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お買い物の、たのしみ。

「もう、今日は、いっぱい買うぞ! って、決めてきたんです」

わたしがそう言うと、そのブースにいらした乗組員さんは「そういう日、絶対必要ですよね!」と笑顔で答えてくださった。

そうして「お買い物、ゆっくり楽しんでいってくださいね!」といって、先行発売されていた「ほぼ日5年手帳」を両手で手渡してくださった。


もうすでに、たくさんの方が書いていらっしゃるので、いまさら感もあるのだけれど、「生活のたのしみ展」にいってきました。

生活のたのしみ展」とはほぼ日刊イトイ新聞が主宰された、11月15日から19日まで六本木ヒルズで開催されていたイベントのこと。

普段は広場のようになっている(らしい)六本木ヒルズアリーナに「商店街」を作り上げ、さまざまなお店が立ち並ぶものだった。

わたしは、開催初日の15日(水)と18日(土)の二回もその「街」に遊びにいってしまった。初日はあまりにも人が多く、普段海辺の田舎町に引きこもっているわたしはあまりにも圧倒されてしまった。なんというか、心のそこから純粋に「お買い物」を楽しむことができなかった。

楽しめなかった理由は、はっきりしている。

それは、緊張してしまったからだ。普段、インターネットで見ていて、憧れの存在である糸井重里さんをはじめ、ほぼ日のフェローも務められている物理学者の早野龍五さん、ニット作家の三國万里子さん、イラストレーターの大橋歩さんなどなど。お名前をあげればキリがないのだけれど。「一度は、お会いしてみたいなあ」と思い描いているような人たちが、目の前であちらこちらと動き回り、しかも接客までされているのだ。
勇気を出して、「一緒にお写真撮らせてください!」とか、お声がけすれば良かったのかな、と今になっては思うのだけれど、とにかく胸がいっぱいになってしまった。お買い物を楽しむ余裕なんてなくなってしまったのだった。

おおげさな、と思われるかもしれないけれど、もしも、あなたの憧れている人が立て続けに目の前に現れたとしたら……? 胸がいっぱいにならないだろうか? ちょっともう、お買い物を楽しみましょう、という余裕はどこか遠くへ飛んでいってしまわないだろうか。わたしは飛んでいってしまっていた。きょろきょろと、辺りを見渡すだけで心の底から満足してしまい、物欲がかき消されてしまった。夫から頼まれていた斉吉さんの「金のさんま」を買い求め、温かい飲みものを飲んだら、すっかり満足してしまった。

しかし。自宅に帰ってきてから、ふつふつと物欲が沸き上がってきてしまった。あれも欲しかった、これも欲しかったと、お風呂に入りながらぐるぐると頭の中で「なんであのお店をもっとゆっくり見てみなかったのだろう?」と後悔しはじめてもいた。お買い物を全然楽しめてないじゃないか、と悲しくなってしまった。

そうして、わたしはリベンジすることにしたのだった。まだイベントが開催されている18日に都内に出かける用事もあったので、その帰りに立ち寄り、心の底からお買い物を楽しむのだ! と決めたのだった。

ただし、物欲のままにお買い物をすると、破産してしまうおそれがある。事前に、一度ぼんやりとした状態とはいえ、いろいろなお店を見て回っていたことは良かったのかもしれない。ある程度「じっっっくりみるぞ!」と決めたお店を絞りこんで、再チャレンジした。

結果的には大満足だった。今回もチラリとだけれど糸井さんやフードスタイリストの飯島奈美さん、料理家のなかしましほさんなど、やはり「ああ、あの人は!」と思う方がたくさんいいらっしゃって、ドキドキとときめいた。けれど、その気持ちも一度体験済みだったので、とにかく落ち着きを取り戻しながら、じっくりとお買い物ができた。

お買い物のたのしみって、本来こういうものなんだろうなと、あらためて感じた。

お店の人ととのちょとしたやりとりや、その品物がどうして作られたかを教えてもらったり。品定めをするために、じっくりと品物を見比べて、すでに自分が持っているものと、うまく組み合わせたりできるだろうかと吟味したり。スーパーマーケットやインターネットで無造作に購入してしまうことも、もちろんある。便利だし、それが悪いことだというつもりもない。けれど、自分のくらしの中に一つひとつ手に取りながら必要かどうかを考え「ああ、いい買い物したな」と笑顔になる。家に帰ってからも、「今日、すごく素敵なものに出会えたなあ」と、袋から取り出したときにも、また笑顔になれるものなのだ。普段の生活の中では、慌ただしくて忘れてしまいがちだ。けれど、日々のくらしの中でも、「物」に対する自分の振る舞いを見直したいなとも思えた。

さてさて、我が家にお招きした、一生の宝物になりうるものをうっとりとみつめながら、「ほぼ日の5年手帳」に未来に向けた目標をすこし書いてみようかな。








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