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ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』【#まどか観劇記録2020 34/60】

伝説の宝塚男役トップスター明日海りおさんの宝塚退団後、最初の舞台作品が今作ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』です。

少し前置きなのですが、

明日海りおさんの宝塚トップスター時代に同じエドガー役で主演された宝塚版『ポーの一族』も伝説的な作品でした。私は、その宝塚版『ポーの一族』に衝撃を受けた一人なので、今回のミュージカル・ゴシック『ポーの一族』と比べてしまう部分が少しあると思いますので、このnoteをお読みいただく方はご留意いただければと思います。

ただ、これだけは断言しますが、比べると言ってもこういうところが違ったな、というだけでどちらが優れていると上下をつけることはありません。どちらの作品も史上最高の作品であることは絶対です。どちらも本当に本当に素晴らしい作品なので、劇場でもDVDでもどちらも見ていただきたい、その一心です。
(このnoteでは宝塚版『ポーの一族』を宝塚版、ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』をゴシック版と便宜上表現させていただきます。)

ご留意いただいたところで本題に移らせていただきます。

圧巻の明日海りお

ああ、明日海さん明日海さん明日海さん。

もう何も言えることはないのではないでしょうか。
圧巻の明日海りお、でした。

正直に言うと、登場した瞬間だけは、宝塚時代との違いを探してしまいました。お化粧は薄めだなとか、歌声が少し高くなったかなとか。

しかし、すぐにそこに存在している(本当に存在していたのか疑ってしまう神々しさでしたが)明日海エドガーしか目に入らなくなりました。宝塚時代より薄くなったお化粧は、明日海さんの目の演技をより引き立たせ、わずかな表情の変化まで繊細に作りこまれたお芝居をつぶさに見ることができます。お化粧に頼らない明日海さんの真の強さといったような。

誰よりもはかなく、誰よりも光を放つ存在は、3年前とまったく変わることのない見た目と深みを増したオーラは、明日海りおさんご自身が永遠に年を取らないバンパネラなのではと思ってしまうほどです。

盤石の布陣

1回目の観劇の感想としては、ゴシック版はかなり宝塚版と重なるところも多いなという印象を受けました。それもそのはず、キャスト、スタッフ布陣を見て納得です。

作・演出の小池修一郎さんをはじめ、宝塚版でも大活躍のスタッフ陣が名を連ね、協力欄に宝塚歌劇団の名前もあります。宝塚版のベースに新しいスタッフ、キャストでリアルを加えた(しかも錚々たるメンバーが参加)という印象です。盤石の布陣で明日海さんの新しい門出を祝うといったような。

キャストに関しては、元宝塚の方々も多く、よくここまで揃えたなというのが正直な感想です。男性キャストもですが、みなさまおきれいで年齢不詳すぎるので、実は全員バンパネラなのではという。笑

最初のオープニングを見た時に、今作は宝塚版に比べて出演人数が多いのかなと思っていたのですが、こうしてこのnoteを書くにあたって改めてHPを確認したら観ていた時に感じた印象に対してキャスト人数が少なくて、おひとりおひとりの魅せ方、舞台構成の巧みさなのだなと改めて感心したところです。

千葉雄大さんと涼風真世さん

そんな素晴らしいゴシック版『ポーの一族』の最強の布陣なので、感想を書きたい方がたくさんいらっしゃるのですが文字数がとんでもないことになりそうなので、今回はどうしても書きたいお二人に絞って書かせていただこうと思います。

まず、アラン・トワイライト役の千葉雄大さん

千葉さんの少年感がすごいのです。

ピーターパンなど他の作品でも、少年役を男性が演じることは少なく女性が演じるという方が多い気がしていて、それはきっと声変わりとか体つきとかそういういろんな要素があるなかで女性がやるのであろうと思うわけですが...

千葉雄大さんは現在31歳。お顔立ちだったり、かわいらしい面もお持ちだと思いますが、立派な大人の男性なわけです。それが、オープニング登場した瞬間から、間違いなく少年だった驚きときたら。

劇中のアランが何歳か正確に知りませんが、私には中学生くらいに見えました。セリフがなくてもそのたたずまいだけで少年の雰囲気を作り出す。なんてすごい役者さんなのか。


そしてもうお一人、涼風真世さん。

明日海さんと同じく元宝塚トップスターであられ、その後のご活躍も素晴らしいのですが、この作品では老ハンナというバンパネラの役とブラヴァツキーという心霊研究というバンパネラに敵対(?)する役のひとり二役をされていたのですが、こう書いていている今もあれが同じ方だったとはなかなか信じられません。

それくらい演じ分けがすごい。そして、どちらの役も作りこみがすごいです。舞台に出てこられたら観客全員がものの10秒で覚えるでしょうという強烈な存在感でした。

男性キャストが演じることのリアル

感想としては最後になりますが、宝塚版から入った人間としてはどうしても男性キャストなんだなというところを気にしたりしてしまったのですが、その中で感じたことを2点ほど書いておきたいと思います。

まずは、やはり、男性が入る分お話がよりリアルに感じられたということ。

例えば、ジャン・クリフォードというお医者さんのメインキャストがいらっしゃるのですが、この役は女好きという面があり、そこが作品の中でも必要悪なのです。きれいな人には誰にでも色目を使うといった描写に「なんなんだ」と観客も怒りを覚えることでエドガーの心情に寄り添えるし、シーラのふるまいにも説得力が出る。

しかし、宝塚だと、いい意味で出てくる男役はみんな王子様だと思うんです。王子様なので、女好きでどうしようもなくても許せてしまうのです(個人的な見解かもしれません)。そのせいで、私の中では宝塚版ジャン・クリフォードは悪者にはなっていなかったんだな、というのを、ゴシック版ジャン・クリフォードに否定的な感情を持った時に気づきました。

ここでジャン・クリフォードに否定的な感情を持ったことで、エドガーが表現が宝塚版で観た時とはかなり違うように観えました。よりリアルな感情を感じるという発見がありました。

もう一点も個人的な印象でしかないのですが、宝塚版に比べて、終盤の明日海さんのエドガーが弱々しく見えました。

永遠の孤独を一人で抱えていくことになるのか、誰とも分かち合えない悲しみを背負った明日海エドガーの発する「ひとりではさみしすぎる」というセリフ(正確ではないかもしれません)に見えた感情が、宝塚版では「それでも生きていく」という強さが多かったのに対して、ミュージカルゴシック版では「だから一緒に来てよ」という弱さが見えたように感じました。

ここから先は更に個人的な考えになりますが、なぜそう見えたのかと考えた時に、作品以外の立場も関係しているのではないかと思いました。
宝塚という作品を離れたとしても常にトップとして先頭に立ち続けなければいけない立場でいらっしゃったことが、明日海エドガーに見えた強さの一因なのかなと。もちろん今回のミュージカルゴシックでも主演でいらっしゃるし、この状況下で上演すること、背負ったもの、明日海さんの作品に対するストイックな向き合い方は変わらないのでしょうが、共演者に弱さを見せられるのではないかと勝手な推測ですが、思いました。男性キャストがいらっしゃるというよりも、宝塚の枠から出たということかもしれません。

今にも壊れそうな弱々しさを抱えたエドガーを見るのはつらくて仕方なかったのですが、そんな弱さをさらけ出す強さも身に着けた明日海りおさんのこれからのご活躍がより楽しみだなということをじわじわと感じています。


新たな伝説の始まり

本日大阪公演2度目のライブ配信日だったのですが、なんと、本日東京公演での3回のライブ配信(2/712:30公演と2/13 12時公演と17時公演)と名古屋大千秋楽(2/28)のライブビューイングとライブ配信の決定が発表されました。

コロナ禍でもなかなかチケットが取れないという明日海さんや千葉さんの人気が恐ろしいほどの公演なので、大阪でのライブ配信が決まった時は小躍りして喜びましたが、更にこんなに追加があるとは...。

ところで私は、舞台のライブビューイングって宝塚と刀剣乱舞くらいしか知らないんですが、そんな限られた団体でしかできていなかったライブビューイングを成し遂げてしまう明日海さんって何者なのでしょうか…。もちろん他のキャストさんスタッフさんのお力あってのことと思いますが、それでも、伝説のトップスター明日海りおは退団後も伝説でした。

これからどんな伝説を作っていってくれるのか、期待しかありません。まずは、新たな伝説の幕開けである今作品、無事に最後まで幕が上がり続けますようにと願って千秋楽ライブ配信を申し込もうと思います~。(GoToイベント対象ですしね!)

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ライブ配信等のチケット販売は1/27からです。

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2065765

おすすめの作品などを教えていただけるととてもうれしいです。