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夏の思い出を地図にアーカイブ!

今年の夏もさまざまな自粛が続いていますが、子どもにとっては夏休みは特別な時間です。
私の子どもの頃の遊び場はもっぱら原野谷川(はらのやがわ)でした。ご存知の方は少ないと思いますが、この川は静岡県掛川市と袋井市を流れる太田川水系の二級河川です。
母親の実家が掛川市の原川(戦前は小笠郡曽我村原川)といった場所にあったため、毎年夏になると家族で帰省しており、近くを流れていたのがこの原野谷川でした。
今日はこの地味な原野谷川を中心にデジタル地図とGISで旅をしたいと思います。

原野谷川

いきなりですが、二級河川と一級河川の違いはご存知でしょうか?

国土交通省の説明ですと以下のとおりです。

河川の等級には、一級河川と二級河川があります。一級河川は、私たちの暮らしを守り、産業を発展させるうえで特に重要なかかわりをもっている水系(一級水系)のなかの河川のうち、国が管理している河川です。二級河川は、一級水系以外の比較的流域面積が小さい水系(二級水系)の河川のうち、都道府県が管理している河川です。

以前、登場した埼玉県を流れる魚のいない芝川は一級河川で、楽しい楽しい原野谷川は二級河川。。。
納得できませんが、、気にしないことにします。

さて、まずは国土数値情報から静岡県の河川データをダウンロードし、QGISのフィルタ機能を使って原野谷川と太田川を抜き出してみます。
全長約38km、大井川と天竜川に挟まれ、茶畑で有名な牧ノ原台地の西に位置する小笠山丘陵の北側を通り、遠州灘に向かって流れています。
並行しながら、森の石松で有名な森町を通っているのが太田川ですね。

図1

空中写真でも見てみましょう。
源流は八高山付近です。標高832mということですが、南側の谷から原野谷川、北側の谷からは大井川の支流の白光川が流れ出しています。
そして、源流から約10km(地図上の濃い青色部分*)付近に原野谷川ダムがあるようです。
ダムの用途は防災用とのことですが、当時は夕方に水を放流することがあり、サイレンがなると川遊びができなくなるため、ダムの存在を恨めしく思ってました。
*河川の距離は、QGISのネットワーク解析を使うと簡単に測れます。

図2

川遊び

私がもっとも遊んでいたポイントは、原野谷川と東名高速道路が交差するあたりです。ここに、大きな淵があって、下流側に堰堤、上流に橋げたもあったので、いろんな遊びができました。

図2.5

せっかくなので、当時(1980年ころ)の空中写真も読み込んでみます。

図3

宅地は少し増えてはいますが、ほとんど雰囲気が変わっていません。
標高図も見てみましょう。

この辺りに潜ると水が冷たかったのですが、裏手の森(宇佐八幡宮)から高い崖になっていたので、もしかすると湧水などがあったのかもしれません。

図4

水中メガネをつけてこの淵の中をのぞくと、ハヤがたくさん泳いでいましたし、堰堤にはかわいいゴリが飛び跳ねていました。
何度か鮮やかな黄色いアユを見たこともありましたが、その時はすごく興奮した覚えがあります。
母の子どもの頃は、春になるとウグイが登ってきて川が真っ赤に見えたそうですが、私はそこまでたくさんのウグイを見たことはありませんでした。

川魚をあまりご存知ない方は、こちらのサイトの画像をご覧ください。
淡水魚図鑑、大阪府立環境農林水産総合研究所、http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/zukan/zukan_database/tansui/list.html

ちなみに、現在の原野谷川の水質は河川A類型ということですので、AA類型の仁淀川や柿田川などには及びませんが、まずまずきれいなようです。

大井川用水

当時の原野谷川も十分にきれいでしたが、川のすぐ横を流れる小さな用水路の水がとてもきれいで冷たかったので、農家のおじさんに聞いたら、これは「大井川用水」といって、農業用に大井川から引いているとのことでした。
大井川からはかなり離れている(東に20kmくらい)ので、どうやってここまで引いているのか、しかも原野谷川があるのにどうして水が必要なのか不思議でなりませんでした。
その理由は大人になってから知りましたが、詳しくは農林水産省のサイトをご覧ください。
「大井川用水とは」、農林水産省、https://www.maff.go.jp/kanto/nouson/sekkei/kokuei/oigawa/gaiyo/01.html

ということで、大井川用水らしき水路を地図に表示してみました。

図5

大井川>安倍川>天竜川>富士川

ところで、静岡県には南アルプスから流れる素晴らしい河川が多いのですが、子どもの時から静岡県内の好きな川の第1位は大井川です。
小学校のころ友だちと二人で旅した大井川鐵道の影響が大きいのですが、水量といい、緑が映り込んだ水面の色といい、川根温泉や寸又峡(すまたきょう)など魅力満載の河川です。
静岡県には、”暴れ天竜”の天竜川、日本一の山を冠した富士川もありますが、源流が山梨県や長野県にあるのがマイナスポイントです(笑)
また、静岡市民に愛されている安倍川もきれいな川で、源流には武田信玄の隠し湯で知られる梅ヶ島温泉があり、河口には運んだ土砂でできた三保の松原もあり、とても素晴らしいのですが、大井川を抜けませんでした。

夢の吊り橋

画像は寸又峡にある「夢の吊り橋」
Wikipediaよりダウンロードしました

さて、国道1号(東海道)にかかる同心橋を過ぎ、エコパスタジアム近くの愛野付近で逆川(さかがわ)と、さらに袋井市と磐田市と境を流れる太田川に二瀬橋付近で合流します。遠州灘まで残り3kmくらいの所です。

最近は川遊びをしている子どもたちも少なくなりましたが、日本にはまだまだ素晴らしい清流がたくさんあります。
だいぶ前の出来ごとですが、水の町「郡上八幡(ぐじょうはちまん)」を旅した時に見た子どもたち、「川ガキ」の話もいずれしたいと思います。

今日も最後までお付き合いしてくださり、ありがとうございました。
今回は静岡ローカルということもあり、あまりGISを活用しませんでしたが、私自身、昔の記憶を思い出して、予想以上に楽しい時間になりました。
ぜひ、皆さんもデジタル地図とGISを使って、記憶のアーカイブをしてみてください。
拙著がお役に立てるかと思います。「その問題、デジタル地図が解決しますーはじめてのGIS」(ベレ出版)

参考サイト
・最上川電子大事典について 、国土交通省 東北地方整備局 山形河川国道事務所、https://www.thr.mlit.go.jp/yamagata/river/enc/genre/01-kiso/kiso0205_001.html
・掛川市の水質概況、掛川市、https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/fs/5/6/1/2/3/_/P123-125suisitumatome.pdf

利用した地図データ
・地理院タイル(標準地図)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/std/{z}/{x}/{y}.png
・地理院タイル(全国最新写真)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/seamlessphoto/{z}/{x}/{y}.jpg
・地理院タイル(空中写真1979年〜1983年)、国土地理院、https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/gazo2/{z}/{x}/{y}.jpg
・地理院タイル(色別標高図)、国土地理院、
https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/relief/{z}/{x}/{y}.png
・国土数値情報(河川)・静岡県、国土交通省、https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-W05.html#prefecture22
・国土数値情報(ダム)、https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-W01.html
・国土数値情報(集客施設)・静岡県、国土交通省、https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-P33.html#prefecture22

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