岸田首相が改造内閣に隠した「罠」にハマる安倍派の重鎮たち
この記事は、前編「映画批評家が第2次岸田改造内閣を分析したら、衝撃の結論が浮かび上がった件」に続く後編にして完結編です。
残る2つのケースの分析は少々異なる
さて、残る疑惑の人事は二つです。
3 厚生労働大臣 無派閥の後藤茂之⇒茂木派の加藤勝信(再入閣)に
4 経済産業大臣 安倍派の萩生田光一⇒安倍派の西村康稔(再入閣)に
実はこの二つは、「退場者に統一印のレッテルを張り政治生命を奪う」という、1と2のケースで行われた岸田首相の裏目的とはちょっと違います。後藤茂之氏は今のところ統一との関係は報じられておらず、それほど重要な人物とも思えません。
加藤勝信・新厚生労働大臣起用の異様さ
それより重要なのは、加藤勝信氏の入閣です。これ、岸田氏的には、本来ならばありえない人選なのです。
加藤勝信氏という人は、茂木派ながら安倍晋三元首相の官房副長官(超かわいい子分的ポスト)を務めた、いわば安倍晋三氏の最側近です。
なぜ最側近なのかというと、加藤氏は、安倍晋三氏の父親である安倍晋太郎元外相の最側近・加藤六月元衆議院議員が妻の親だからです。つまり、安倍一族と加藤勝信氏は親族同然、長年家族ぐるみのおつきあいをしている文字通りの「身内」なわけです。
さらに彼には統一との深い関係を疑わせる事実がいくつも報じられており、最初から「統一印」です。岸田氏的には、本来ならば、できれば入閣させたくないところです。もしかして、所属派閥の茂木派からごり押しでもされたのでしょうか?
しかし、前述の田崎史郎氏によれば、この人事も「派閥の推薦リストに入っておらず、岸田氏本人の強い意向による人選」だというのです。
ここまで読んだ方にはすでに、安倍派(および安倍晋三シンパ)の力をそぎたい岸田首相のホンネが皆さんにも伝わっているかと思いますが、ではなぜこのような安倍シンパの極みのような人物(というより安倍氏の身内)を、岸田氏は自分の意思で入閣させたのでしょう?(のちほど明かします)
安倍派の西村康稔・新経済産業大臣起用の異様さ
さて、新たに経済産業大臣となった西村康稔氏も、じつは安倍晋三元首相の官房副長官(超かわいい子分的ポスト)だった人物です。さらに安倍晋太郎元外相や岸信介元首相(安倍晋三の祖父)の側近だった吹田愰元自治相の娘婿でもあります。ようするに加藤勝信氏と同じく、岸・安倍一族の「身内」です。
西村氏本人は「知り得る限り、当該団体との関係はないと認識している」と語っていますが、はたして本当に「統一印」ではないのでしょうか。
彼は以前、ベトナムで女性たちを集めて4P遊びをしたことが週刊誌に報じられるなど、スキャンダルに事欠かない「女に弱い」議員です。だとすると、たとえば、美人揃いで知られる統一教会から派遣される無料秘書(運動員)などといった、バレたら即辞職モノの大型爆弾を抱えていないと、果たして言い切れるのでしょうか。
少なくともスキャンダルのスクープを狙う報道記者なら、この内閣の中で真っ先に目をつける人物です。こういう人を、岸田氏は起用したわけです(その理由は後程)。
安倍派の萩生田光一・新政調会長起用の異様さ
次は経済産業大臣から政調会長にスライドした萩生田光一氏についてです。閣僚でないとはいえ、党の重職である政調会長に彼を残した点もまた異様です。
なぜなら彼はすでに統一教会関連イベントの来賓出席などが明らかになっている「統一印」だからです。来賓出席というのは、そこでお車代だのといった裏ガネをもらっている可能性もあるので、統一との関係の中でも祝電などより重大な部類に入ります。
そして安倍晋三氏は、かつて落選中の萩生田光一氏を加計学園に客員教授として面倒を見させ、再選後は疑惑の獣医学部新設のときに事実上の窓口として重用しました。さらに、その働きにたいするご褒美のように、のちに文部大臣に任命しました。
このように、絶対に安倍晋三には逆らわない、最も忠実な部下と言われている人物です。加計学園スキャンダルのすべての秘密を握る一人でもあります。
こうした人物を、岸田首相は統一問題を抱えさせたまま重職に残したわけです。
問題だらけの3人を起用した理由は「的」にするためだ
そろそろ謎を解きましょう。上記3人は岸田首相にとってやっかいな安倍派、安倍シンパの大物です。なのにあえて彼らを起用した理由は、安倍派に配慮しているように見せて、あわよくばまとめて首を取ろうと考えているからではないでしょうか。
萩生田も西村も加藤もそろって安倍一族の身内クラスの大物であり、かつ全員脛に傷がある身です。
はっきりいって、マスコミにとっては格好の「的」です。
射撃ゲームで言えば、豪華景品付きの的を、一番落としやすい最前列に岸田首相は並べたということです。
無役だったらマスコミはやる気を出さない
もしこの3人が閣外に去っていたら、マスコミはわざわざスキャンダルを探したりなどしないでしょう。大してニュースバリューがないからです。
しかし、政調会長、経済産業大臣、厚生労働大臣となれば話は別。落としやすい的はマスコミの餌食です。
私は岸田首相がマスコミたちに「さあさあ、今回の内閣最大の目玉はこの3人ですよ、撃ち落とし放題ですよ~」と言っているような気がしてなりません。
高市早苗も「的」として並べた岸田首相
さらに言えば、重要性がワンランクおちる経済安保特命担当大臣ながら高市早苗議員を起用したのも、彼女を無役じゃなくして「的」として並べたかったからではないでしょうか。
高市早苗氏といえば、安倍晋三イズム最後の継承者。ネトウヨ人気ナンバーワンの後継者候補です。先の総裁選でも岸田文雄を脅かした最大の脅威です。
そしておなじみ田崎史郎氏によれば、なななななんと、この高市早苗氏も「派閥の推薦リストに入っておらず、岸田氏本人の意向による人選」だったというのです。
もうお判りでしょう。
こうした「安倍氏の身内たち」を岸田首相が自分の意思で入閣させたのは、マスコミの的にするためなのです。
岸田文雄は自分の手を汚さない
私が分析した岸田首相の基本戦略は、「自らの手を汚さず、ライバルを蹴落とす」というものです。彼は一見、安倍派を重用しているふりをしながら、マスコミの前に「的」として並べました。安倍派=清和会との決定的な対立を避けながら、清和会の力をそぐというのが彼の戦略の本質です。
狙い通りマスコミが「的」を撃ち落としてくれれば万々歳。そこまでいかずともスキャンダルで傷をつけてくれれば上々。なにも起こらなくとも、安倍シンパに大臣ポスト謹呈という形で「恩」を売ることができたわけで、それはそれで悪くはない。
つまり、サイコロの出目に限らず、岸田首相は得をする戦略です。岸田文雄という男の本質、ホンネ。少しは皆さんにも伝わったでしょうか?
ちなみに「的」たちに予想以上にキョーレツなスキャンダルが続出して、多少支持率が落ちても岸田政権はびくともしません。なぜならこれから3年半は、国政選挙がないゴールデンタイムですから──(おわり)。
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