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仕事を放り投げて訪れた喫茶店の街、神保町

5と0がつく日。この言葉を聞いて胸の鼓動が速くなるのは決して楽天ポイントが倍になる日だからではない。金融機関勤めの人なら察しがつくであろう、月の中で最も忙しい日と言われている5等日。

しかし、いくら繁忙日といえど今日はなんとしてでも早く帰らないといけない。日頃のストレスの鬱憤を晴らすべく、友人と神保町で会う約束をしているのだ。
18:00。誰よりも速く帰り支度を始めそそくさと上司の目を忍んで帰ろうとする背中に容赦なく声が降りかかった。

「えっ、仕事終わってるの大丈夫?!」

帰るの?正気か?という視線がねっとりと絡みつく。分かっている、先ほど私がロッカーに詰め込んだ資料が大量にあることを。自分でもいやってほどに理解している。その期日が例え明日だとしても。
私は決心したように顔をあげ上司に言い放つ。

「だめでーーーーーす!」

そう言い放ち、颯爽と退社した。目指すは、神保町。ずっと行くと決めてたんだ。言葉を失っていながらも突き刺すような冷たい視線を放つ上司を置いてわたしは電車に飛び乗った。

本日の目的は、文房具屋と喫茶店のナポリタンで舌鼓をうつこと。


文房堂
という文房具屋がTwitterで目にしたときからずっと気になっていた。テーマごとに素敵な文房具を揃えており、まるで美術館みたいな展示の仕方。

18:30閉店の5分前に滑り込めたものの店内が広くて当然に見きれなかった。それでも目につくだけで、文房具一つ一つの配置にこだわりがあるのがわかる。
なかでも私が惹かれたのは宮沢賢治のコーナー。本が置いてあるわけではないものの、宮沢賢治の作風に因んだ文房具が置かれていた。「銀河鉄道の夜」を彷彿させる天体モチーフのシールフレーク、文豪が使っていそうな古典的な原稿用紙の見た目をした付箋。
元の作品、文房具への愛に満ち溢れたお店だった。

当然ながら五分という短い時間ではお買い物ができるわけもなく次は休日に行ってじっくり見てみたい。

* * *

次の目的はナポリタンだった。実は私はナポリタンが大の苦手だ。でも、苦手な食べ物を時折無性に食べたくなる波がありナポリタンといえば純喫茶!純喫茶といえば神保町!と簡単なマジカルバナナで今日の予定がたったのである。
苦手な食べ物を食べたくなるのは、あるあるかと思っていたら隣にいた友人に驚かれた。ここでも本日2度目の「正気か?」という視線を感じたので「人間は本能的に苦手なものや困難なことを乗り越えたいと思うらしいよ」と適当なことを言っておいた。でも一定数いるらしいので、同じ方はぜひ苦手なものを食べる会でもしましょう。

さぼうる、という喫茶店が神保町で有名らしく検索すれば上位にでてきた。

友人とここにしょう!と足を運んだもののなんと臨時休業の文字が。この文字は見慣れている。なぜか旅行や目的のレストランに行くたびに休業へ見舞われるので、もはや驚きはない。

すぐさま気を取り直して「神保町 ナポリタン」と検索すると何件かヒットした。

お店の雰囲気、そしてナポリタンがあることを確認して選ばれたのはラドリオ。仕事終わりでぺこぺこなお腹をさすりながら向かうと趣のある喫茶店が狭い路地に面していた。一瞬、本当にこんなところにお店があるの?!と疑うほど狭くて細い路地に確かにあった。


お店の前の看板をみると夜はどうやらバーになっているらしい。さまざまな種類のお酒がメニューに羅列されており、昼間とは雰囲気がきっと大きく異なるのだろう。

ご飯もののメニューは多いわけではなく、ナポリタンとカレーがが書かれていた。友人とわたしは目配せをし当然ながら二人でナポリタンを注文。


サラダも添えられていた!

初めて外で食べるナポリタン!フォークでぐるぐる巻いて食べると、少し硬めの麺にケチャップがしっかりと味付けされていた。ただ少し時間が置かれているのか乾いたような食感。個人的には、ウェッティなものより乾いたほうが好きなので大満足だったがナポリタン好きな友人に言わせると少し物足りないらしい。

店内はゆったりとした音楽に、古書、神保町にある喫茶店のマッチなどが飾られていて平日であることをすっかり忘れさせてくれる雰囲気だった。クリームソーダーを嗜むマダムやお酒とおつまみを食べながら楽しく会話するおじさまたち。少し年代層が高めなこともあるのか、落ち着く店内だった。

そう、今日放置してきた仕事の量をすっかり忘れさせてくれるぐらいに時間の流れに身を委ねられた。他にもここでは書ききれなかったが、個性的な本屋もたくさんあり疲れた社会人に神保町はおすすめの街だった。

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