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気持ちの機微を見逃したくない私たちは「きび」と言う名のねこを迎えた【つくり手であること】

2021年7月、保護ねこを引き取りました。人生で初めて、自分たちの責任と判断で動物の家族を迎えたことになります。

人生で初めて、と書くと友人たちも驚きますが、自分自身がいちばん驚いています。小さい頃、実家には文鳥やインコ、柴犬がいたこともありますし、海外で暮らすようになってからはホームステイ先の犬やねこやフェレット、また前の家では大家さんや隣家の友人のねこが私たちの部屋で寝るほど親しんでいたし、最後は少し介護のお手伝いもして。自分の人生にはいつだって動物がそばにいるつもりで生きてきたからです。

だからいつかは迎えたいと思ってはいたものの、わたしも夫も、自分で生きる年齢になってからは初めての動物家族。その出会いはちょっと急でした。

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不動産業の友人夫婦が、退去したアパートの敷地内に、母ねこと子ねこ5匹がキャリーバッグに入れられて捨てられているのを発見した、と連絡をくれたことでした。

これからもらい先を探すつもりでいるというLINEに添付された小さな命たちのかわいいことかわいいこと。その日のうちに心が揺れ始め、夫と相談開始です。

自分たちの暮らしでもお世話とか大丈夫かな。
でもねこはいつか一緒に暮らしたいと話していたし。
こんな偶然の出会いはけっこう運命的かも。

相談という名の確認作業はあっと言う間に進み、5匹の中から1匹を迎えることにしました。友人夫婦が事前に動物病院に連れて行ってくれたところ、その時点で生後8週間。小さな小さな命です。(ちなみに後日、母ねこも含めて全部のねこの貰い手が決まり、今はみんな幸せに暮らしています)

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名前どうする?という会話はすぐ始まりました。できれば植物とか自然とかの名前がいいね、ウチらしい名前ってなんだろうね?と、いま思えばあの数日間の私たちは、これから迎えるねこの名前ばっかり考えていたと思います。

だいず?うめ?まめ?こめ?よもぎ??
食事や移動など、ちょっとした隙があれば、あーでもないこーでもない、とネーミング提案をしまくる私たち。

その頃、担当していた原稿に関して相談している時に、夫がふと「心の機微をちゃんと言葉にしたいよね」と言うではないですか。

きび【機微】
表面的には捉えることのできない、その時々の対人関係などによって異なる心の動き

それだー、それだそれだー、「きび」にしようー!

人の心の機微を言葉にできる書き手でありたい。そう思いながら文章を綴る私たちを表すかのような名前じゃないですか。きっと「どうも、柳澤きびです」と言ったらみんな、ヒエやアワなど雑穀だと思うでしょう。人によっては昔話のお団子かと思うかもしれません。いずれにしても食いしん坊の我が家らしい。個人的にはひとつの言葉がダブルミーニングになっていることが大好物でもあります。

かくして、「きび」との暮らしが始まりました。

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いや大変。
何が大変て、かわいいのです。
世界のねこはみんなかわいい、と思って生きてきましたが、自分ちの家族となると一層かわいいのです。

お世話に関しては知らないことも多く、心強いねこ飼いの先輩たちに相談しました。特にShironyanさんことさちえさんは、あまり添加物や不自然なものを暮らしの中に使ってない我が家の価値観を理解してくれて、ちょうどいい助言をくれる心強い存在。多すぎることもなく、かと言って不足なく、わたしの質問に対して105〜110%程上乗せしてくれた、気持ちいいほどの「それが知りたかった」をくれるさちえさんのおかげで、きびも順調に成長しています。

人間の3倍のスピードで生きるらしいので、きびの成長を見逃さないよう、インスタグラム @kibi_nosuke で成長記録を始めました。まさか自分が動物家族のインスタをすることになるとは思ってもいませんでしたが、なんらかの事情で捨てられた保護ねこが、こうして幸せに暮らしている姿を発信することにも意味があるような気がしたのです。

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動物たちは、文字通り「からだ一つ」でこの地球を生きています。きびが「所有」するものは何もありません。でも自分が持って生まれたものを最大限に活用しながら、命を全うするために今日も寝て食べて遊ぶ。これぞ生きる本質だな、と気付かされます。

ずっと環境活動や社会課題に関わっていますが、本当にいい社会にするためには動物福祉も喫緊に取り組むべき重要課題。倫理観が欠けまくってる現社会では大切な視点です。小さな命ひとつ守れずに何が経済発展だ ばかもん、と毒を吐き、同時に「かわいいかわいい」ときびを撫でる。そのバランスのおかげでこれからも、社会で起きていることの表面だけでなく、細部にまで意識を向けていられそうです。

追記:インスタグラムやってる方はよかったら、きびの成長をいっしょに見守ってもらえたら嬉しいです。 @kibi_nosuke 


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