奇偉

「おはよう、いってらっしゃい!」
「お、今日は荷物多いな。がんばれよー」

小学校のすぐそばの通学路で、毎日はたを振りながら見守っているおじいさんがいる。

雨降りの日にはカッパを着て、朝から強い日差しの日には帽子をかぶり、首には保冷剤を巻いている。

小学生たちは、みんなおじいさんとは顔見知りだ。
「いってきまーす」と元気よく挨拶をする子もいれば、出かけるまえに何か嫌なことがあったのか、おじいさんを見て、わざとぷいっと顔を背けてしまう子もいる。
挨拶を返してくれない子どもの背中に「楽しくやれよー」と声をかける。

「毎朝大変じゃないですか?」
バス停で一緒になったことがあり、訊ねてみたら。
すると、おじいさんは「いやー、大変だけど、楽しいよ」となんでもなさそうな顔で答えてくれた。

おじいさんの姿が視界に入ると、なんだか少しほっとする。
おはよう。
今朝も、いってきます。

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