こんな夢で会いたくなかった

「久しぶりに会えたのに。こんな夢なら見たくなかった」

今朝、目を覚ましてすぐに、短歌のようなリズムで思ってしまった。

夢のなかに、亡くなった父が出てきた。これまでに、何度か登場したこともあるが、三度か四度、片手で数える程度しかない。

亡くなって四十九日を迎えるあたりの夢では「お裁きの場で、ポイントを使えるらしいのだけれど使い方が分からへん。ひろちゃん知ってる?」と困った様子だった。船場センタービルで仕立てた、お気に入りの一張羅を着ていた。

これまで夢のなかに出てきた父は、死後の世界のしくみに戸惑っていることが多かった。夢のなかだけれど、父ははっきりと亡くなっている設定だった。

しかし、今日見た夢は、どちらかといえば見たくないものだった。

父はアルコール依存気味だった。晩年にはアルコールを摂取するとじんましんがでて我慢できなくなったので飲まなく(飲めなく)なったのだけれど。

ただ、記憶にある父はいつもお酒を飲んでいて、お酒に飲まれていた。朝起きてすぐに瓶ビールの小瓶のふたを開けた。仕事に行く日も、休みの日も関係なく。午後からの仕事の日なんか、もう何本もビールを飲んだ状態で仕事に出かけていた。あれで仕事ができるのだろうか? と子どもながらに疑問だった。

お酒に飲まれている父は、ぐずぐずと不平不満ばかり言っていた。職場に対する不満、家族に対する不満、目につくものに対する不満……。母はその不満をじっと聞いて耐えていた。わたしはうんざりして、別の部屋に逃げていた。父が寝るか、仕事に行くまでじっと耐えて過ごすことが多かった。

そのぐずぐずとして不満ばかりを言っている父が、今日夢に現れた。すごく嫌だった。わたし以外の家族も、ずいぶんとうんざりしている様子だった。母も姉も顔をしかめて、この時間をどうやり過ごそうかといった具合だった。わたしは「さっさとどっかいけばいいのに」と、夢のなかで本気で願った。

もう父はさっさとどっかへ行ってしまっているのに。わたしが目を覚ましさえすれば。

父のいちばん嫌なところをぎゅっと煮詰めたような夢だった。目が覚めたとき「ようやく目が覚めた」と、ほっとしたと同時に悲しい気持ちにもなった。ほとんど夢に現れないのに、なんでこんな「二度と体験したくない」ような夢として登場するのか。

寝ている間に見る夢くらい、もう少し楽しいものを選びたい。


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