紅白歌合戦「アイドル」に見たNHKの限界
昨夜の大みそかには恒例の紅白歌合戦が放送されました。ジャニーズ事務所のスキャンダルで同社の人気タレントが出演できず、キャスティングを含めたNHKの演出力が試される回となりました。
色々ありましたが、明らかなのは、23年最大のウリは日本の楽曲として世界を席巻した「アイドル」(YOASOBI)だったという事です。
◆演出失敗で炎上するNHK
「ボーダレス-超えてつながる大みそか-」をテーマとして掲げるNHKは、ここで当日出演していた内外のトップアイドル全員を登場させ、それぞれにダンスパフォーマンスをさせる演出で盛り上げようと試みました。
主題歌でもあるアニメ『推しの子』には、芸能界で切磋琢磨するアイドル・タレントたちの群像劇の側面もあるので、妥当なアイデアだと思われます。
しかし見てみると、舞台上でもカメラワーク上でもそうしたトップアイドルばかりがフィーチャーされ、肝心のボーカルikura氏がほとんどBGM扱いだったために、一部で炎上しつつあります。
◆実は歌以外も多い紅白「歌」合戦
私はネットの過激派のようにK-POPアイドルを出したから駄目だとか、そういうレイシズムにはくみしませんが、紅白の「アイドル」にはNHKの舞台演出の限界、至らなさにがっかりしたのは確かです。
今回の紅白では「アイドル」以外にも、人が歌っているのに同時にけん玉の連続大皿世界記録に挑戦してみたり(結局失敗)、何万枚のドミノを倒したり(こちらは成功)とか、見ようによってはアーティストそっちのけの演出が見られました。
紅白歌合戦は昔から、とくに大御所ではない歌手のときにはこうしたことをやる番組です。コラボも多いです。歌合戦といいつつ、実際は歌以外で視聴者をつなぎとめようとするパターンが多いです。
◆NHKのお役所体質的な演出ポリシー
そんな中、「アイドル」で改めて顕著になったNHKの問題は、主従をはっきりさせないお役所体質的な演出コンセプトだと思います。
具体的に言えば、彼らはYOASOBHIと、ダンスパフォーマンスをする他のアーティストを同列に演出しようとしています。それが問題だという事です。
もちろん。けん玉をする人たちもドミノを並べる人たちも、あるいは「アイドル」のコラボ相手も当代一流の才能を持つ人達で、リスペクトすることは必要です。
しかしここは「アイドル」が主役なのであり、どんなに大物アイドルが躍っていてもすべては「アイドル」とYOASOBIを盛り立てる「従」として扱うべきなのは当たり前です。
◆演出対象には主従をつけることが大事
しかしNHKは、どうしたわけか主従をつけたがらず、YOASOBIも他のアイドルも並列に持ち上げようとしています。
国民的番組として極力不公平にならないように、ということなのかもしれませんが、そのような中途半端な偽善的態度はあまり意味が無いように思えます。今回のようにいらぬ誤解を招く恐れもあります。
それよりも、限られた放送時間に出場できた、栄えあるメインアーティスト(その曲を歌っている人、グループ)を輝かせる事だけを考えて演出したほうが番組としても、ショウとしても完成度が上がるはずです。
「主」を見失わなければ、たとえYOASOBI以上の大物を「従」に徹した扱いにしたとしても、十分に「従」にも見せ場は作れるし、むしろ「従」のアーティストの好感度も上がるものです。
24年の紅白では、確固たる信念をもって、誇りをもって、国民的番組の演出を行ってほしいと思います。
▼小冊子通販開始のお知らせ
新作小冊子『超映画批評2024』
本日1月1日から通販開始いたします。
コミックマーケット103(22年12月31日開催)で先行頒布した小冊子です。
──その映画を楽しむためには、これだけ知っておくべき or こういう前提で見たほうがいい
そうした情報を提供してくれる本が見当たらないので、自分で書こうと思い立った次第です。
A5判62ページ
¥800(送料・税込み)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?