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業種は絞るべきか?

これまで、Web制作、EC/BtoBマーケティング支援、そしてM&Aと、多業種に対する業種を経営してきて、常に頭から離れなかったことがあります。それは、

対象業種は絞るべきか?

ということ。弁護士や病院、不動産などを専門とするWeb制作会社とか、マーケティング支援会社とか結構ありますよね。M&Aでは、業種を絞った会社やサービスは「Web特化」くらいしか私は知りませんが、まだ絞れるくらいまで市場が大きくなっていないということでしょうか。あるいは、M&Aの専門性は共通していて、絞る必要がないということなのかな。

私自身、上記のような業種(それ以外もあります)を経営してきて、各分野の専門性は理解していますが、今のM&A事業で業種は絞っていません。現在進行形で進めている案件も、医療系、建設、飲食、食料品卸など、多岐に渡ります。得意なのは、やはりWeb・EC系で、恐らくM&A業界の中では相当に目利きができる方だと思いますが、そこに絞ってやってるわけではありません。

しかし、M&Aにおいても、対象業種を絞るのは、意外にメリットがあると思うんですよね。それを少し洗い出してみます。

M&Aで業種を絞るメリット

  1. 将来予測をしやすい
    M&Aでは、成約した後のPMIが非常に重要ですが、通常アドバイザーはそこまで関与しません。しかし、株価を算定する際に「DCF法(ディスカウントキャッシュフロー=将来のキャッシュフローを予測して割引率をかけた計算方法)」を用いることがあるように、ある程度の将来予測は必要です。その際、知見のある分野ではより現実的な計算を立てやすいと言えます。知らない分野の「将来価値」を数式に当てはめて計算するなど、画に描いた餅になりかねません。

  2. 「勘所」がわかる
    対象の企業を理解する上で重要なポイントがわかりやすいことも、業種を絞って専門性を高めるメリットです。客観的な強みや弱みを把握しやすく、例えば売り案件ではよりポイントを押さえた概要書を作ることができます。

  3. 同業界のネットワークが広くなる
    これはどう考えても異業種ではなく、隣接地域の同業者が買うべき会社だなと思う案件などでは、アプローチする先が多くなり、成約の可能性が高まります。その際、前述のようにポイントを付いた概要書に基づいて説明できるので、より交渉はスムーズに進みます。

  4. 紹介、相談を受けやすい
    3と同じような話ですが、同業界の知人が多くなると、何か困りごとなどの相談や、M&Aを検討している会社の紹介を受けやすくなるという、営業的なメリットが期待できます。

  5. 信頼されやすい
    その分野に精通して、その分野の人脈も多い人や会社であれば、他の業者と比べて信頼されやすいのも事実だと思います。

こうしてみると、業種を絞る方がメリットありそうですが、「絞らないメリット」も、もちろんあります。

M&Aで業種を絞らないメリット

  1. 受注機会の拡大
    これは言うまでもありません。幅広い業種に門戸を開いた方が、受注機会が増えるのは間違いないと思います(自社の規模にもよる)。

  2. 様々な業種に触れる学習機会
    Webや広告の仕事でもそうでしたが、多くの業種の方と触れる機会があるのは、めちゃくちゃ大きな刺激になるんですよ。特に、成長しているところのビジネスモデルや社長の考え方、業界独特の慣習など、勉強になることばかりです。長く続ける仕事の中で、その種の刺激は意外と侮れません。

いずれもM&Aに限った話ではないですが、両者ともにメリットがあるのは確かです。

ただ、ひとつ言えるのは、業種を絞るということは、例えばM&Aだと「総合格闘技」と言われるほど幅広い知識を要求されるM&A業務に加えて、その特定業種の専門性も要求されることで、よりハードルは高くなるでしょう。

同時に、それは参入障壁にもなり、競合が減るということでもあります。何らかの業界に精通しているという人は、「〇〇専門仲介/アドバイザー」と名乗って、集中して掘り下げるのはとても意義があると思います。

ただし、その業界の需要がどれくらいあるのかも、当然ながら考慮しないといけません。需要が少ない分野に特化しても、いたずらに事業機会を狭めるだけです。

こうして整理すると、まあ当然と言えば当然のことばかりですが、競合が多い、あるいはこれから増えてくると予想される業種においては、対象業種を絞って徹底的にその業界の専門性を高めるのは、とても強力な戦略だと思います



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