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梅の木、レモンの木。

先日、梅の木の苗と、レモンの木の鉢植えを購入した。

梅の木の苗は、庭の土をしっかり掘って埋めた。レモンの木は、いまのところ鉢植えのままで育てるつもりで、もっと成長したら地植えにするか、大きな鉢に植え替えるか考えようということになった。

梅の木を地植えにしている最中に「なんか、植樹祭っぽいね」とわたしが言ったら、夫は「日当たりが微妙な場所だから、枯れたりして」と笑っていた。

夫が梅の木を植えたいと言い出したのは、単純明快な理由だった。「梅の実が家でできたらいいなと思って。梅酒とか、漬けられるし」というのだけれど、わたしはそんなにお酒を飲まなくなったし、夫自身もたまにしかお酒を飲まない。誰のために梅酒をつけるのか、あんまりよくわからないのだけれど、小さな庭もあることだし、梅の木でも植えてみようかという流れになった。

レモンの木は、はじめは購入予定に無かった。ホームセンターでばったりと出会った。レモンの花はすっごくいい香りがしていた。そして、その香りにつられて飛んできた、ハチや名前を知らない虫も花の周りつぎつぎとやってきていた。購入する予定じゃなかったけれど、あまりの香りのよさに、わたしたちも「レモンの木も、買おうよ」という気持ちになったのだ。まるでハチになったかのようで、花の香りから、離れたくなくなってしまった。


夫としては、わたしとの結婚十周年をむかえるにあたり、何か記念になることをしたいと言っていた。色々考えていたようだけれど、おそらく「木を植える」ということに落ち着いたのだろう。

十年なんて、あっという間だった。けれどずっと仲良く、何も問題なく過ごせていた、という訳でもない。結婚したばかりのころは、わたしはうつ病に治療を辞めたばかりで、あまり活発には動けなかった。裏のお家にお住まいだったおばあちゃんと、その飼い猫くらいしか、世の中との接点はなかった。

結婚して数年後に、いま住んでいる家に引っ越した。けれど、引っ越した一週間後に東日本大震災が起きて、避難所がどこかとかもわからないし、まだご近所に知り合いもおらず、どうしたらいいんだろうかと途方に暮れていた。もっとも、神奈川県は停電くらいですんで、目をそむけたくなるような大きな被害はなく、ほっとしたのだけれど。

その年の五月には、夫がうつ病になってしまった。ただ、割と早い段階で病院に無理やり連れて行けたし、とりあえず短期間の治療で病状は落ち着いたので良かったなと思う。

それからも、夫は何回も転職するし、詳しくは書けないけれど親族間のトラブルに巻き込まれるし、いろいろめんどくさいこともあった。ただ、わたしたち二人は、ある時点で「自分たちが、それぞれに『やりたい』と思うことだけやろう」と決めた。

お互いを尊重して、夫婦だからってふたりで何かをしなくちゃいけない、という決まりもない。自分のことはなるべく自分でする。相談されたら、話は聞くし、一緒になやむ。ただ、夫が悩んでいることは、わたしが一緒になやんでも仕方ないことも多いため、「ふーん」といって聞いているだけのことも多い。

一緒に暮らすネコのことを、最優先に考えるという決まりが、我が家ではもっとも重きを置いているルールでもある。

こんな感じで十年暮らしてきたけれど、この先もこんな感じで適度な距離感をもって暮らしていきたい。そうして、この先、梅の木と、レモンの木に果実がなれば、収穫祭でもやってやろうかと思っている。


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