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[ビジネス小説]未来へのプレゼン 第25話 嫌な問い

前回のお話

内藤が部長になってから大きく変えたのは質問の仕方だった。

これまでは自分に利がある質問しかしていなかった。

「それはどういう意味ですか?」

「このエビデンスはありますか?」

「このデータの根拠はなんでしょうか?」

そうやって自分の疑問に思うことを解消していくことによって自分の不安を払拭することばかりだった。

そうして得た情報を元に上司に対して説明をするという機械的循環をただ繰り返していたように思う。


吉田の提案を聞いて内藤は質問した。


「吉田。脳がちぎれるくらい考えたか?


答えのない質問

言い換えれば、

答えは聞かれた相手の中にしかない質問

である。


聞かれた方は躊躇する。

『しっかり考えたつもりだけれど、上司はこれで納得するだろうか?』

『さらに考えなければならない点が網羅されているだろうか?』

『自分には想定できない視点があるのではないだろうか?』

仮に、『考えました。』といっても「こういった観点から考えが足りない。」という指摘もあるだろうし、

『考えていない。』と言えば「では、考えろ。」と言われるだろう。

何が正しくて

何が正しくないのかが

不明確な質問。

しかし、この一見、意地の悪い質問が、実は大きく成長を促すきっかけになることも理解していた。


「考えさせる質問」


内藤が目指す質問は答えを伝えることでなく

答えを促すことでもなく

本人に気づかせる質問

を繰り出すことだった。


もちろん、このスタイルの弊害は、答えを今まで求めてきた依存型社員の場合に顕著に現れる。

答えを貰えばそれをトレースすることに慣れていると、いざ自分で考える際にまともに考えることができなくなってしまう。


答えを求める傾向が強い若い世代に対して絶えず考えて自分の答えを導き出す力を求める。


それを実現させるための質問力による育成。


『答えは、相手の中にしかない。』


部長として、大切なのは人材育成だということを念頭に置いて仕事を進めている方針を大切に思うようになってきた。

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「吉田。今回の提案は、脳がちぎれるほど考えたか?」


内藤の質問に対して淀みなく慎吾は答えた。


「考えました。

任せてください。

内藤さん。

勝ちます。」


慎吾のコメントに内藤は確信した。

「わかった。」

「ありがとうございます!」

内藤は続けた。

「方向性はわかった。さらに続けてブラッシュアップしてくれ。ただし、ターゲットをもう一度洗い直せ。

宮部社長が本当に求めること。

宮部社長の人生観。

出生含めてもう一度見直して資料に反映させてくれ。」

「わかりました!!」


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慎吾のスライドのタイトルはほぼ固まっていた。

「OSAKA MIRAI」



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