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この夏の思い出は、セミ取りぐらいだろうか

遅く来た夏のくせに、去っていくのが早いなんて、帳尻が合わないんじゃないだろうか。

もっとも、最高気温は嫌になるくらい高くて、外出をするのに命の危険を感じるほどだった。「日数少ない分、気温、上げておきましたんで~」みたいな埋め合わせはしなくていいのに。

ただ、わたしは今年の夏は、ほとんどイベントらしいものにも出かけず、お祭りにも出かける浴衣姿の人を電車の中からながめ、近所の花火大会は家の中から音だけ聞いた。

夫がすごくすてきな風鈴を購入していたので、その音を聞く、くらいしか夏らしいことはしなかった。かき氷も、すいかも、そうめんも食べていない。

夏っぽいことは何かしたかなあ? とぼんやり考えてみると、「セミ取りをした」くらいしか思いつかなかった。

セミが、いつの間にか部屋の中に入っていた。

うんともすんとも、ミーンとも鳴いてなくて、はじめはまったく気が付かなかった。

ただ、おうちパトロール隊の愛猫が、どうにもそわそわしている。カーテンレールに上って、のぞきこむような姿勢をとるから、ずり落ちてしまいそうになっていた。何かが気になっているようだった。

ただ、猫がそこまで気にしていて、あまり気配がない……となると、思い当たるのはお招きしていない黒い侵入者だった。

……何がいるのか、確認しなければ。

でも、黒いアイツだった場合、退治するにも猫がそばにいるから殺虫剤を振りまくわけにもいかない。けれど、猫が仕留めて、咥えたりしたら……それもいやだ。

猫が執拗に追い詰めていて、「バタバタバタッ」という羽の音がひびく。

ただ、その羽音を聞いたとき「アイツだったら、こういう抵抗はしなさそうだな」と思いついた。派手な羽音は、しない気がする……。

とにかく猫のそばに近寄ってみると、そこには小さいセミがいた。

セミなら、もうちょっとアピールしてくれれば、もう少し早く助けに来られたのに! 

セミの羽は半透明で透けていてキレイだった。間近にじっくり観察してしまった。色合いも茶色っぽいものではなくグレーのような色味で、おそらくヒグラシだろう。カナカナカナ……と朝夕にすこし寂し気に鳴く、セミの中ではおとなしめな印象。

とりあえずセミと猫の距離をそれなりに保ち、セミをガード。どうにかセミを手で捕獲し、猫がきょろきょろしてるうちに窓の外に放した。元気よく飛び立ってくれた。セミは地上に出てもけっこう長生きするのだから、まだ元気にしているといいけれど。セミの恩返しは、お断りしておく。

今回、セミは手で捕まえたけれど、部屋の中にセミやらカナブンが入り込んできたとき。おすすめなのは「虫取り網」だ。

わたしも夫から「虫取り網を買いたい」と言われたときは「え? 昆虫採集なんてやめてよー」と思ったけれど、室内に入ってきた虫を捕まえるのにすごく役立つからというのである。

はじめは半信半疑だったけれど、たしかに夏に窓を閉めるタイミングなどでカナブンとかは部屋に侵入してくることがある。

部屋の壁の、高い場所にとまって、どうにも対処できないとき、そっと虫取り網で捕獲して、外に放せば万事解決である。

ただし、床を移動する黒いアイツには、おすすめではない。アイツは動きが早いし、隙間に隠れるから、虫取り網で捕獲するのは無理だと考えたほうが良い。

虫取り網を室内で振り回すなんて、と思われるかもしれない。けれど、虫が嫌いな人でも距離を保って捕獲できる。網目が細かければ細かいほど、ちいなさ蛾なんかも捕獲しやすい。

ただ、ひとつ難点がある。持ち手が長いと、狭い場所では振り回しにくい。わたしも慣れていないころは、不用意に振り回して壁紙をガリっと削ってしまったこともある。

害のない虫で、部屋に入ってきたけど、外に逃がしてあげたい。そう思うことは夏のあいだに一度か二度は訪れるだろう。そんなとき、一家に一本、虫取り網があれば、もう何も心配することはない。



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