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映画批評家が第2次岸田改造内閣を分析したら、衝撃の結論が浮かび上がった件

はじめに 岸田首相の本音を知るには、入閣メンバーだけ見ていては足りない

22年8月20日は重要な記者会見が二つも行われました。第2次岸田改造内閣についての発表会見と、旧統一教会による会見です。

どちらの会見もこのマガジンの分析対象としてふさわしいわけですが、より重大な第2次岸田改造内閣について、今回は分析したいと思います。

改造当日から、すでに多くの評論家や識者がそれぞれの見方を発表しています。入閣メンバーについて、その政策や背景から、岸田首相の本音を探ろうと必死です。

しかし私は改造直前の8日、キャスターを務めるチャンネル桜の番組で「今回大事なのは入閣ではなく外された者だ」とコメントしたとおり、盲点というべき「去ったもの」に注目しています。

その理由は、改造前に岸田首相が「統一教会との関係については自己責任&自己報告で。組閣後に判明した場合は罷免する」といった事を表明していたからです。

これは、見過ごせない重大なコメントです。彼はようするに今回の人事で「踏み絵」をやったのです。もっとわかりやすく言えば、「今回閣外に去ったものは統一印の政治家ですよ」と一方的にレッテルを貼ったということです。だから私は「入閣メンバーよりも、去ったのが誰かが重要」と言ったのです。

岸田首相がわざわざ改造前にあのような奇妙なコメントを残した理由は、「外した奴に統一印の焼き印を押して政治家人生を奪う」という意味なのです。ここをまず正確に見抜かなくてはいけない。

この観点から今回の組閣メンバーを見ると、すんなりと多くの謎が解け、岸田首相の本音と狙いが浮かび上がってきます。具体的に今からこの記事でお伝えします。すごい結論が待ってますよ。

岸田首相が政治生命を奪いたかったのは誰なのか?

実際に見ていきますが、大前提として大臣というポストは、自民党内の派閥の利権であり縄張り争いだということです。だから今回、茂木派が1ポスト減らしたとか、麻生派が1ポスト増やしたとかが、ニュースで話題になったりするわけです。

さらにつけ加えると、大臣ポストは一定以上の当選回数を誇る議員らに与えるご褒美であり、箔付けだということです。自民党としては大臣経験者を増やしたいので、特に若手の大臣はちょくちょく入れ替わるのが普通です。

よって、「閣外に去ったもの」に注目するといっても、そうした通常のケースはノイズとして除外しなくてはいけません。

また、全閣僚を分析すると原稿量が膨大になるので、重要性のうすい無任所大臣も除外します。つまり、ナントカ特命大臣といった無任所大臣ではなく、行政機関の長としての国務大臣(つまり配下に○○省を持つ大臣)に絞ります。

「外された者」たちのリスト

そのうえで、今回「外された」リストは以下の通りです(敬称略)。

総務大臣 岸田派の金子恭之⇒岸田派の寺田稔(初入閣)に交代
法務大臣 茂木派の古川禎久⇒岸田派の葉梨康弘(初入閣)に交代
農林水産大臣 岸田派の金子原二郎⇒茂木派の野村哲郎(初入閣)に交代
文部科学大臣 安倍派の末松信介⇒麻生派の永岡桂子(初入閣)に交代
防衛大臣 安倍派の岸信夫⇒無派閥の浜田靖一(再入閣)に交代
厚生労働大臣 無派閥の後藤茂之⇒茂木派の加藤勝信(再入閣)に交代。

さて、これをみて岸田首相のホンネ、見えてきますか?

まだわかりにくいですね。ではもう少しノイズを除外し、「あやしい人事」をあぶりだしていきましょう。

まず、同じ派閥(岸田派)の別議員に引き継いだだけの総務大臣は「とくに問題のない通常通りの交代」と考え、除外します。

また、岸田派と茂木派でポストを交代しただけの法務大臣と農水大臣も、特段ざわめきのある人事ではないと判断して除外します。

さらに農林水産大臣の金子原二郎(岸田派)は、国会議員引退による交代なのでこれも除外します。

すると、残りは3つのポストになりましたよ。

今回注目すべきはこの4ポストだ

先ほどのこった3ポストに、経済産業大臣の座から去った萩生田光一(党の重職である政調会長にスライドした)のケースを、ある理由から加えた4ポストを、私は最重要分析項目として挙げることにします。

1 文部科学大臣 安倍派の末松信介⇒麻生派の永岡桂子(初入閣)に交代
2 防衛大臣 安倍派の岸信夫⇒無派閥の浜田靖一(再入閣)に交代
3 厚生労働大臣 無派閥の後藤茂之⇒茂木派の加藤勝信(再入閣)に交代。
4 経済産業大臣 安倍派の萩生田光一⇒安倍派の西村康稔(再入閣)に交代

この中で、最初に書いた通り「去った者に注目」=岸田総理が「統一印の焼き印を押して政治家人生を奪」おうとしたのはズバリ1と2のケースです。順番に解説します。

1 安倍派、末松信介議員のケース 「文科省利権召し上げ」

末松議員の場合はすでに旧統一教会との関係が報じられており、だれの目からも明らかな「統一印」によるレッドカード退場です。

しかも重要なのは、安倍晋三氏の重要利権だった文部科学大臣(文科省利権)を、安倍派から召し上げたという点です。

安倍晋三氏は、森友学園、加計学園、そして統一教会と、文部科学省の分野で数々のスキャンダル(数百億円単位の巨額の不正、政治汚職疑惑)を起こしてきました。まさに文科省は安倍氏最大の牙城であったわけですが、岸田首相はこれをどさくさにまぎれて彼らから召し上げてしまったのです。

しかも、後任を岸田派でなくあえて麻生派の永岡桂子氏にやらせたことで、自分が召し上げた印象を薄め、安倍派と盟友関係にある麻生派との分断まで狙っています。

麻生派のポストを1つ増やしたことで、安倍派からの不満をそちらに集中させる効果もあります。岸田氏は、表面上は安倍派と対立したくはないので、こうした戦術をとったと思われます。

ということで、この人事が今回の組閣で注目すべき、一つ目のポイントです。


2 安倍派、岸信夫議員のケース 「岸・安倍一族に統一印の焼き印を押す」

防衛大臣の人事は事前に予想できた人がおらず、サプライズと言われています。そして政局に詳しい評論家の田崎史郎氏が当日のミヤネ屋などで解説していたとおり、新大臣の浜田靖一氏は各派閥の推薦リストに入っておらず、岸田氏本人が選んだ人選だということです。

これはようするに、この人事には極めて強く、岸田氏本人の意向が働いているという意味です。これは非常に大事です。なぜならば、岸田氏は「自分の意思で、安倍派の持つ重要ポストを召し上げた」ということになるからです。ほ~ら、皆さんにも徐々に岸田首相のホンネが見えてきたでしょう?

しかも新大臣にはやはり岸田派ではなく、あえて無派閥かつ麻生内閣時代の防衛大臣である浜田靖一氏を再入閣させました。安倍派からすれば、「俺たちのポストをまた麻生に近い奴に奪われた」という形になるわけです。ここでも岸田氏は安倍派と麻生派に分断の種をまいています。

まとめると、1も2も、「安倍派からのポスト召し上げ」「麻生派と安倍派を分断させる」点でまったく同じ戦略に基づく人事だということがわかります。


岸信夫は「統一印」によるレッドカード退場なのか?

次なる疑問は岸信夫議員の退場理由ですが、彼はかねてから健康問題で交代するだろうといわれてきました。

ところが岸田総理は、あえて内閣改造日程を当初の9月頭から8月10日に、なんと1か月も不自然に早めたことで、岸信夫の退場理由を「統一印」寄りに印象付けることに成功しています(のちほど詳しく説明します)。

ところで岸信夫氏といえば、安倍晋三元首相銃撃事件のすぐあと、なんとご本人自らが、岸・安倍一族と統一教会との関係を認めて日本中に激震が走りました。

問題はその直後で、ここで岸田氏は間髪入れずに内閣改造日程を早めたのです。しかもタテマエ上の理由は「内閣からの統一疑惑議員の一掃」と位置付けて、です。

そんな流れで防衛大臣交代となれば、世間的には「安倍晋三の弟・岸信夫は体調がどうとか言っていたが、それよりも統一問題で辞めたようなものだな」との印象が強く残ります。

繰り返しますが、岸田首相は、統一スキャンダルの渦中で岸信夫を退場させたことで、「体調不良」以上に「統一印」を印象付けることに成功したのです。

と同時に、山上徹也容疑者の安倍氏殺害動機に改めて信ぴょう性と説得力を与える形にもなりました。つまり「やっぱり岸・安倍一族は統一印だったのだ」ということです。これは事実なのでしょうがないのですが、改めてより強く国民(有権者)に印象付けた、これが重要なポイントです。

岸田首相がどうしても岸信夫に統一印をつけたかった理由

安倍昭恵氏が奇妙な追突事故を契機に、安倍晋三氏の後継者選びの補選から完全撤退した今、安倍家の地盤を継ぐのは岸信夫の2人の息子のいずれかと言われています。

この場合、その人物は将来的に清和会(安倍派)を背負って立つ可能性が高いわけですが、今回岸田首相が「岸・安倍一族は統一印」と国民に印象付けたことで、その息子にも最初から「統一印」というハンディ、足枷をつけることに成功しています。

長年、清和会とくに安倍晋三に首根っこを押さえつけられてきた岸田首相にとって、その将来の領袖の力をそぐことができる今回の人事は、まさに一挙両得の良手と映ったことでしょう。

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さて、後半「岸田首相が改造内閣に隠した「罠」にハマる安倍派の重鎮たち」ではいよいよ3と4のケースを解説したうえで、岸田首相のおそるべきホンネと狙いを明らかにします。

(8月26日追記)
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