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不完全な自分を頼るしかないという絶望、或いは希望について。

愛されたい私が、
様々な問題を引き起こしている。

それは、分かっている。

なのに、
愛されたい私は救われなかった。

代わりに愛そうとしても、
私には愛せないみたい。

だって、愛して欲しいのは、
私ではなく、母だから。

そんなことを思っている私が、
生誕半世紀を超えていたり、
愛を乞う相手はもうこの世に存在しないとか、
狂気でしかないと思う。我ながら。

思春期を拗らせた大人の本音なんて、
私だって知りたくはなかったんだけどね。


母に愛されなかった私を、
私自身は愛せない。

愛そうと思うのに、
愛されなかった自分に遮られる。

母から愛されたかった私は、
母を愛していると同時に、
母を裁いている。

母は、間違っている。
なぜなら、私は愛されるべき存在だから。

その意思を曲げようとはしない。

人間なんだから、好き嫌いはあるし、
可愛げのない態度を取られたら、
邪険になるのは仕方がない。

好かれたかったら、
それなりに対応すればよかったのに。

理性は、過去に納得している。
実際、愛しにくい子供だったから。

私たちは、人間であり、
万能の神様でもなければ、悟ってもいない。
不完全だからこそ、私も母も人間なのだ。

愛された私もいたし、愛されない私もいた。
大好きな母もいるし、大嫌いな母もいる。

それが、真実なのだとは思う。

けれど、母に対する期待と憎しみは消えない。
執念の強さに、自分でも引くよね。流石に。

ただ、それが私の愛なのかもしれない。

憎んでいる間は、忘れずに済むから。
いつだって、生々しく思い出せる。
誰よりも心の近い場所にいる。

母を赦さないことで、孤独にならずに済んでいる。

私は、独りになることが、怖いのだろう。


愛されなかった私を復活させるということは、
愛せなかった母を赦すということなのだと思う。

母同様、私を愛さない世界も。

私を愛さないような世界にはビビるけれど、
私たちは、命ある限り、
今、ここに存在することを赦されている。

完全に不完全な人間として。たぶんね。

誰もが存在を赦されているからこそ、
相手をジャッジしたり、好き嫌いがあったり、
気が合うとか合わないとか感じることも、
特定の相手に興味を持ったりすることも、
本当は自由なんだよね。
心に留めておく限りは。

内心の自由は、保障されている。

全てを愛したいと思うけれど、
今の私がそうしようとすると、嘘になる。

私たちは、個性という皮を被った愛である。

個性からは逃れられない。
視座はどこまでも偏っている。

偏りがなくなれば、安心できると思っていた。
愛に戻れるんだろうな、と。

けれど、
偏っている個性に安心するしかないのかも。
偏っているからそこ、愛に気づくというか。
愛以上の可能性でいられるというか。

母が私を愛せなかったのは、
私同様、偏った人間だから。

もちろん、私自身の性格的な問題も多々あるけれど、
それはそれとして、母親なんだから、
何がなんでも子供を愛さなければならない
なんて道理はないし、母が与えてくれた愛が、
偏った人間としてのMAXだったようにも思う。

人として、与えられる限りを与えてもらった。

たぶん、それが真実。
だから、母を忘れられないでいる。
執着する程、安心できる存在だった。

私が、求め過ぎていただけ。

全てを愛する神様みたいな愛を、
人である母に求めることが、無理難題だったんだよね。

神ではない母に、神であれと押し付けていたとしたら、
なんか、本当に申し訳ない。

まぁ、幼い私からしたら、
それだけ絶対的な存在だったのは確かで、
そんな母に反発して、私は全てを愛するのだ
とか、夢想を抱いて、人生を苦難で満たしてしまった。

理不尽でタイトな人生を送って来たのは、
私が神様みたいになろうとしていたから。

自作自演の完璧主義の成れの果て。

別の視点から見れば、恵まれた人生だよね。
半世紀も夢見ていられたんだから。
案外、過保護に育てられたのかもしれない。

母にも、愛されていたのかもしれない。
私が自覚している以上に、
母自身の上限を上回るくらいに。

愛されていたなら、もういいか。
独りになるのは怖いけれど、
恨んでまで一緒にいることはない。

私を愛せなかった母の個性を、赦そうと思う。

赦そうとか、なんか偉そうだな。
人の限りを尽くして愛してくれた母に、
感謝しています。

私も、偏った母を愛していたよ。心から。
いなくなって、寂しいし、悲しいし、
別れることが辛かった。

母がいなくなって、自由になったけれど、
それと引き換えに与えられた孤独を
私は受け入れられずにいたのかもしれない。

母を恨むことで、埋めていたのかもしれない。
ごめんね。言いがかりつけてただけだった。

小心者とは思っていたけれど、
ここまで臆病とは想定外だ。

完璧の中で、安心したかったな。
世界は不条理で、
頼れる真理はどこにもなくて、
不完全な自分自身を頼るしかないなんて。

人間って、心細いな。

選択肢がない以上、
偏る自分を愛し、
偏った世界で生きて行こうと思う。

自分とは違う個性を恐れずに、
揺れ動く心のまま、感じていよう。

出会った個性に心を動かされたり、
翻弄されたして、生きていたいのかもしれない。

人の性を生きてゆこう。

fumori

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