ガールズキャンプ
今年の奥多摩の夏は、6,7月の猛暑に比べたら、思っていたほど暑い日が少なく、湿気が多かったものの、割合快適に過ごせたんじゃないかと思う。
8月のはじめに小中学生の男の子と共に10日間の合宿をした。
この合宿では、自習室で自制しつつ学習することができない子が集まることが多いが、30分とじっとできない子でも、古民家と自然環境のある空間なら自分のやりたいことに彼らなりの速度とやり方で学び続けることができる。
男子だけに限定しているのは、以前男女共存でやってみたとき、女の子のやわらかい雰囲気が、男子の雑念となり、なかなか集中する時間を保つことが難しいと感じたことがあったからだった。
それ以来、男の子だけで合宿をしていたわけだが、昨年から女の子の合宿をなぜやらないのか?という問い合わせがあったことにより、ガールズキャンプを開催しはじめたのだった。
とはいっても、女の子ばかりの合宿。10日間共に過ごすには「アクシデント」が多い気がして、男性教師である僕の限界は2泊3日ということになった。
参加したのは、毎月のように古民家に参加している小学生の女の子。
定期的に会う子だけだからこそ、こちらが感じている仕込みたいことをこの機会におこなおうという狙いもあった。
例によって、早朝から各自の学習をはじめるわけだが、あまり自分から学習に取り組もうとするタイプではないので、男子合宿のとき以上に、こちらが先手をとって「ノせる」時間を設定する。
活性化目的の授業
早朝、サイコロ学習をして、まずはイメージ力が高まった状態までもっていく。ここでは今回初参加の女子高生や女性教諭が興味を持って参加していた。「これは今後も続けていかなきゃだめだわ!」と実際数ⅡBに取り組む最中の女子高生は、自分に欠けている能力を自覚したようだった。
その後、小学生たちは、こちらが用意した算数系の問題を解く。算数系といっても、読解力が問われる千代田区立九段中の入試問題やパズル問題である。パズルが得意な小5が一番よくわかっていた。
それから少し休憩したら、音読。高学年に入り、大きい声で話さなくなっているので、古民家で大声で音読して、脳を活性化させる。
それから希望者と予習シリーズ理科や社会の会読する。理科であろうと、社会であろうと、音読すれば理解できる。会読を元にA4一枚に話したことをマインドマップのようにまとめさせ、そのメモをもとにプレゼンできるようにしてもらう。
さらに、その後、課題に疲れた子と共に、ファンタジー小説の草案制作へと移る。作文となると気合が必要なのかもしれないが、ファンタジーならスラスラ書き始める。じっくり考え続けていると、時間を浪費するので、十分アイデアを出し切って、しばらく手が動かないと思ったら、課題をこなすように伝える。ただし、何かのタイミングでファンタジーのアイデアが思いつく瞬間を逃さず、すぐに原稿に移ってもかまわない。いいと思ったアイデアを逃さないようにすることも自覚させた。
こうして授業で活性化させて、それぞれ課題へ取り組む。あくまで授業の目的は活性化。自分の課題に取り組みやすくしてあげることだ。
自学自習中、男子合宿とちがい、途中お話したり、笑い出す子もいるが、あまりほとんど注意することはない。彼女たちは、男子とちがい、それで時間が台無しになることはない。むしろそれで発散した後、自分の課題へ取り組んでいるし、あるいは少しばかり騒々しくても自分のやりたいことに集中しているとき、意識が飛んでいくようなこともない。この辺りに男子合宿とガールズキャンプの違いがある。
3日間の献立
また、男子合宿との違いは料理においても表れる。
3日間の献立は、
1日目
昼食 エビフライ定食
おやつ ベビーカステラ、ハワイアンパンケーキ
間食のおにぎりの具は、たらこ。しいたけ昆布。
夕食 サンマ定食
2日目
早朝 果物、スモークサーモンサラダ、パンケーキ、ヨーグルト、バニラアイス
昼食 イカのトマトソースパスタ
夕食 焚火サムギョプサル
おやつ ベイクドチーズケーキ
3日目
早朝 同じ
昼食 からあげ定食
おやつ スイカ
お土産 うめひじきいなり寿司
たくさん作っても食べきれないので、どちらかというと少人数だからできる料理を準備した。
雨のせいなのか、参加者はスタッフも含めて低血圧気味で、だるそうにしていたので、朝からアイスを出して、いっきに糖分で血糖値を上げさせた。
あとは果物や野菜、魚介類でミネラル系とったり、サンマなど旬ものをとるようにもした。
個人的に今回のヒット商品は焚火サムギョプサルだった。縦長の豚肉を串にさして、香りの強い針葉樹でじっくり焼いたら、トントロを超えるうまさであった。
生徒の観察①
小6のYは、音読が非常にうまい。サイコロ暗算も早くてイメージ力もある。漢字もよく覚えられる。低学年の頃しか彼女を音読指導したことがなかったが、今は弟と一緒に音読練習しているからなのか、他の子よりも飛びぬけて声がクリアに響いている。耳がいいからだと思う。
予習シリーズの理科の学習も音読するだけで理解できてしまうし、他の子に歴史を解説していると、盗み聴きして、わからない言葉を電子辞書で調べて勝手に深堀している。
成長期と共に言語力も発達しているが、本人はそれを自覚しておらず、幼い頃からの癖(気づいたことをすぐ口にする癖)で、正論とはいえ、それが相手を傷つけるかもしれないことを平気でいうところがある。そこで、本人に言語力が発達してきていることを自覚させ、賞賛した上で、ことばを人を傷つける道具に使うのではなく、誰かが助かるために使いなさい!と諫めた。この子のことではないが、中学受験のストレスからか、小学6年の女の子たちは、言葉で人を傷つける癖が学校で身につくことが多い。一過性のことかもしれないが、毎年のようにその姿をみているので、正直うんざりしている。彼女にはそれに巻き込まれないように、言葉をより良く使えるようにしてほしいと思う。
あとは、小説をもっと読んでほしい。世界児童文庫とか現代ファンタジー小説とか。きっとそれが彼女の伸びつつある言語力をさらに伸張させる。
あとは半ば冗談で、「小学校の間に英語準2級とれば?」というと、「わかったー!」と、まだよく分かってない英語学習に帰宅後取り組むことを約束した。耳の育った今こそ外国語学習のタイミングだ。
生徒の観察②
小6のSは、中学受験勉強で集中して課題に取り組むために、合宿に参加した。兄と同じく、他人を大らかに受け入れる包容力があり、周りにいつも誰かがいる。ただ、ゆったりと「マイペース」にやるところは、昔の兄と同じ。そのせいで、ひとつひとつの学習に時間がかかる。
サイコロ暗算をほかの子と一緒にやって、速く簡単に考えることを教える。理科社会算数の予習シリーズを会読、速く理解するよう急かしながら、音読する。
ゆっくり考えているのは、仕方がない面もある。
彼女は、教師に言われたら、そのとおりにやるところがある(真面目でいい子にこういう性質が多い)
もしやみくもに塾に通うものなら、どうしてそんなふうに解くのか考えずに、「先生がいったから覚える」というふうに算数に取り組みそうな気配がぷんぷんしている。
そうはしたくなかったので、塾に通わせず、「どうしてその問題をこんなふうに解くのか」プロセスをひとつひとつ考えているよう、ここ1年半注意してきた。彼女自身論理的に考える習慣がないから、なおさら時間がかかっているようである。
どうしてそんなことをするのか?それは、情報処理力より、ロジカルシンキングを先に育て数ⅲまでやろうと思えばできるように育てたいからだ。
ふつう塾なら、たくさん問題を解いて「情報処理」力を上げようとするかもしれないが、手前の能力は伸びてもその後高校まで伸ばし切る数学力にはとうていたどり着かないのは目に見えているので、彼女を授業中、急かすことはあるが、本当は別にマイペースにやればいいとも思っている。
実際、算数や理科の適正検査系の「どうしてそうなるか説明しなさい」という問題を容易く論理明瞭な文が書けるようになっているし、ロジカルシンキングは確実に成長している。
あとは、音読を習慣化する必要がある。そういう「コミュニティ」に属しているからだと思うが、言葉を発するとき、ダラダラと、あいまいにして話すのが恰好いいと思っている節がある。その方が、周りと同調できるからだろう。
だが、それを学習で発揮すると、文章をあいまいに読むことにつながっているように思えてならない。黙読して、わかっていることにして、先を読み進めた結果、その前に書いてあることがなんだったか忘れる。
教師と一緒に音読した単元はかなり覚えているのに、自力で読んだところはあまり頭に入ってない。これは明瞭な音読を繰り返す必要があるだろう。
家で継続的に音読しながら学習してもらいたいが、これは兄と一緒におこなうのが得策か。
生徒の観察③
小5のYちゃんは、兄同様、書籍も好きだし、直感的に算数パズルができる。物語心情把握も抜群。ファンタジー小説も書き始めた。自分で学校から支給されたタブレットで課題に取り組むし、時間を与えれば、自分で伸びていくタイプだろう。
ただ、サイコロ暗算した結果、イメージ力が不足していることが分かった。というかイメージ力が弱くなっていると言った方がいいのかもしれない。
タブレットの漢字練習の様子をみていると、漢字の書き順アシスト機能がついており、テスト形式の漢字でさえも、次に書くべきところに灰色の●があらわれて、子供が迷わないようになっている。
これは子どもが書きやすいように仕組まれたものだが、無視しようと思っても、書いている最中に勝手に表れるから気になって仕方がない。必然、何度もやっていくうちに、いつの間にかアシスト機能に依存することになる。
本人もこの機能を気にしてないと言いつつも、漢字を書けるようになっているかと言われれば、そうではない。
タブレット学習によって、イメージする時間を奪われているように思える。
そこで、この分析を彼女に伝え、書き始める前に一度頭に浮かべてから書くようにすることを義務付けた。
また自宅に帰ったらサイコロ暗算を、これまたサイコロマスターの兄に教えてもらうように伝えた。
兄がどうしてサイコロマスターになれたか?それは将棋で10手先まで読む習慣があるからである。イメージする力が勝手に培われている。その結果、数学もたいていできるようになっている。
イメージする力がつけば、漢字学習にも応用できる。タブレット学習は学校でも使用されているし、合理的だと思うが、それでは鍛えられない能力があることを自覚してほしいところだ。
まとめ
こうして夏のイベントがすべて終わった。今年の夏はかなり疲れた。出張からすぐ合宿準備して、2度の合宿。その合間に、音読道場のイベント。
9月からまたイベントが続く。ということで、この投稿が終わったらしばらく休もうと思う。
そして忘れてはならないのは、今回、半分スタッフというかたちで参加した高校生のAちゃんや元小学校教諭F先生。彼女たちが小学生の「お姉さん」役として大活躍してくれた。彼女たちがいてくれなかったら、子どもたちを充分観察することができなかったし、料理のバリエーションも生まれなかっただろう。
参加したみんなに深く感謝したいと思う。
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