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鎌田前耕地緑道
世田谷区岡本の静嘉堂緑地の南のふもとにある岡本公園の前から、さらに南の鎌田へ伸びる、鎌田前耕地緑道。
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250m足らずの短い緑道ですが、年中カラフルな花々で彩られていて、歩くと明るい気分になります。
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沿道の草花は、地元の方々によって手入れされています。
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緑道が道る鎌田前耕地地区は、景観への配慮のため、建物の建て方にも制限が設けられ、生垣やフェンスなどの緑化のルールも定められているそう。
こういう、都会のオアシスのような素敵な場所は、そこに住む人々の努力があって、維持されているんですね。
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この緑道は、「水道みち」の上に作られました。
地下に水道管が走り、その上を道路として使っているのが、水道みち。
鎌田前耕地緑道は、鎌田の砧下浄水場から三軒茶屋までほぼ一直線に伸びる「旧渋谷町水道みち」の、ごく一部と重なっています。
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一直線に住宅街を貫いている
砧下浄水場は大正期に建てられた、今も現役の浄水施設。
当時人口が増加していた渋谷まで、多摩川の水を送るために造られました。
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駒沢給水塔風景資産保存会の作成図より
旧渋谷町水道みち沿いには、送水施設ゆかりのモノをいろいろ見ることができます。
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右奥の赤いロケット型オブジェは多摩川からの取水口設備
地下で水を取込む際、水道管内で膨む空気をここから抜く
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送水管専用のトンネルとして利用されていた
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大正期に中世ヨーロッパのお城(?)を意識して建てられた
横に同じ形の塔がもう一つあり「双子の給水塔」と呼ばれる
現在は非常時用の応急給水槽として使われている
水道みちは、水道施設間をなるべく最短距離で結ぶものだから、だいたいの所で本当にまっすぐです。
鎌田前耕地緑道も、地図で俯瞰して見ると、まっすぐな水道みちの上をなぞっています。
でも、実際に歩いてみると、緑道は少しだけゆるく蛇行しています。
ここだけはちょっと、自然の流れらしいリズムを演出したくて、こういうふうに造ったのでしょうか。
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私たちが歩く道の下には、暗渠となった川、下水道、送水道と、いろいろな水の流れがあります。
やはり、この足下には、水路が縦横に巡る、知られざる地下世界が広がっているのです。