばかりです。」

「えっ!まじ!女の子って化粧すると分からないね…俺、大学入りたてかな?くらいに思ってた!!!」

「すみません、ガキで。」

「いやいや、妙に落ち着いてるというか、世の中察してます!みたいな感じするじゃん?笑 いつも私服だったし。高校サボって悪さしちゃってたのね。笑」

「まぁ・・はい。」

「俺は、26。じゃあ10個違うんだね。俺、大丈夫かな。犯罪にならないよね?お茶するくらい。えー、でもタバコとか容認しちゃってる時点でOUT か。」

「もうタバコもお酒もやりませんから。別にあきとさんに関係ないし」

ー「お待たせしました。アイスティーストレートとアイスコーヒーです」

「でもさ、よくよく考えると、偶然で3回も会うってすごいよね?」

「まぁ…でも狭い行動範囲だし、そういうのあるんじゃないですか」

「そうかなぁ…俺、今日あのマンション行ったんだよ。別に友達に用があったわけじゃなくて、駐車場に。」

「え?なんで?」

「いるかなーって。でもいるかなーって思った時って、大抵いないもんだね。でも今日諦めかけたときに逢えた。ちょっと興奮した。」

「そうなんですね。私も初めて駐車場で会った後、何回か行きました。別に会えるかなーとか思ったわけじゃないですけど。その後すぐに、あの飲食店で会いました。」

ーー嘘。会いたいって思ってた。

「そっか。期待してたのは俺だけね。笑 別に変な気持ちとか抱いてるわけじゃないから安心して。笑」

「・・・はい。あの、バンド、やってるんですよね?」

「あーうん!俺のこと知らないでしょ?」

「知らないです。有名なんですか?私、音楽とかあまり聞かなくて・・」

「うーん。ぼちぼちって感じ。狭き門だしね。でも一生続けていくつもり。」

「そうなんですね。羨ましい。これだ!って思うものがあって。私もそういうのに、いつか出会えるのかな。」

「高校生でしょ?俺は高校の時からこの道が好きだったからなー。路線はちょっと違うかもだけど・・」

「路線?」

「音楽の系統?みたいなやつ?でも今はしっくりきてるし、やってみないと分からないなーって思ってる。きっとれいちゃんにも見つかるよ。こういうのって、ピン!とくるものだからさ。焦らず。」

「系統・・ふーん。私は、大人になったら、母を喜ばせたいです。母は、バリバリのキャリアウーマンだったのに、子供ができて諦めたんです。その道を私が開いていきたいって、思ってるくらい。」

「キャリアウーマン。いいじゃん。かっこいい。それも十分な夢だよ。なにも考えずにいるより全然いいじゃん。キャリアウーマンになったらさ、一緒にお酒飲もうよ。堂々と。」

「はい。笑 何年後でしょうね。」


そんな他愛のない会話を1時間くらいして、彼が切り出した。

「連絡先、教えてよ。会えるかも、じゃなくて、会える、の方がモチベーションにつながる。」

「え・・・。いや・・・」

「だよね。じゃあ、気が向いたら連絡して!これ、俺の番号とアドレス。これから打ち合わせだから、もう行くね。帰り、また寄り道しちゃダメだよ。夕ご飯、待ってるんでしょ。」

そう言い残して、お会計を済ませて、彼は店を出た。

連絡先なんて、捨てればいいのに、あの時捨てておけばよかったのに。


私は、財布にしまって、店を出た。

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