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How to Beat Man City ~実戦編~

 前の記事ではシティの強みと弱みを明らかにしたが、ここではマドリーが実際に用意しているであろう(するべき)シティ対策をプレビューする。
リーグ戦再開後のシティの公式戦の戦績は9勝3敗で、負けたのは31節のチェルシー戦(CHE 2-1 MC)、33節のサウサンプトン戦(SOU 1-0 MC)、FA杯準決勝のアーセナル戦(ARS 2-1 MC)だ。これら3チームはいかにしてこのチームに勝ったのか。ここではまず、FA杯準決勝のアーセナルを対シティのロールモデルとして紹介する。

シティの弱みを狙ったアーセナル

 シティのビルドアップ時のアーセナルはハイプレスをせず、相手のパスコースを睨む立ち位置をとって構えていた。3トップがエデルソンからSBとギュンドアンへのパスコースを消しただけで、エデルソンはだいぶやりにくそうだった。さらにシティの選手が後ろを向いてボールを受けると、アーセナルの選手が一斉に襲い掛かるのも心理的にプレッシャーがかかっていたようだ。こうしてシティのボール前進の回数を減らし、ピンチを減らせたことはアーセナルにとって大きな収穫だった。アルテタ監督の掛け声と選手の並々ならぬ集中力があってこその戦術だ。

 シティのSBがボールを持つと、アーセナルのWGがすぐにプレスをかけて精度の高いクロスを蹴らせず、さらにメイトランド=ナイルズの高い対人能力によってマフレズを消したのも見事だった。アーセナルはこうしてシティの強み、「サイドからの攻撃」を防いだ。

 またジャカとセバージョスの2人が中央に完全にフィルターをかけていた。ジャカはデブライネを警戒し、セバージョスはライン間をD シルバに使われるのを警戒し、見事にその任務を完遂した。さらにこの2人と5バックでブロックを形成してシティにスペースを与えず、シティは枠内シュートもほとんど打てなかった。そもそもアーセナルのCB(ムスタフィ、ダビド・ルイス)はクロス対応が得意なので、ただでさえ空中戦に弱いシティのアタッカー陣相手だと朝飯前といったところであった。

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 アーセナルの攻撃で言えば、エリック・ガルシアの裏は本当に狙いどころだった。この試合でもエリック・ガルシアは裏を取られやすく、ティアニーからのロングパスに抜け出したオーバメヤンに決められてしまった。ここはこの試合の直前のボーンマス戦(MC 2-1 BOU)の失点とほとんど同じ形だったから、マドリーもここを狙いたいところだ。


シティ相手にマドリーが取るべき選択

 CLの性質と最近のマドリーの面々のコンディションを考慮すると、以下のようなスタメンがベストではないだろうか。

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 アーセナルがやったように、マドリーがブロックをつくるとは考えにくい。ここは効果的にハイプレスをかけて奪うだろう。ハイプレスをかける都合上、走れる人間が欲しい。そこで重要なのがバルベルデだ。相手に圧をかけてボールを奪うなら彼以上の適任者はいない。さらに最近のシティの試合では、カンセロが左SBをやっている。高い位置でのドリブルにおいてはB.メンディやジンチェンコよりも優れているが、いかんせん彼は右利きなのでビルドアップ時のプレッシャーには弱いはずだ。カンセロが先発すれば、バルベルデの威力は増す。得点という面ではアセンシオのほうが上だが、アセンシオは交代投入がベターだろう。

 左WGにはビニシウスJr.を選んだ。MARCAの情報だとアザールは100%の状態ではないうえ、ビニシウスの走力やスピードがシティを苦しませるカギになるのではないか。(もちろんアザールは昨年までプレミアでやっていたので、魅力的な選択肢ではあるが。)実際、エリック・ガルシアとビニシウスを対峙させることで縦に突破しやすくなるし、ウォーカーがビニシウス対応のために高いポジションを取れなくなるかもしれない。

 中盤はカゼミロ、クロース、モドリッチの定番の3人。結局この3人がベスト。クロースがギュンドアンに付いて、シティがボールを持った時はモドリッチが一列下がってスペースを埋めつつ、カゼミロがデブライネを退治するのが現実的な策だ。

 左SBはF.メンディを選んだ。セルヒオ・ラモスが出場停止の中でマルセロのリーダーシップも必要だが、よりアスリート能力が高く堅実なF.メンディのほうが安心だ。彼とビニシウスの2人だけで左サイドを制圧できる。ただし、このポジションは正直なところF.メンディもマルセロもアリで、悩みどころである。集中しているときやCLのマルセロを見てきた人間としては、マルセロのほうがいいかも、と思う気持ちもある。そして多分ジダンはマルセロをチョイスする。


 以上がマドリーの取るべき対策とスタメン。シティがどう出てくるか未確定なのでこれ以上踏み込んだ予想はできないが、この予想から大きく外れることはなさそう。

 CLの性質上、受けに出たら負ける。16/17シーズンのパリや、ここ2シーズンのバルセロナを見れば明らかだ。アウェイであっても強気に出なければならない。大切なのは勇気。迷わずに相手にプレスをかければ勝てる。勝ち進んでも次の試合まで1週間ある。躊躇ったらやられる。全力で戦うマドリーが見たい。

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