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『映画プリキュアオールスターズF(エフ)』の裏事情



▼プログラムピクチャーは好調、だが実態は……

現代では定期的に公開されるドラえもんやコナンなどが、かつてのプログラムピクチャーの役割を果たしていますが、今年はそれらが特に好調です。

「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~」(8月4日公開)は2015年の同作品の記録を更新し、24億円超の最高興収を記録。

女児向けとしても「映画プリキュアオールスターズF(エフ)」(9月15日公開)が、歴代32作品で最高記録を更新しています。

これをもって日本映画の好調を伝える記事なども散見しますが、落ち着いて考えてみるとこうしたニュースの論調は非常に不自然なのです。

▼少子化なのに子供映画が好調?

たとえばプリキュアは今年で20周年を迎えます。

しかし、総務省の統計を見るとこの20年間で日本の子供の数は、およそ2割も減っています。

この間、日本の女児でプリキュアファンになる率がいくらか増えたと仮定しても、2割ものマーケットの減少を埋められるとは思えず、それを覆すデータも私は見たことがありません。

そして私が「映画プリキュアオールスターズF(エフ)」を見てみたところ、内容は歴代プリキュアが活躍する文字通りのオールスターものでした。真っ先に思った疑問は、「これは、20周年作品で高い興収を課せられた作り手の苦肉の策だろうなあ」といったものでした。

どういうことか、解説します。

▼誰のための「オールスター」なのか

今回、女児を持つ母親にこの映画の反応をリスニングしたところ、熱烈なファンであるお子さんは雑誌等で多少「昔のプリキュア」を知っていたものの、20年分のキャラのほとんどは初見であったとのこと。

一方で、プリキュアマニアのお母さんは、「マニアほど気づく小ネタが多く大傑作」と、(おそらくお子さん以上に)絶賛していました。

私は20年前、初代プリキュアの批評をしたことはありますが、全シリーズをウォッチしていたわけではないので、それがどこまで的を射た意見なのは判断できません。

しかし、もし彼女の言が正しいとするならば、本作品は彼女のような(あるいは男性の)「大人のオトモダチ」需要を相当意識した作品という事になります。

▼プレゼントは週替わり

じっさい、この作品は「週替わりの非売品アイテム」を劇場で入場特典として配ることで(前売りではなく、入場しないともらえないのがミソ)、彼らをリピーターとして相当数確保しており、少なくないオトナ客が興行を底支えしていると推測されています。

このアイテムは、週末(=興収集計において最重要な土日)で在庫切れになる程度の量しか配布されないため、そのままフリマアプリで売ると入場料程度の値が付きます。

その場合の映画自体の実質的な上映価値を考えると、批評家としては頭を抱えてしまいます。(ちなみにこのアイテム戦略がオトナ客のリピーター目当てだと批判を浴びないためか、子供しかもらえない別の非売品アイテムも劇場では準備されています)

▼まとめ

日本の子供の数は、1980年代後半から右肩下がりで減っており、こうした時代に子供向けプログラムピクチャーを維持しようとすれば、プリキュアのように「大人のオトモダチ」需要を計算に入れないわけにはいきません。

それが、週替わりのオマケ戦略であったり、子供たちよりも大人にウケる「オールスター」企画の氾濫につながっているのが実情です。

コドモ映画を支えているのが、実際は(親を含む)オトナ客の入場料金だったりする現実を、こうしたニュースを読む際には忘れないようにすると、より深く考察できると思います。

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