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猫と暮らす覚悟はあるかい

36回ローンで購入された猫の記事を読んで、なんともいたたまれない気持ちになった。

猫はカワイイ。一緒に暮らしたい。それはわかる。とてもよくわかる。SNSで見かける猫たちは、かわいい仕草や笑わせてくれる動きばかり。見ているだけで心がとろけるほどに癒される。「猫との暮らし、プライスレス!」みたいな気持ちになるのは、すっごくよくわかる。

でも、猫は生物である。お人形ではなく、ご飯も食べるし、排せつ物もしっかりする。毛玉も吐くし、病気にもなる。

かわいいから飼おう、だけではどう考えてもやっていけない。世話をしなくてはいけない生物と暮らすには、やっぱり覚悟が必要だ。

わが家では猫と暮らして、もう9年になる。この間、いろいろなことがあった。決め事も多いし、あきらめたこともたくさんある。もちろん猫自身の性格があるので、「ウチのネコはこんなことないなあ」とおもう方もいるだろう。けれど、猫との暮らしにはどういったことがあるか? いくつか書き出してみようと思う。

1.人間の睡眠時間は削られるものと思うべし

今一番の(人間サイドの)悩みである。猫は基本的には寝ていることが多い。それでも「活発になる時間」がある。野生の猫(ヤマネコ類)は、夜行性のものも多い。

猫は起きると「ねえ! おなかすいたんだけど!」と騒ぎ立てる。おしっこかウンチをしたらしく、「トイレしたよ!」と報告してくれる。

毎日、眠っているわたしの枕元に来て「ニャーニャーニャー」と際限なく騒ぎ立てる。あきらめることは一切ない。人間が起きて、自分の要望を満たしてくれるまで訴え続ける。

無視をして、布団をがばっとかぶっていても、どこかの隙間から布団の中に入り込んできて、足やら腕やらに噛みついてくる。人間がしぶしぶと起き上がるまでその攻撃は続く。

ときどき、何をしてほしいの変わらないこともある。起き上がって、ご飯をあげたり、トイレを片付けても、納得してくれないこともある。そういったときは、一時間ごとに起こされて、夜中に4回も5回も目を覚ますこともある。

正直なところ、寝不足でふらふらになるため、人間の具合が悪くなることもある。しかし、一緒に暮らしている猫が何かを求めている以上、人間はそれに対応しなくちゃいけない。

2.猫は繊細すぎて病気になりやすいと心して

「猫は散歩もないし、2・3日くらいなら、ご飯とお水を用意しておけば旅行も行けるよ(だから簡単に飼えるよ)」みたいなセリフを聞いたことないだろうか?

まったくそんなことはない。「ウサギは寂しいと死んでしまう」というセリフのドラマもあったけれど、これは猫にも置きかえられる。

うちの猫は、ひんぱんに人間に触れられるのを嫌がる。しかし、距離を保った状態で、人間が同じ家の中にいないと不安になるらしい。ちょっとコンビニにでも外出しようものなら、窓辺にじっと張り付いて、帰宅するのを待っている。

猫はちょっとしたストレスで病気になる。これは人間だって同じだ。植物だって昆虫だって、生きている以上何らかのストレスによって体に影響がある。

猫は自由気ままで、人間と距離を置きながら一緒に暮らしてくれる……なんてことはない。甘えん坊の猫はべったりと人間のそばにくっついているし、ドライな子もいる。性格は様々だ。

しかし、おそらくどの猫にも当てはまるのは「ちょっとした変化に敏感」ということだろう。

例えば、仕事が忙しくて、帰宅時間が遅い日が続いたとする。すると、猫は「あれ? なんか構ってもらえていない」と寂しい気持ちになるらしく、すこしずつ調子が悪くなる。

インターフォンの音も苦手だし、大きなトラックが家の前を通るのも苦手。大きな音がとにかく苦手だ。

掃除機のモーター音も大嫌いだ。ルンバの上に乗っている猫の動画を見るたび、うらやましく感じることすらある。

猫の調子が悪いとき、わたしは掃除機をかけられない。お掃除シートでフローリングを掃除し、届かないような部屋のスミは這いつくばって腕を伸ばして溜まっている猫の毛をぬぐい取る。

ちょっと暑くなった、ちょっと寒くなった、トラックの音がうるさい、人間の外出時間が長い、いつもくつろいでいる部屋に荷物が増えた、いつも食べてるご飯が古くなった……書き出してみるとまだまだある。

ちょっとしたことが気に入らない。そのちょっとしたことの積み重ねで、猫はストレスを抱え調子を崩す。

猫と暮らすようになって、わたしと夫は「一緒に旅行しない」と決めた。旅行したいならそれぞれの友人を誘うなどして別々に計画を立てる。猫だけでお留守番してもらことは、できるだけ避けている。

3.やっぱりお金も必要だと肝に銘じて

「猫は、犬に比べて登録もしないし、狂犬病ワクチンもないし、お金かからないですよ~。散歩もないからラクですよ」などと、ペットショップの方が説明している場面に出くわすことがあった。

そもそも、犬と比べてはいけない。犬と猫、一緒に暮らすならどちらが楽か? といった基準で決めるのは問題があるだろう。

生きていくうえでは、やっぱりご飯も食べるし、病気にだってなる。猫は食事の好みがきびしい。なんなら「気に入らないものは一切口にしません」くらいの厳しさがある。

昨日まで喜んで食べてくれていたカリカリフードを、次の日から食べなくなった、ということもある。

「猫が気に入るかな?」と思って購入した柔らかいクッションは、まったくお気に召さないらしく、一度も座ってくれない。

ただ、はっきり言ってこの程度なら「もー、うちの猫はこだわり屋さんだなあ」くらい。むしろカワイイ。

ただ、大変なのは病気になったとき。年を取ってくればもちろん病気になりやすい。けれど、まだ小さいころでも病気になることだってある。誤飲することだってある。お花や観葉植物も、気軽には飾れない。

動物たちは、人間と違って体調がすぐれないのを隠していることがある。ちょっとお腹が痛いとか、なんとなくダルイとか、そういったことは訴えてくれない。

あんまりご飯食べないなー、とか、ちょっと残すなーとか。いつもとちょっと違うけど、なんだろう? というあたりで、人間は察知しなくてはいけない。

明確に「調子悪そう……!」とまでいってしまうと、命にかかわることもある。動物たちは本当に、あっという間に死んでしまう。

できる限り健康で、長生きしてほしいと思うならば、やっぱり定期的に健康診断を受けたり、ワクチンを摂取したりすることも必要になる。(通院がストレスで、病気が治らない……ということもあり得るので、その辺りの判断も非常に難しい)

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ここまで猫に尽くす必要ある? と思われるかもしれない。

たしかに、わが家ではヒエラルキーのトップに猫が君臨している。(人間がヒエラルキーのトップだなんてありえない)そのため、人間は猫が暮らしやすいように暮らしの環境を整えてあげようと必死だ。

でも、必死になるには理由がある。それは、どうしたって猫が先に死んでしまうからだ。

猫の寿命は短い。かなりの御長寿だとしても20年くらいだ。妖怪・猫又になって長生きしてもいいんだよ? と猫に話しかけているものの、そういうわけにもいかない。猫はどうしたって、私より早く死んでしまうだろう。

あと何年一緒にいてくれるか分からない。うちの猫は今9歳だから、あと10年一緒にいられるかもしれないし、一年くらいで虹の橋を渡ってしまうかもしれない。

朝は元気そうにしていたのに、夜に突然動かなくなってしまうことだってある。

こうして一緒に暮らしている以上、猫が「うむ。この家は心地よい」と思っていてほしい。

たとえ夜たたき起こされようとも、洗濯したばかりのカーペットの上で毛玉を吐かれようとも、お気に入りのセーターが猫のベッドと化してしまっても。

一緒にいられるうちは、病めるときも、健やかなるときも猫が快適に暮らしていけるように努めなくちゃいけない。猫と暮らすためには、その覚悟が必要なのだ。


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