見出し画像

ゼレンスキー演説は、日本政府にとってこそ有意義なものだった

ゼレンスキー大統領の、日本への具体的な要求とは

前回、ゼレンスキー大統領の演説は日本人向けオーダーメイドであり、日本人の情緒に訴える仕掛けが多数あることを実例を挙げて示しました。

その上で演説の本題に入るわけですが、ここで大統領は日本に対して「経済制裁の発動を引き続き求める」と発言しました。

これはプロパガンダとしてのアピールではなく。まさに具体的な要求と言えます。

これを大統領が国会で発言することは当然、事前に予測がついていたので、たとえ具体的な打ち合わせがなかったとしても日本政府としては「想定内」のことでしょう。

逆に言えば、これを日本国民の前で言ってもらうことが、両国にとって主目的の一つだったといっても過言ではないかもしれません。演説後に山東昭子参議院議長が芝居がかったスピーチで、大統領"閣下"を賛美していた異様な様子からも、それはうかがえます。

経済制裁の重大性を教えられていない日本人

じつは国連加盟国全体では、ロシアを非難する声こそ大多数ですが、制裁にまで踏み切った国は極めて少数なのです。当たり前です。経済制裁とは、実質的にはほぼ宣戦布告か戦争行為のようなもので、当然、相手からのキツい報復を覚悟して行うべきものだからです。

しかし日本では、まるで「他国がやってるからおつきあいでしている」ような、そんなお気楽な印象を持つ人が多数ではないでしょうか。伝えるべきことが伝わっていない、これぞ日本クオリティです。

そもそも日本には、アメリカをはじめとするNATO諸国の方針に逆らう外交力などありませんので、彼らがロシアを制裁するとなればついていくしかないとの見方もあります。

いずれにせよ、いま日本がこのような危険な綱渡りをしていることを、政府は国民に知られたくはないでしょうから、ゼレンスキー大統領を国会議員の前で演説もさせるし、カッカカッカと持ち上げて絶賛もするし、ロシアを悪の権化とする単純な勧善懲悪の構図を国民に浸透させたりもするわけです。

冷静な議論が不可能になっている現状

今の日本の言論空間ではウクライナ、ゼレンスキー大統領を批判しようものなら、容赦なくさらしあげられてしまう。ある種、異様な状態になっています。

スローガンのように「力による現状変更は認めない」を、まるで錦の御旗のように唱え続ける人も増えています。しかし私に言わせれば、こんな理屈はアメリカ側の一方的な言い分にすぎません。

だいたいこれを言ってる当のアメリカが、力によって現状変更をし続けてきたから、今回の戦争が起きたわけでしょう。

彼らは冷戦後、CIAによって積極的に「革命」を輸出し、旧ソ連の勢力圏をオセロゲームのように次々と自陣営に鞍替えさせてきました。

これは「力による現状変更」そのものではないのでしょうか? 戦車や飛行機で空爆しなければ「力」ではないのでしょうか。

軍事力以上の「力」があることに気づかなくてはいけない

アメリカには世界最強の軍事力と発信力、政治力があります。だからこそ「革命」(アメリカの傀儡政権を打ち立て、その国を実質的にコントロールすること)を輸出商品にできるわけです。

それはロシアが今回行使した「力」=軍事力よりはるかに強大なものです。アメリカこそがそうした「力」でもって、現状を変更しまくってきた国ではないですか。

そうした国が「力による現状変更は認めない」などと言ってロシアを非難している、させている。それ以上のパワーを使ってきた自分のことは棚に上げて、です。

私はロシアを擁護する気などさらさらありませんが(私がロシアの政治面を大嫌いなのは、私がキャスターを務めるチャンネル桜の視聴者ならよくご存じかと思います)、かといってアメリカにロシアを非難する資格があるのかとも思います。

※続きは次回に。

----------------------------

※こうしたエンタメ時事分析を読みたい方は、私のメルマガ

超映画批評【最速メルマガ版】
https://www.mag2.com/m/0001689910

をチェックしてみてください。ほぼ週刊&無料です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?