横断歩道

信号待ちをした道路の先。

お母さんと、お母さんにぴったりとくっついて離れない子供の姿がみえた。

太ももに顔をうずめ、ここから先へは行きたくないと、小さな手でぎゅっとお母さんの洋服にしがみついている。

お母さんは、困りきった表情をしながらも、小さな頭を優しく撫でる。

真新しい制服が小さな身体を包んでいる。
けれど、それらはまだごわごわとした肌ざわり。
なかなか、お友達には、なれないみたい。

お母さんはしゃがみこみ、小さな瞳をしっかりと見つめながら、繰り返し、うなずくような仕草をしてみせる。

何度目かで、ふたつの頭が同じリズムで動き始めた。

もう大丈夫。

ふたりのそばを蝶々が通り過ぎる。小さな指が、蝶々の楽しげな足取りを指差していた。

信号が青に変わる。

手をつないで歩き出した親子と、私は横断歩道を渡り始める。
蝶々が飛ぶ、空の下で私たちはすれ違った。

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