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つくり手であること (やなぎさわまどか)

はじめまして、やなぎさわ まどかと申します。
わたしは、食・農・環境問題を主なテーマとして、取材執筆するほか、企業のマーケティングなどに関わっています。また、夫とふたりで株式会社Two Doorsを運営しており、英語や中国語を中心とした翻訳のニーズも承るなど、複数の事業で「ことば」を扱っています。

この度大変ありがたいことに松井監督からご縁をいただき、こちらでコラムを書かせていただけることになりました。

ひとことで食といってもピンからキリまで幅広く、しかも食に関する先輩方を前に緊張もあるのですが、こちらのコラムでは一般的な実践者のひとりとして「食 × 社会変容」を基盤にした考察を綴りたいと思います。

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やなぎさわまどか プロフィール 
ライター・編集、翻訳マネジメント。主な執筆テーマは食・農・環境問題。母の方針で自然食育ち。10代後半は海外滞在ののち帰国。都内コンサルタント勤務時代に東日本大震災で帰宅難民となり体験し価値観が一変し、いつかの憧れだったフリーランスライターとして独立。現在は神奈川県の山間部にて夫とふたり、家庭菜園と発酵食のある暮らしを実践中。日常的な関心領域は民主主義・ジェンダー・人種・映画。

コロナ禍以降、世界中で様々な新しい動きがはじまり、中でも、楽しくステイホームするコンテンツが一気に広がりました。完全ロックダウンしたアメリカでは早くからイースト菌が売り切れ、その結果、天然酵母の起こし方がYouTubeでバズったり、日本でも同じように、小麦粉とベーキングパウダーが売り切れて話題になりました。

ここで見られるのはやはり、人々が作り手になるに立ち返っていることです。

ほんの数十年前まで、食べるものは基本的に手づくりでした。それが、忙しいとかめんどくさいとか、様々な社会的要因と個人の意識が積み重なった結果、いつの間にか私たちは、手づくりの食でお腹を満たす機会が減ってしまっていたのです。

しかし人間の体における「感覚」は、手づくり時代からさほど変わっていませんので、多くの人にとって手づくりの食事はホッとするし、心が癒されるし、幸せを感じるし、何よりつくる楽しみがあるわけです。

もっと、その感覚を思い出すことをしてみましょう。

自分でつくったことのない食をつくってみましょう。

難しいことはせず、全ては自分のできるところからです。

外食やお惣菜が多い人はご飯の炊飯から、
料理の苦手意識がある人はインスタントに加えるひと手間から、
揚げ物がこわいとか大変だと感じる人は少量の油で揚げ焼きから、
具材の組み合わせや献立がわからないときはご飯と味噌汁から、
などなど、いずれもきっと「やってみたら意外にできた」と感じることでしょう。

もうひとつ、手づくりの感覚を取り戻すのにおすすめなことは「伝統的なもの」をつくることです。

ぬか漬け、味噌、醤油、麹、豆腐、納豆、寿司やうどんなども、なぜか無意識のうちに「お店で買うもの」と切り分けているものがあったりしませんか。でもかつてはみんな自宅で仕込み、手前味噌なんて呼んでいたものですよね、ネットで材料を買い揃えたら、自宅のキッチンで仕込んでみましょう。

(*下記は参考までに、今年greenz.jpでご紹介したお味噌のつくり方。冬のイメージがありますが初夏でも仕込めます)

そして、野菜を育てること、タネをまくことも、伝統的で、且つ、先人たちにとっては当たり前の手づくりの食です。プランターやお庭の土にタネをまいたり苗を植えたりしてみましょう。時期的にも、初夏のこの時期はホームセンターで苗が100〜200円台で買えます。

たくさんのことをする必要はないので、まずは1種類からで十分です。
カレーが好きな人はじゃがいもだけとか、
タイ料理が好きな人はプランターでパクチーとか、
レタスやルッコラなど葉野菜も作りやすくていいですよね。

薬味1つだけでも自家製が目に留まると、食材が愛おしくなったり、自分自身をちょっと誇らしく感じられます。
自分の手で、おいしいをつくる。
消費者からつくり手になる機会を、一緒に楽しんでいきましょう。

(↓写真) ぬか漬けは日常のケの食事を豊かにする存在。菜花、人参、アボカドをぬか床から出したら、海苔巻きもあっという間です。最近ブログにも書きました。

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