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いくつになっても、チャレンジすればいい。

「年齢を気にして、何にもやらへんっていうのは、もったいないで。今が一番若いんやから」

わたしの親族から、言われたことだ。

先日の春分の日、父の四十九日法要を行なった。読経が終わり、みなで食事をしていた時のこと。

母の姉にあたる、Nおばちゃんが「このごろな、毎日プールに通ってんねん。それまではぜーんぜん泳がれへんかってんけど、今ではもうバタフライもできるようになってんで!」と、得意げに話していた。Nおばちゃんは、亡くなった父と同い年で、今年74歳になる。

Nおばちゃんがプールに通い始めたのは、近所に市営の温水プールができたからだという。ゴミ処理施設から発生する熱を利用して、温水プールが建てられたらしい。お風呂も付いているということで、「そこのお風呂利用したら、家のお風呂洗わんでもいいし。市営やから安いし、年金暮らしでもちょうどいいわと思ってな」ということだった。

せっかくならばと、「初心者教室」のようなものに参加して、ビート板を使ってのバタ足から、水泳を始めたという。それまでは、学校で水泳の授業もなかったらしく、全く泳げなかったそうだ。

しかし、毎日毎日通っているうちに、どんどん泳げるようになっていた。クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、そしてバタフライまで。市営プールではバタフライを泳ぐ人は少ないらしく、Nおばちゃんが水着に着替えていると「今日は空いてるから、バタフライできるで」と教えてもらえるほどになったという。バタフライは水しぶきも飛ぶし、プール内を歩いている人が多い日には泳がないようにしているのだという。

Nおばちゃんの「最近」は、もう十年くらいのことだから、おそらく還暦を過ぎた頃からプールに通い始めたのだろう。

しかし、Nおばちゃんの正面に座っていた、父のお姉さんであるSおばさんも「わたしも60歳から泳ぎ始めましたわ。バタフライは泳がれへんけど、クロールやったら5kmは泳げる」と言いだした。

確かに、Nおばさんが水泳に通い始めたらしい、という話を聞いたことがあった。Nおばさんは60歳の時に背骨を骨折してしまった。そのリハビリのために、プールで歩くようにしたという。しかし、歩いているだけでは、胸から上は水から出ているし、せっかくなら泳いでみようか、と考えたのだという。そうして、Nおばさんもビート板を使ったバタ足から習い始めた。バタ足、平泳ぎ、クロールまで泳げれば、Nおばさんは満足したという。そこからは、泳ぎ続けることが楽しくなってしまって、70代の頃はずっとスイミングスクールに通うのが楽しかったという。

Nおばさんは、今82歳でもう泳いでいないらしい。背中がすっかりと丸まってしまっているけれど、ハキハキと喋り、頭の回転も早く、こちらが返答に困るような質問もズバズバしてくる。

二人とも「60歳くらいなら、まだ何を始めてもモノになるわ。プロを目指すのは難しいかもしれんけど、でも、やってみやんと分からんで。歳とったら、みんな先に死んでいくし」などと、あっけらかんと言い放っていた。

なんともパワフルなおば達の話を聞きながら、「とりあえず、プールに通ってバタフライ習得か、クロール五キロを目指そうかな」と言ったら「そうそう! 水泳は、いいでー。習いー」ときゃっきゃっと声を合わせながら、二人のおばから応援された。

水泳に限らず、なんでもやってみようと思うことは、どんどん挑戦してみよう。にぎやかな おば二人に負けてなんていられない。


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