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[ビジネス小説]未来へのプレゼン(最終話) 第43話 第10回 未来プレゼン

前回のお話

新規事業の立ち上げから3年が過ぎた。

ビズルート社の売上構成比の30%が、この新規事業へと成長した。

当初の予定であった1年での黒字転換は2年かかったが誤差の範囲でそれ以上の成果が構築できた。


事業を牽引していたのは内藤だった。


そこに吉田の姿はない。


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「今頃元気でやってますかね?吉田は。」

内藤は銀座のBARで丸山と並んでボソリとつぶやいた。


「彼なら。。。吉田くんなら、大丈夫ですよ。」


ターキーのロックを飲む相手が吉田から丸山に変わったことで内藤は嬉しくもあり、寂しくも感じた。




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「吉田くん。事業はやっと黒字転換したばかりです。ここからが本当のビジネスの面白くなるところですよ。なぜ・・・」


目の前に出された辞職願いを目にしながら丸山は不思議でしょうがなかった。


「すみません。

どうしても、やりたいことができてしまいまして。」


「やりたいこと?もしかして、どこか他社からヘッドハントじゃないですよね?」


丸山は自分の過去歩んできた道程を思い返しながら、半分冗談で、半分は本気で聞いた。


「私は、丸山さんほど優秀ではありませんから、そんなお話はいただけませんし、そんな器ではありません。

そうではなく、ビズルート社をこれまで以上に大きくしていくアクションよりも、もっと本当に自分がやりたいことに時間を割きたくなったんです。」


「・・・本当にやりたいこと。」


「はい。」


「で、本当にやりたいことってなんなんですか?」


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「おーーー。釣れた。釣れた!」

「ほやろ〜。この用水路にはぎょうさんおるんやざ〜。」

慎吾は日に焼けた顔から白い歯をのぞかせて喜んだ。

割り箸に凧糸を垂らした先のスルメを掴んでいるなんとも言えない薄灰色の小さな日本ザリガニは今にもハサミをひろげそうだ。

近所の子供達に混じって汗をかくことをじっくりと味わいながら用水路を歩いていく。


福井県に戻って教員採用試験を受け、未だ非常勤で仕事をしていた。

慎吾は両親のそばで子供たちと過ごす日々を楽しむことに人生の時間を割くことを選択した。


ビズルートでの経験は子供達への教育に多くのことが役立てられることを実感していた。


その中でも、丸山をはじめ、同僚たちと切磋琢磨したプレゼンスキルは、わかりやすい授業ということで評価も高かった。


「いたいた〜!探したぞ、慎吾〜!」


用水路から顔を出すと元同僚の佐々木優子がいた。

「優子さん?なぜここにいるんですか?」


「・・・。


あのさ〜。


そんなこと私に言わせないでくれる。」


優子は気恥ずかしそうに遠くの山に目をやる。


「しっかし。。。のどかなとこね〜。。。」


慎吾が去ったビズルート社でこれまでと同じように働いていても

何も変わらない日常のはずなのに

何か物足りない日常になったことを痛感した3年。

優子にとってこれまで誰かに依存することや

誰かを頼ることなどなかった。

もちろん、これからだってそのつもりだ。

それでも埋めきれないものを埋めたいと思えた。

自分の気持ちに素直になったのはいつぶりだろうか。


優子も自分の未来を歩み出した。



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それぞれの未来は

自分の意思で決めることができる。


自分の未来は


誰かに伝えることで


相手に伝わる。


その先に


自走する未来が待っている。


未来は誰でもつかむことができる。


つかみたい未来を伝えることで自分のものにすることができる。


未来へのプレゼンは


誰にでも使える魔法のツール。


あなたは


人類は


これから先

どんな未来をつかむのだろう。


丸山と行う予定だった第10回目の課題である未来プレゼン。


それは、自分たちが実践することで本当のプレゼンになった。


今この瞬間が

自分の未来を創るプレゼンの真っ最中。


今日も未来プレゼンを描き続けている。

サポート大歓迎です。!!明日、明後日と 未来へ紡ぎます。