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[ビジネス小説]未来へのプレゼン 第28話 先手

前回のお話

「ご無沙汰しています。宮部社長。」

「久しぶりですね。今日は楽しみにしていますよ。」

「はい。よろしくお願いいたします!」

宮部社長が私のことを覚えていてくれたのは非常にありがたい。


前回からの延長戦。

リータンマッチ。



「それでは、フロンティアワールド様お願いします。」


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あっという間の30分のプレゼンタイム。

おそらく持ち時間の8割は宮部社長を見ていただろう。


こちらが発する一言一言への表情の変化

スライドをめくった瞬間の眼球の動き

メモを走らせた部分2回繰り返して強調する。

前のめりになった瞬間間を取る

質問を投げかける勇気

答えに対するカウンター

周囲の目線ざわつき話し出しのタイミング


プレゼンテーションは相手の行動から読み取れる部分がたくさんある

それを読み取ることでプレゼンは生き物になる。

その場その場で臨機応変に伝える言葉を変化させる。

何百回も練習してセリフを覚えたって意味がない。

相手がいるのだから、相手に合わせて自分の伝えたいことを一番伝わるような手法をその場で繰り出す

その引き出しの数が多ければ多いほど

その引き出しにたくさんの武器が入っていれば入っているほど

伝え方を変えて届けることができる


数多のプレゼンを見て

様々な書籍を読んで

あらゆるプレゼンや演説の動画を見て

数え切れないほどの場数を踏んで

その準備を行なってきた上で

この場所に立っている。


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「吉田さん。」

「非常にワクワクするプレゼンでした。ありがとうございました。」

その一言を聞けただけでも、自分の成長を感じ取ることができた。

精一杯行った自負がある。

これまで培ってきたテクニックを盛り込んだ。

それだけでなく、まさに自分がやりたい事が今回のプレゼンであったわけだから間違いなくワクワクして話ができたように感じる。

そして、それは宮部社長にも届いたように思えた。

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発展的に未来へ繋がる2の矢、3の矢の中長期展望と2025年から先の50年をとらえた内容だった。


「50年後の2075年。

宮部社長。

あなたはお亡くなりになられています。

私はその時76歳になります。

平均寿命を全う出来ればまだ生きていると思います。

今回、私たちは、宮部社長が亡くなられてからの日本を。

世界をデザインしました。」


この最初のフレーズが、宮部社長に刺さったのかもしれない。


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プレゼン後の多くの質問。

それに対して様々なデータを元に

時にはシンプルなメッセージで

時にはインパクトのあるビジュアルで返す。


「最後に。

あなたはこの企画。

本当に見にきた人、全員が感動すると思いますか?」


慎吾は迷うことなく答えた。


「はい。全員を感動させます。

誰一人かけることなく。もらすことなく。

全員を感動させます。」


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以前の自分であれば強気に言い切ることなどできなかった。

ここまで言い切れるようになったのはなぜだろうか?

プレゼンのスキルを身につけたからだろうか?

場数を踏んだからだろうか?

おそらくそれらは本当の答えではないような気がしていた。


一つ言えることは、

紛う事なく

自分の言葉で

自分の念いを伝えているという事だった。


しかも、ゴールがコンペに勝つということから

このアクションを通じて触れ合う未来の人たちへ届けたいという

純粋な気持ち以外の何者でもなかったからのように思えた。


『これが、本当に伝えるということだったんだ。』


セットアップされた舞台を降りて初めて実感できた、プレゼン後の胸に溢れる妙な心の密かにざわめく時間だった。


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部屋を出ると入れ替わりでビズルート社が呼ばれた。

「吉田さん。お疲れ様でした。

私たちも楽しんで挑ませてもらいますよ!」


丸山の言葉に慎吾は笑顔で返す。


「はい。楽しんできてください!」


10時30分

先行:フロンティアワールド

プレゼンテーション終了。

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