炎節

「あちっ、あちっ」
容赦ない日差しに晒されたコンクリートのうえを、つま先でぴょんぴょん飛び跳ねながらすすんでいく。

プールサイドで騒いでいると怒られちゃうけど、ゆっくり歩いてなんていられない。

水に濡れたタイルの上にようやくたどり着き、ひりひりと焼けたつま先をプールの水にぽちゃんとひたす。

プールサイドに腰を掛けて、そろりそろりと水中に身体を沈めていく。
「ぬるいー。温泉みたいー」
もうすこし冷たいかと思っていたのに。思ったよりぬるくて拍子抜けした。

黒く日焼けした肩の皮がぺりっとむけている。
それは夏のあいだ、ヒマさえあれば市民プールに通っていた勲章みたいなもので、わたしにとっては誇らしい。

おでこにスタンバイしていた水中メガネを、ぴたりと目の上にセットして。
大きく息を吸い込んだのち、ざぶりと勢いよく壁を蹴って、ぬるい水の中へ漕ぎだした。

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