将棋用語の難しさ(3)

こちら続きの続き。

本当はこれがかきたかったのに脱線しっぱなしで、漸くたどり着きました。

それは盤上の場所を示すときの用語。

「玉を下段に落として寄せる」って言いますよね。
反対に「玉を上に逃がすと捕まえにくい」とか。

この上とか下とかって慣れるまで分かりにくいのです。
図にするとこんな感じ。

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「引く」は手元の方向に動かすことで、「金は引いて使え」などといいますが、図で言うとなるべく下に近づけろということです。

盤の上下じゃなくて駒の前後で表現してくれたほうがイメージしやすいように思うのですが、慣習なので仕方がないところ。

ちなみに囲碁の場合は、真ん中が上で、万端が下という感覚と聞きました。
1線、2線は等高線のような感じで、ピラミッドのような形のイメージ。
高い、低いで表現したりするようです。

※囲碁は横から見ても状況が変わらないからいいなぁ。向かい合って座らなくても別に支障なさそう。

そのイメージを横から見ると


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この図を将棋にあてはめようとすると

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みごとなすれ違い……。。。

そして
教えるときにはさらに問題がありまして。

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そこに飛車を成ると玉が上に逃げられてしまいます

とかいうとき。

対面レッスンなら盤上を指さしたりすることができるんですが、オンラインだとカーソル動かしたりとか盤にマークつける方法になります。81道場は⇒や○が打てるので大変助かってるんですが、言葉での表現が難しい。

上の文だと、

「そこに(あなたの)飛車を成ると(対戦相手の)玉が(対戦相手にとっての)上に逃げられてしまいます」ということなのですが

「上ってどっち??」と迷子になります。
飛車を成った側からしたら玉の移動する赤い矢印は「下」ですから。
でも相手の玉のことなので、相手の玉にとっての「上」になるのです。

これが直感的にわかるようになるには、どれくらい経験が必要なのだろう?

さらに話をややこしくしているのが、左右。

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将棋の駒の動きは「符号」で表します。
詳しい説明はここでは省略しますが、
(1)の動きは「2二金右」です。2二の地点へ右の金が移動するから。

では(2)はどうなるでしょうか。「2二金下」と書きたくなるのですが、その逆で、「2二金上」と書きます。
こちらは「うえ」ではなく「あがる」と読みます。。。
もうひとつの上のほうにある金が動く場合は「2二金引」(ひく)となります。どうしてここで動詞がでてくるのか。。。
それなら(1)は「2二金左」(ひだりへ)じゃないの?
せめて「2二右金」にならないの??
…すごく変なのですが、そういう決まりになっています。

さて(3)はおさらいクイズです。この動きは…?

※答えの前に、詳しく知りたい方向けのリンクを貼っておきます。

さて、正解は「2二銀左」です。
「引く」だと2つの駒が該当し、左にある駒は1つしかないので、そのようになります。

と、、、ここまで書いて気が付いたのですが、
マス目が主体なんですね。

「(2二の地点からみて)左の銀」なんだ!!
「(2二の地点へ)上がってくる金」なんだ!!

私は普段、その駒の持ち主から見て、という表現をしていたのですが、
マス目に小さくなった自分が駒と同じ向きに立っているところを想像したらわかるような気がしてきました。

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こんな感じ…か??

将棋の場合は、自分の考えを話すときも相手の駒のことは相手からみた動きで話すし、私は人に教えるときはその相手目線で話すようにするのですが、指導対局だと教える生徒と対戦している相手が私自身であることが多いので、さらにややこしくなってきます。

例えば。

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手前側が生徒さんで向こう側が講師の私とします。

「この局面は詰みがあります。詰ましましょう!!」

⇒「この局面は(私の玉に)詰みがあります。(私の玉を)詰ましましょう!!」

「銀を上がると上に逃します。まず歩で上を塞いでから…」

⇒「(あなた=生徒)銀を(あなたからみて)上がると、(から見て)上に(の玉を)逃がします。まず(あなたの)歩で(にとっての)上を塞いでから…」

(生徒さん)上ってどっちですかーーーー??!! (混乱)

アナタとワタシが省略されすぎ混在しすぎ。こういう話し方って自然に出ちゃうんですけれど、慣れないと文脈から理解するのは困難ですよね…。

「私の」「あなたの」を全部言ってたらものすごく長くなってしまって、せっかちな私にはちょっと…。と思うのですが、飛ばさずに全部しゃべるほうが、生徒さんが理解しやすく、スピードを落とせるような気がする。

長くなりましたが、やっと言いたいことにたどり着きました。

・専門的な用語を省き
・立場を混在せずに
・言葉を省略せずに
・ゆっくり説明する

のが大切だというお話でした。       

(完)


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