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3.23 ゼレンスキー大統領の日本国会オンライン演説を映画評論家が分析したら、そのプロパガンダ性が浮き彫りになった

カメラの構図・位置などからわかる、日本人に与えようとした印象とは?

22年3月23日18時、日本の憲政史上初めて国会(議員会館)で紛争中の外国首脳が(オンライン)演説を行いました。ロシアと戦争中のウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領です。

かねてから言われている通り、彼の演説は相手によって表現や内容を変更する「オーダーメイド演説」であり、日本人向けバージョンもいくつかの特徴が見られるものでした。

カメラは正面、目線と同じ高さ。これを撮影用語でアイレベルといいますが、相手に威圧感を与えず、親しみと安心感を与える効果があるとされるポジションです。ひげも髪も短く整えられており、戦争中ながら清潔感を感じさせます。

画面の構図は、顔面を中心からずらしている定番のもので、頭上に余白が多いのは各社のテロップの挿入を意図したものでしょう。どれももちろん、意図的に計算されたものです。

原発、サリン、核爆弾…演説のネタは日本人向けアレンジ

正直なところ、同時通訳がつたなくて、現時点では正確に表現などをくみ取れたとは思えないのですが、おおまかな内容は伝わりました。

日本向けオーダーメイド演説として見ると、まず最初に原発の攻撃被害について語った点が印象的です。ゼレンスキー大統領は国内15基の原子炉すべてが危険な状態であり、いま攻撃を受けているものもあると語りました。

いうまでもなく日本人がこれを聞けば、いやおうなしに福島第一原発事故の凄惨かつ絶望的な映像が脳裏に浮かぶ。そのための話題選択です。これを演説の序盤に持ってきたのは、もちろん偶然でも思い付きでもないでしょう。

次に語ったのは、化学兵器による攻撃についてです。わざわざサリンの名前を出したのは、当然ながら世界で唯一の化学兵器テロ(オウム真理教によるサリン散布テロ)の被害者である日本人が、実感を持って被害を想像できるからでしょう。

ここで大統領は「サリン攻撃を準備しているという報告も受けている」という、奇妙な言い回しをしています。

よく聞けば、攻撃を受けたと断言しているわけではなく、かなりあいまいな伝聞ネタです。そこまでして「サリン」というキラーワードを演説に取り入れたかったのだろうと想像できます。このあたりは、事実の報告やアピール以上に、日本人の心を動かすことを目的としたくだりだな、との印象を受けました。

次に語ったのが、核攻撃についての話題です。彼は「(ウクライナが)核攻撃を受けたらどうなってしまうかも、いま世界で話題になっている」という言い方をしました。これも非常にあいまいな言い回しです。もし具体的な情報や被害があればそういうはずなので、ここもサリンのくだり同様の狙いがあったと思われます。世界唯一の核爆弾の被害国、日本人向けの話題選択です。

こうした前半の下りはほぼ、日本人の情緒にうったえる、悪い言い方をすればマスコミが「見出しにしやすい」ネタの羅列です。このnoteを読んでいる人向けに言えば、「戦時プロパガンダ」です。「侵略」との言葉を何度も繰り返していたのも特徴的でした。

そのうえで演説の本題に入るわけですが、次回はいよいよその分析です。

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