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インドネシアの温泉その4【マリバヤ温泉 2023年11月】

バンドンの北7キロにある、マリバヤ温泉リゾートに行ってきました。
ここはとにかく写真の見た目が素晴らしかったので、たぶんいい温泉に違いないと思っていました。
実際に行ってみての感想は、日本をイメージさせる景観がそこかしこにあり、ここのオーナーあるいは支配人はいい趣味しているなと感心しました。たぶん日本からかなりインスピレーションを受けていると思います。

■ マリバヤ温泉リゾートの概要

Maribaya Hot Spring and Resort.
Mariはスンダ語でCure, healthy:治る、健康になるの意味、Bayaはスンダ語でHappy:幸福の意味。日本語に訳せば健幸(けんこう)温泉となります。
ただし、Mariは確認できましたが、Bayaはネットで調べる限り幸福という意味では出てこず、ネット情報(インドネシア語)に誤りがある可能性あり。

最近になって適当につけたのではなく、なんと1835年までさかのぼれる温泉です。インドネシアの温泉で歴史がきちんと残っているのは大変珍しいんです。今から予告しておきますが、来週はインドネシアの温泉の歴史について書きます。


マリバヤ温泉の歴史
この温泉の由来をネットで調べたところ、インドネシア語情報でこんな話が出てきました。話がうまく現在までつながらないのですが、こんなものでしょう。
1.昔マリバヤという名前の美しい娘がいた。その父であるラクサ・ディナタは娘をめぐって争う若者たちから娘をまもるため、硫黄成分を含む温泉を生み出した。美しい娘の名前を永遠に残すため、この温泉の名前はマリバヤになった。
2.1835年に観光地として有名になったときエヤン・ラクサ・ディナタによって温泉が守られていたのを、彼の死後息子のマリバヤに引き継いだのでそのためマリバヤという名前になった。

最初の話は、この温泉がナトリウム炭酸水素塩泉(旧泉質名:重曹泉)かつ硫黄泉であることから、美人の湯または美肌の湯として知られていたのではないかと想像しています。
古い角質を溶かしてつるつるにする効果がある泉質です。
美しい娘の話は、この温泉が美人の湯ということをアピールする宣伝目的であとから作られた可能性があります。

でも、娘を若者から守るために温泉つくって効果はあったのだろうか。辻褄があわないストーリーですよね。悪霊から守るため聖水で囲み守ったとかなら分かるのですが、相手は綺麗な女の子が大好きな普通の若者たちですからね。
父と娘の話にしたいのであれば、小野川温泉のように、「病気の父親を遠路訪ねてボロボロになった小野小町が、温泉に入ると立ちどころに元の美女に戻りました。」、みたいな親子愛+美女伝説の方が美人の湯にふさわしいので、不思議です。
ただし、でっちあげではなく、本当の話だからこそ、おかしな筋書きになっている可能性もあります。

ちなみに、名前の由来や歴史について、そこら中のスタッフに聞いて回ったのですが、誰も知りませんでした。
1人はマリバヤ通りにあるからマリバヤ温泉なんだと言っていました(温泉が先にあって後から道がついたに決まってるでしょ)。
もう2人は「わからない、とにかく昔からあったのだ。ドイツとオランダの頃だ。だってオランダの洞窟が近くにあるだろ、だからこの温泉もオランダの頃からあるんだ」(オランダの植民地は1942年に日本軍に追い出されるまで350年も続いているので、一口にオランダ時代と言っても幅が広すぎる)。
あとはよくわからないから受付で聞いてくれますか?という反応です。

皆、マリバヤに特に意味なんてない、スンダ語じゃないと力強く答えていました。

この会社のコーポレートアイデンティティーやカルチャーはどこに行ったのだろうか。マネージャーさん美しい景観も大事だけど、ここも大事なところですよ、頑張りましょう。

料金
入場料:平日 35,000ルピア(350円)、休日45,000ルピア。外国人は55,000ルピアです。KITASを見せるとローカルプライスになります。
15,000ルピアのプール割引券と、20,000ルピアの飲食割引券がついてくるので、実質入場料はただということになります。
VIP Pool:90,000ルピア(ただし15,000ルピアの割引券を使えば75,000)
個室浴室:90,000ルピア(15,000ルピアの割引券をこっちで使えばこちらが75,000ルピアに)
ミニ動物園に行きたい人はもっとお金を払わないといけないようです。

■ マリバヤ温泉リゾートへの行き方

Grabバイクで30分かからずに到着します。料金は行きも帰りも28,000ルピア(280円)です。
帰りはアプリで呼び出すのが面倒だったので、そこにいたGojekのドライバーと交渉して乗せてもらいました。白タク状態です。

ナグレック温泉は左上、チアトルは画面に入らないくらいずっと上にあります。

バンドン観光の記事でオランダと日本軍の洞窟見学の話を書きましたが、マリバヤ温泉と洞窟のあるジュアンダの森公園は昔は一つの公園だったのが分離したものです。ハイキングがてらセットで回るインドネシア人もいると聞きました。

■ 温泉の様子

ゲートをこえて進むと、まず子供用のプールが現れます。横の足湯はお湯がはっていませんでした。またプールの水は冷たいです。温泉水を補充しておらず、冷えてしまったものと思われます。
平日の真昼間なので誰もいません。

次に個室風呂の建物が現れました。受付に人がおらず中を見ることができません。ここはスキップしました。

そして楽しみにしていたVIP Poolです。すばらしいですね。
写真で水色に見えるのは、浴槽を水色のペンキで塗っているためで、温泉が青いわけではありません。

浴槽の縁は石組みで、また目隠しに竹を使っているため、日本で渓流沿いの露天風呂に入っているかのような気分になります。

水色に浴槽を塗らなければ、本当に日本の温泉そのものになると思います。
お湯の温度はぬるく、38度くらいです。もうちょっと高くしてもいい気がします。
VIP Poolは4種類あるので、浴槽の容量を変化させて小さい浴槽は熱め、広い浴槽はぬるめとか、いろいろ試してみたらよいのになと思いました。

ここは和というよりはバリ風のVIP温泉プール

泉質
泉質はネットで事前に調べておいたところナトリウム炭酸水素塩泉です。重曹泉ですね。

析出物はほぼないので、カルシウム成分は少ないと思います。塩っぽさもなく、かすかに鉄分の味がするような気もしましたが、別のミネラル成分と混同している可能性があります。
お湯の濁りは、湯の華の可能性と泥の成分の可能性の両方があります。硫黄成分ありというので湯の華かもしれません。

また、ぬるぬる度は低めだったので、おそらくメタケイ酸の数値は低いはずです。どちらかというとぬるぬるというより、肌がきゅっきゅとなる感じのお湯です。
重曹成分より硫黄成分により皮膚を溶かす効果の方が強く働いている可能性があります。

泉源はどこにあるのか
敷地内にあるのだろうと思い聞いたところ、川の方に降りて行ったところで、さらに地下からポンプでくみ上げているとのことでした。
「そこ見てみたいんだけど」と言ったら、見られないところにあるとけんもほろろに断られました。
園内のパイプの配置を観察し、検討をつけてから探しに行こうとしましたが、道が発見できず断念しました。下流から上流に引っ張ってきている感じですね。

おそらく昔は川沿いに自然に沸いていたのだろうと思います。湧出量が足りなくなり、新たな温泉源を掘削したのではないでしょうか。

深さ何メートルまで掘削しているの?と聞いたら、わたしのインドネシア語がまずかったのか、掘削の概念がよく分からなかったのか、うまく通じず、VIP Poolの深さは70センチという見当違いの答えが返ってきました。

ちなみにインドネシア語で源(水源とか出どころ)のことをスンバー(sumber)
といい、湧出している(泉)のことをマタ(mata)と言います。mataは目という意味にもなります。

■ 温泉の景観

インターネット情報でみていいなと思っていた景色より、実物の方がはるかによいと感じました。
本当に那須塩原を少しこじんまりさせたような渓谷美です。インドネシアなので紅葉はありませんが、紅葉シーズンがぴったりの景色と思います。”から紅に水くくるとは”の情景そのものになりそうです。

川沿いにたつカフェのデザインがまたかっこいいんですよね。下の写真左側の建物です。ル・コルビジェっぽいモダニズムを感じます。

他にもすばらしい場所がいくつもあり、石段と東屋なんてもう日本の庭園そのものなんですよ。

わたしは温泉を楽しんだあと、ル・コルビジェ風のカフェで30分ほどまったりとすごしました。気持ちのよいひとときでした。ハエが多いのだけがちょっといらっと来ましたね。

わたしの頼んだアフォガート(バニラアイス+エスプレッソ)の香りに興奮したハエたちが目の前で喧嘩をはじめてしまい、とにかくじっとしていろと思っていました。

■ 宿泊施設のご案内

ここもグランピングです。グランピングがはやってますね。
「週末の予約はやっぱり一杯なの?」と聞いたら、苦笑いしながら「そりゃ一杯ですよ」と言っていました。
絶対に平日に来るところだなと思いました。

中を見させてもらいましたが、高級感漂う作りで相当気持ちのよい夜をすごせそうだなと伝わってきました。標高が1200メートルくらいある山の中なので、夜は15、6度に冷え込むんじゃないでしょうか。ぐっすり眠れそうです。

こういうのを見ると、インドネシアは豊かになったんだなと実感しますね。中間所得層が育っている証拠です。

こんな気持ちの良い場所は休みになればジャカルタやバンドン市内から観光客が大挙してやってきて混みまくるでしょうね。人が満ち溢れていると快適度が半減します。

すいている平日の昼間に、気軽に温泉に来られるのは本当に贅沢です。

それではまた。

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